1-1 正式サービス開始!
「ただいま!」
いつもより勢いよく自転車を漕いで帰宅した私は、自室に引っ込むとすぐに制服を着替え、ヘッドギアを身につけた。
「よーしよし。流石にログインできるな」
ソフトはすでにダウンロード済み。正式サービス開始が午前9時だったので、7時間遅れでのスタートだ。本当は開始と一緒に始めたかったのだけれど、それが許されるほどうちは放任主義じゃない。まあスタートダッシュが少し遅れたくらいで何かが変わるってわけでもないんだけどね。
完全没入型VRがゲームの一大ジャンルとして地位を確立してから約6年。さまざまな国で作られたさまざまなジャンルのゲームがひしめく配信プラットフォームに、そのゲームは姿を見せた。
エボルヴインパクト。ホラゲーのジャンルで一定の知名度を誇るBE社が手がける初のVRゲームだ。ジャンルは非対称型PvPvE。
遠い未来、とある星で発生した実験事故から大量のミュータントが流出し、惑星の開拓拠点にして唯一の都市だったホストシティが壊滅。富裕層が我先にと逃げ出す中、取り残された人々は日々を生きるためミュータントが跋扈するホストシティへ物資を求めて繰り出すという、SFホラーとしてどこかで聞いた気のする世界観のゲームだ。ただこのエボルヴインパクトでは人を襲うミュータントとしてもプレイできるいうことが売りにされ、FPSプレイヤーを中心に多少の話題を生んだ。
私もまた、そんな特殊なプレイスタイルに惹かれてゲームをダウンロードしたプレイヤーのひとり。
ログインするとでかでかと目の前に現れたタイトル画面。そこから先へ進むとさっそくキャラクリエイトの時間だ。
ここは重大な選択肢。告知されている通り、エボルヴインパクトのPCはサバイバーとミュータントの2つに大きく分かれる。サバイバーは従来のFPS同様に人間で、ミュータントは実験によって生み出された化物。私が選ぶのはもちろん後者。そのためにこのゲームを始めたのだ。
ミュータントはさらに〇〇種という形でまったく性能の違うクリーチャーが複数用意されている。サバイバーが装備であらゆる状況に対応できる万能な兵士なら、ミュータントは尖った性能で強みを活かすスペシャリスト。私はその中でも擬態能力による隠密を得意としたタコのようなミュータント、デモンズ種を選択した。で、ミュータントもサバイバーと同じく見た目をいじれるのだけど、化物の容姿に区別なんてつくのかって話。私には無理。なので最初に出てきたランダムな姿をそのまま利用させてもらう。早く始めたいし。
キャラクターができたら次はゲームプレイのチュートリアルだ。オープンベータに参加していたのでほとんど理解しているけど、変更点があるかもなのでちゃんと確認する。
エボルヴインパクトのゲーム性はいわゆるステージ探索型だ。設定上はホストシティという巨大都市が舞台だけど、オープンワールドのようにすべてを自由に移動できるわけではなく、◯◯地区という名前のエリアごとにわかれている。ただしそれぞれの区画はかなり広い。マッチングを行って複数チームが生成されたステージに同時に突入するいわゆる脱出シューターではなく、それぞれのプレイヤーが自由なタイミングで出入りできるMMOに近い。ちなみにチャンネルわけされており、アクティブ数に応じて柔軟に対応することが可能。
ミュータントの目的は他の生物を襲うことで“血液”を集め、これを使って自己強化すること。“血液”の使い道はスキルの習得、強化やその先の進化といった恒久的強化と、一部回数制限付きスキルのトークン補充にも使う。
逆にサバイバーはフィールドから物資を持ち帰り、スキルの習得、強化。施設の追加、強化。装備や消耗品の取得を行う。
どっちにしろフィールドに出て、必要なものを集めて、パワーアップするというルーティンだ。その中でトークン補充とか持ち込みアイテムという形のランニングコストがかかる感じ。
チュートリアルを終えたところで、報酬という名の初期ポイントを割り振り。スキルポイントは振り直し可能なので、リビルドは気楽にできる。別の種に移るのは結構な覚悟がいるけど。
取得するスキルは【再生】と【静かな殺意】の2つ。【再生】はミュータントが共通で覚えるスキルで、トークンを消費して体力を回復する。アイテムを持たないミュータントにとっては唯一まともな回復手段だ。【静かな殺意】は自身が発生させる音を減少させる常時発動のパッシブスキル。派手なスキルじゃないけど隠密がメインのデモンズ種にとっては基本となる。
「さて、じゃあさっそく行きますか!」
準備は完了。だったらあとはプレイヤーを狩るだけだと、私は軽い気分で最初のステージへと侵入した。
次回投稿予定は明日12時です。
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