1-0 悪魔的暗殺術
電子ロックの止まったドアの割れたガラスを抜けて、4人の武装集団が倉庫に入ってきた。同じ形の棚が計7列並んだ倉庫内には多数のルートポイントが存在し、4人は内部のクリアリングを一通り済ませてから各々物資の回収を始める。彼らの目的は物資を集めてキャンプへ持ち帰ることだ。
ホストシティは一夜にして壊滅し、富裕層は惑星外へと逃げた。取り残されたうちの数パーセントの生存者はホストシティの外へと脱出したが、生きるためには再びホストシティに潜入し物資を持ち帰らなければならない。食べ物、布切れ、武器弾薬。すべてに価値がある。
だから、殺すことが目的の私からしたら絶好の狩りどきになる。
「クリアリングが甘いよね」
天井に張り付いて彼らの目線をすり抜けた私は、システム上誰にも聞こえない声で呟きながら、音を立てることなく触腕を伸ばして物資あさりに夢中な男の腕に触れる。
「うわぁっ!」
気付いた男が思いっきり叫び声を上げたけど、もう遅い。ひと刺しで毒を与え、数秒で死に至らしめる。耐久力も飛び道具も持たない代わりに有する近接攻撃での圧倒的な殺傷能力こそデモンズ種の最大の武器だ。
声に反応して漁りを中断する残り3人。だけど私はすでに動いている。触腕を伸ばして棚の間を素早く移動。銃を構えようとしたプレイヤーの腕を触腕の先端の小さな刃で斬りつけ、銃口を避けて体を沈めながら、ずっと腕のひとつで持っていた筒状の物体を床に投げる。ミュータントにはアイテムを保管するインベントリはないけれど、ものを物理的に保持し、使用することはできるのだ。
スモークグレネードが煙を吐き、倉庫内を白色で満たしていく。これで視界が潰れるのはお互い様。だけど私は倉庫内のものの配置も相手の位置も把握済み。出鱈目に放たれる銃弾に当たらないよう、低い位置から足首を斬りつけて3人目。最後は仲間を見捨てて逃げようとしたけれど、足音でバレバレだ。
「はぁい」
出口に来るとわかっていれば待つだけ。動きはこっちの方が速い。
ドアを潜ろうとしたところで頬を斬りつけて4キル。パーティー全滅だ。
「じゃ、貰いますか」
サバイバーなら物資を漁るけど、ミュータントは死体そのものをいただく。
「サバイバー4人うまうま」
ただし、無事に帰らなければすべて失う。これはミュータントにも適応されるプレイヤー共通のルールだ。他のミュータントやサバイバーに見つからないよう警戒しつつ、私は近場の脱出ポイントを目指して移動を始めた。
次回投稿予定は明日12時です。
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