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ハエと美少女姉妹(異星人の使いと異世界の冒険)  作者: 千葉の古猫
第2章 異世界編その1 コウタたち冒険者になる
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第89話 コボルトたちに貸しを作る

第89話 コボルトたちに貸しを作る


「おい、何してるんだ。やめさせろ!」


 ボスコボルトが、頭を突き出す一匹のコボルトに対し、棍棒を振り上げようとしている。

 腹の痛みも軽くなってどうにか立ち上がった。


 俺は2匹の間に割って入った。

 小さいコボルトの手を引き、立ち上がらせる。


「おまえ、見事な突きだったな。

 魔道具の防御服でなければ死んでいたかもな。

 大したものだ」


 俺は、ボスコボルトを振り返る。


「しのぶから聞いたが、おまえ、自分の子を殺すつもりだったのか。

 そんなことはするな。寝覚めが悪くなる」


「それでは、こちらの面目が立ち申さぬ。

 処刑後には、お許しをいただき、我らの王の治療を継続していただけぬだろうか」


 ボスコボルトが自分の子に目をやると、そいつは胆力を込めた声を出した。


「一生の不覚でござる。

 勘違いで疑ってしまい、バカなことをしもうした。

 この命を差し出しますので、どうか我らの王をお助け願いたい」


「どうする、しのぶ」

 俺は、治療役のしのぶに振った。


「どうするって言われても、もうナノマシーンの仕事は終わってスティックに回収しましたよ」


 しのぶは落ち着いている。

 危機に当たり、最善を尽くし、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、沈着冷静を保つ、そういう者に俺はなりたい。

 しのぶは年下だが、俺にとっては人生の鏡だ。


 俺は、しのぶからボスコボに向き直り、声を掛ける。

「だそうだ。

 あんた、王様の具合をみてやれよ」


「王よ、身体のお具合はいかがでござろうか」

 ボスコボルトは、凛として王の横にひざまずく。


「ふむ、痛みはない。少し動いても傷は開かぬようだ。身体はだるいがな」


 王が俺に視線を向けるので、しのぶの代わりに俺が答える。


「失った血が多かったせいだろうぜ。

 数日は栄養のあるものを食べて、休養すれば元どおりになるんじゃないか。

 良かったな」


 俺を話が分かる奴と認めたのか、王は言葉を絞り出す。

「この者の蛮行をお許しいただけるのか」


「良いってことよ。

 但し、報酬の金貨は15枚から20枚に増やしてもらうぜ」


 そこまでお人好しじゃないぜ。俺は取引条件を引き上げてやった。


 すると、王の横に侍るボスコボルトが縋るような顔を向けてきた。

「それでは、我軍の財政が立ち行きませぬ」


「じゃあ、当初の話どおり15枚だけをもらっておいて、残り5枚は次に会う時まで貸しにしておくぜ」


「それは助かり申す。

 ヒト属の者にも話の分かる御仁がいる。

 我らこの御恩は決して忘れ申さぬ。

 王よ、宜しいか」


「チュウギィよ、よくやってくれた。

 皆のもの、聞いたとおりだ。

 このダンジョンの内外を問わず、このヒト族の四名が何か困っていたら必ず手を貸すのだ。良いな」


「ウォオオー!」

 コボルトの小隊は勝鬨をあげた。

 負けたくせにな。


「アタシは獣人属なんですけど」

 キャシーがそう呟いたが、この際些末なことはどうでもいい。


 俺たちは、報酬の金貨15枚を受け取りそこを出立した。


 そこから10分ほど歩くと、Tを左に倒した形の、メイン通路の丁字路に達した。


「ここは右よ。

 以前に左右に分岐して左に曲がった道と、ここで繋がるの」

 キャシーがそう言った。


「真っ直ぐ行くと、前の分岐路まで逆戻りになってしまうんですね」と、しのぶ。


「あとどのくらいなのよ」

 こう乱暴な言い方をしたのは沙織だ。


「右に曲がったら15分も掛からないよ」


「そうか、そいつはありがたい。

 痛みは引いたとは言え、まだたまにみぞおちに響くんだ」


「その服、本当にすごいよね。

 あの尖った槍を防いで無傷とはね」

 また、キャシーが物欲しそうな目で俺の腕に触れる。


「防刃性能は高いけど、局所の打撃力を拡散緩和してくれるだけで、痛みはそれなりにあったんだぜ」


「死んでしまったのかと、あの時本当に心配だったんだからね」

 そう言った沙織は、急に嗚咽し始めた。


「ほら、コウタさん。ここは肩を抱いて慰めに行くところですよ」


 しのぶに促されて、うつむく沙織の背中をさすった。


「ばか、もう心配掛けないでよね」


 そう言った沙織は、俺の腕に両手でしがみついた。

 こんなしおらしい沙織は反則だって。

 うん、としか返せなかった。


 自分で言いだしたくせに、しのぶが不満そうに口を突き出している。


「私を庇ったせいで、あんなことになって。私も死ぬほど心配しました」


 そう言って、しのぶも俯いている。

 空いている方の手がどうにか届いたので、しのぶの手を引き震える肩を抱いた。


「ごめんな」

 何を言えば良いか分からず、短いフレーズだけを口にした。


「あ〜あ。あんたらの仲に、アタシがつけいる隙なんてないみたいね」

 キャシーが頭の後ろで手を組みながら、そう言った。


 数十秒ほど甘いムードを楽しんだが、そろそろ今日の目的地は近い。

 ゴールの部屋にガーディアンがいないことを祈りながら、俺は道中固まらないようにと仲間に指示を出して歩く。


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