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ハエと美少女姉妹(異星人の使いと異世界の冒険)  作者: 千葉の古猫
第1章 地球編その1 コウタがハエと美少女姉妹に翻弄される日々
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第52話 最後の影武者

 コウタにもある能力が…

 いよいよここら辺りから冒険の旅が始まりそうです。

第52話 最後の影武者


「ごめん。単純は取り消すよ。

 裏表が無いことが沙織の良いところだしな。

 ってことは、さっき言ったことって」


 俺は沙織を見てにやつく。


「え、さっき言ったことって、何よ」


「エッチなことはしないでよ。まだ心の準備ができてないから。ってやつだよ。

 心の準備ができ次第、エッチなことをしても良いってことか」


 沙織の目を見ながらそう言ってやった。

 言ってから気がついた。沙織には何でも気軽に言えそうだと。


「ち、違うわよ、裏表が無くたって、ジョークくらい言えるわよ」


 沙織の顔がまた赤くなった。


「そうか、少しだけ残念だな」


 俺はその反応に満足する。

 しのぶの告白が、沙織のための演技だったのは残念だが、こいつは本気らしいからな。


「なによ、恥ずかしいこと言わないでよね」


 熱くなった顔に両手を当てて冷やしている。

 こんな可愛い女子を、これ以上(いじ)めるのはやめておこう。


「ま、それは置いといて。

 しのぶがエスパーだと聞いて、なんかいやな予感がするんだよな」


「コウタ、霊感があるの」


 沙織が目を輝かせる。

 こいつ、超能力とか幽霊が好きなのか。


「幽霊はまだ見たことがない」


「なんだ、つまんないの」


「でもな、たまに悪い予感が当たるから怖いんだ。

 今度もそうじゃないかとね」

 たんたんと俺は言った。


「まさか、コウタには予知能力があるの」


 沙織は身近にエスパーがいるからか、俺の言う事を否定する考えはないらしい。

 予感と予知は全く別物だろうが、あのビジョンを伴う予感はなんだったのかと思うことはある。

 とは言え、予知能力なんてSFの世界だけのものとは思っている。


「そんなものある訳ないだろ。

 たまにカンが当たるってだけさ」


「予感とカンって同じなのかな。予感と予知は違うの」

 沙織が珍しく、考える様子を見せながら静かに言った。


「俺のは普通のカンだよ。予知能力なんてある訳ないだろ。

 でも、テレパシーはあってもおかしくないと思うよ」


「それは何故なの」


 沙織は俺をじっと見つめる。

 その長いまつげと、大きな目で見つめないでくれ。

 胸のあたりがざわざわしてくるからな。

 そんなときめきを押し隠す。


「人は言葉でコミュニケーションするが、集団で狩りをする狼とかカラスなんかも、鳴き声で意思疎通しているだろ。

 テレビ、ラジオ、電話なんかは、電波に情報をのせてやり取りする。

 これは俺の単純な考えだけど、電波に情報を載せられるなら、脳波にも情報を伝える機能があると思うんだ。

 普通の人にはできなくても、中にはその機能をコントロールできる人がいるのかも」


「そう聞くとそんな気がするわ」


「しのぶは、脳波に関する送受信能力が普通の人より格段に強いのかもしれない」


「受信能力はありそうだけど、送信能力については聞いたことないけど」


「しのぶがテレパスで、送信力があったとしても、きっとその力は使わないだろう。

 脳に直接話し掛けられたら、誰もが恐怖を感じるか、嫌悪感を示すだろうからな」


 自分だったら、人から恐れられ、嫌われる存在には絶対なりたくない。


「あの子、始めの頃は、聞きたくないことが、勝手に聞こえてくるのが嫌でたまらないって言ってたから、それは分かるわ。

 その内に、その能力をOFFにするやり方を覚えたみたいで、悩み相談を受けることはなくなってたんだけど。

 最近、自分の意志で能力を解放することがあって、それが今の私の不安なの」


 表情に暗い影が差している。うれいを見せる美少女はいつだって美しい絵になる。


「何か、切っ掛けになることがあったのかな。

 内緒にしてるのに、俺がしのぶに訊くわけにはいかないけど」


「もし相談されたら、真面目に聞いてあげてくれる」


「もちろんだ」

 これは偽りの無い気持ちだ。



 突然、俺のPCがブツブツピーと音をたてて、ディスプレイにフライが現れた。

 本体は、ディスプレイの枠上に止まっている。


「フライじゃないの。今日のニュースのことで訊きたいことがあるのよ」


 沙織はいつもの感じを取り戻した。

 影のある沙織も悪くなかったが、こっちの方が見慣れてるから安心だ。

 とは言え、ついこの前まではこの上から目線が苦手だったのだが。


「さおりん、訊きたいこととはなんだね」

 フライは、複眼をやや光らせている。


「パーチン大統領の影武者裏切り事件よ。二つもあったじゃない」

 沙織は指を二本立てながらそう言った。


「あれは日本チームで企画した作戦を実行したものだ」

 フライの複眼の光は消えていた。


 今度は俺のiPadのディスプレーが白く光り、次いでハエトリグモがアップになった。


「技術担当のアタシたちも頑張ったんですけど」

 ハエトリの本体、クモミンはタブレットの上枠に鎮座していた。


「クモミンたちが影武者を副作用無しでハゲにした。

 また、影武者を捕らえたラシア兵士風のアンドロイドや、車両を用意して無事に逃がした転移空間設定もクモミンらによるものだ。

 あの1回目の映像が21点、2回目の影武者作戦では30点満点を獲得して、ヨーロッパチームに大きく勝ち越している。

 これも日本チーム結束の結果だ。みんなに感謝する」と、フライ。


「人質に取られていた、影武者の家族たちの救出もうまくやってくれたんだね」

 俺は気になっていたことを確認する。


「あれは、事前に調査したスパイ3号のお手柄だな」


「3号って沙織と俺をスパイしてたやつか」

 3号に対しては良い感情は持ってないが。


「何よ私のスパイって。そんなの聞いてないんだけど」


 沙織は、例のポーズでフライを指差した。

 一度だけで良いからウララのコスプレをさせてみたいぜw


 俺は沙織に、3号に関する経緯いきさつを簡単に説明した。

 その結果、俺が委員に選ばれて沙織と和解できたことを教えると、それなら良いわと、納得した。

 心根のさっぱりとした良い子だな。


「お手柄のスパイ3号には、僕が名付けしてやっても良いかな。会って話したことは一回もないけど」

 人質救出に役立ってくれたことを評価してやりたいと思った。


「良いだろう」

 フライは申し出を受け入れてくれた。


「じゃあボンドくんで」


「ジェームズ・ボンドのボンドかね」


 クモミンからツッコミが入る。

「3号は007みたいにカッコよくないけど喜びそうね」


「よし、3号にはコウタから名付けがあったと伝えておく」


 そう言ってからフライは、大きな複眼を七色に光らせ始めた。

 何かあったのか?


「喜んでばかりはいられない。

 協力者の一人最後の影武者は、裏切りを恐れたパーチンに捕らえられた。

 あやつの人質が救出されたことが知れてしまったせいでな」


「影武者3号が、どこに捕らえられてるか分かってるんだよね」

 エターナルが出し抜かれる筈が無いと思いたかった。


「ボンドくんと連携している、スパイ1号にも見つけられなかったようだ」


 期待が裏切られた。


「まずいじゃないか。俺たちの協力者がパーチンから拷問を受けてるかも知れない」


「そこでしのぶが協力してくれることになったのだが、姉の沙織としてはどう考える」


 とんでもなく危険な提案が飛び出した!


 パーチンをいじるイタズラ企画から、危険な活動に足を踏み入れることになりそうです。

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