第20話 2次元変換グラス
第20話 2次元変換グラス
「2次元変換グラス〰」
初代どらえもんの声で、クモミンはそれを紹介した。
「そういうの、いらないから」
そう言うと、クモミンはあからさまに凹んだようだ。
四次元ポケットかよ、とつぶやきながらそれを手に取る。
普通のメガネみたいだが。
「それをかけて見ると、3次元少女が2次元少女に変身するんだよ」
いつもの女児の声に戻して、クモミンは得意げに手を拡げた。
「それにどんな意味があるんだよ」
ちと、俺はクモミンに当りが強すぎるだろうか。
「だってご主人は3次元少女は苦手だけど、2次元少女は大好きでしょ」
こいつ、俺の秘密にしているゲーム事情を知っている。
「どうして、そんなことまで知っているんだよ。
俺のプライバシーにズカズカと踏み込んで来るなよな」
少しやさしくしてやろうかと、さっき思ったばかりだが、こいつをあまり調子に乗せるのは駄目だな
「まあまあ、文句言わないで、ちょっとつけてみて下さいな」
「ここには、3次元少女はいないんですが」
「じゃあ出しますね。
誰が良いかな、好きな女子タレントとかいますか」
クモミンは、前足をオニキスのような大きな目の横に付け、次いで両前足を広げる。
クモミンの言葉に、俺は食いついた!
「おいおい誰でも出せるのか、ちょっと待って、誰を出してもらおうかな」
ここは、かんなか、みなみか、すずちゃんか、ううん、一体誰を出してもらおうか。
すぐ目の前に、等身大のみなみちゃんが出てきたらどうしよう。
俺は少し、本気でどきどきしてきたぜ。
「いやいやジョークだから、そんな訳ないじゃないですか、やだなあ、いけずぅ」
俺は本気でがっかりしたが、クモミンになめられないようにしなきゃと、さも知っていたフリをする。
「だよなぁ、そんなうまい話がある訳ないよ。じゃあ、今は実験できないな」
「そうですね、では使い方だけ説明しておくんで、一応メガネを掛けてみてくださいね」
改めて、メガネを点検してから掛けてみる。
普段、メガネを掛けることはないから少し違和感があるな。
「普通に、こんな感じで良いか」
「そうそう。
メガネのツルを軽く揺らすと、2次元変換モードになり、変換率レベル1になります」
眼の前に少女はいないが、言われたように、右の親指と人差指でツルをはさみ1回揺すってみた。
『2次元モード、レベル1です』
小さな機械的音声が骨伝導で伝わってきた。これくらいなら周囲の人には聞こえないだろう。
「1回揺するごとに次のレベルに進みます。
レベル3まで進むと、4回目で2次元変換モード終了。後は同じ繰り返しですよ」
「なるほど。
まあ眼の前に対象者がいないから、イマイチ効果は分からないが、これをプロジェクトの会合で使えと」
3次元少女が2次元に見えれば、なんとなく俺の女子耐性が上がりそうな気がしてくるw
「そういうことです。
ご主人が苦手な宮坂沙織も、かわいい2次元美少女に変身しますよ」
ほお、そういうことなら、宮坂沙織に対処できるかも、ううん、できるのかなぁ、、、
「分かったよ、使わせてもらうよ。
それからな、女子との会合の時には俺をご主人さまと呼ぶなよ」
「なんと呼びましょうか」
「宮坂に難癖つけられたくないから、コウタさんとか、コウタ君くらいが良いかな」
「じゃ、コウタくんで」
こうして、俺の心の準備は整いつつあったw




