第18話 ラインの友だち申請とリアル電話
第18話 ラインの友だち申請とリアル電話
一応、友だち申請してきた奴のラインネームを確かめてみると、『しのぶ』となっている。
おいおいまさか、推進委員のしのぶか、宮坂沙織の妹か。
何故俺のラインに。
あわてて、自分のラインアプリの設定を開く。
確認するとOFFにしていた筈の、友だち自動追加の項目がONになっている。
フライか、クモミンか、やったのは。
このせいか、友だち申請がきたのは。
でも宮坂しのぶの電話番号など『連絡先』の中にある筈がない。
念の為連絡先を探してみると、
『ま』行欄に、無い筈の名前『宮坂しのぶ』があった!
「おいクモミン、これはどういうことだ。
何か知ってるよな、おまえ」
クモミンは、タブレット画面から返事した。
「はい、同じチームの委員ですから、スマホの連絡先に登録しておきましたよ、ご主人」
さも、当然という態度だ。
その時、今度はスマホが着信音を鳴らした。
表示名は無い。
コール7回目に電話に出たが、俺からは何も話さない。
「これ仲村さんの電話ですよね。
こちらの連絡先に自動登録されてましたから間違いないとは思いますが。
こちらからかけた電話で大変失礼ですが、下のお名前を確認できますか」
押し殺したような女子の声だ。
どうやら、184を頭に付けて電話してきたらしい。
その用心深さ、キライじゃないぜ。沙織の幾つ年下の妹か知らないが。
「コウタです」
俺の声も知らず知らず押し殺されていた。
「確認しました。
コウタさんは、何故ラインの友だち申請を承認してくれないのでしょうか。
フライさんから、事前連絡が行ってると思うのですが」
もう押し殺した声ではなかったが、話し方は落ち着いている。
妹じゃなくて姉の間違いか、そう思ったくらいだ。
この時俺は同時に、女子を目の前にした時と比べ、電話を通した時では女子耐性がそこまで貧弱じゃないことに気がついた。女子との電話が初めてだったことにも。
ここは、なめられてはいけない所だ。こっちが上級、向こうは平だからな。
「ここにフライはいないので、確認はできないが単なる連絡ミスでしょう。
上級推進委員の仲村幸太だ。よろしくたのむ」
相手は少し間を取っている。
「いきなりマウントを取るのはやめてもらえませんか。
私、姉との経緯も知ってるんですよ」
顔が見えなくても分かる。
こいつは、ジト目でこちらの様子を伺っている。
ここは下手に出てみるか。
「そんなつもりじゃなかった。ごめんなさい。
で、しのぶさんはお幾つですか」
「今度は年齢差のマウントですか。
まあいいです。
私は中2の14歳です。
早くラインの友だち申請を承認してください。知らない人とは、文字の会話の方が楽ですから」
なかなか手強そうな女子だが、姉のような高飛車女とは違うようだ。
「すぐ承認するよ。何か用があるならラインでよろしく」
言った途端に電話はぷつんと切られた。
クソ、忌々《いまいま》しい姉妹だ。
『ライン〰♪』
さっそく来やがった。
『さきほどは失礼しました。
改めまして、平の推進委員、宮坂しのぶです。
以後よろしくお願いします』
さきほどの意趣返しか。
既に俺は、3個下の14歳、中2になめられてしまったようだ。
ここはどう返すべきか。
俺は、ラインにふさわしくない、丁寧な文章を打ち込んでみた。
さて、どう出るか。
『こちらこそ、さきほどは失礼しました。
しのぶさんの立場になって考えてみれば、すぐ分かることでした。
推進委員になったのは後なので、私はしのぶさんの後輩です。
改めまして、川北高校2年生、お一人様認定されている仲村幸太です。
スタートで私はしくじりましたが、これからはお互いにフラットな気持ちでお話しできたら良いなと思います。
そして、これはラインなので、できれば言葉遣いを少しフランクにしたいのですが』
精一杯へりくだってやったぜ。
うん、返事が遅いな。でも俺も長文を打ったせいで、さっきの返しが遅かったからまた仕返しのつもりなのか。
そんなことを考えていると、俺のよりも長いテキストが返ってきた。
『こちらこそ生意気な態度をとりまして申し訳ありません。
ライン上では、先輩に対してもフランクで良いんですね。
じゃあこれからよろしく、幸太さん。
えっと、あの時は姉がひどいことを言ったようでごめんなさい。
姉は『私が仲村をボッチにしてしまったのかも』と、一時は反省したようなこと言ってましたが、姉さんは反省してもまた同じようなことしちゃうんだよね。
根は悪くない人ですけど、私もいつも振り回されてるから。
パーチンプロジェクトでは、姉がまた何かやらかしそうだし、その時は一緒にとっちめてやりましょうね。』
え、こんなに態度変わるのか?
だって、あの宮坂沙織の妹だよな。
『君、本当にあの宮坂さんの妹さんなの』
俺は思わず、本音のコメントを打ち込んでしまった。




