第11話 エターナル星の表彰式
第11話 エターナル星の表彰式
僅かに空気が振動して、ぽわーんという感じで、部屋の中空に女神の立体映像が浮かんだ。
もちろん着衣状態だ。薄衣の。
「おめでとうございます、仲村幸太様。
あなたは、私達エターナル星の厳正なる審査を見事に通過されました」
俺を見ながら、女神は自分でパチパチと拍手する。
まるで目の前に居るようだ。
中々の日本的美人で、その声も優雅だ。
俺はポカンと口を開けたままだった。
「表彰状」
そう言って、女神はA3サイズの紙らしきものを自身の前に拡げ、書かれた文章を読み上げ始めた。
「フライ、これ、何のイベントなんだ」
「コウタ、儀式中は私語をつつしんで」
俺は渋々従った。
「あなたは、この中級文化星、地球において、
強大な力を秘める上級文化星の使者をかたわらに置き、
自らの言動で他に強い影響を行使しうる立場にありながら、
私利私欲に走らず、その力を他に見せつけたいとの自己顕示欲をも制御する姿勢を貫きました。
よって地球人類と私達エターナル星との友好の橋渡しを委託するに足る、高潔な存在と認めてここに表彰いたします。
エターナル星、太陽系支部代表、マックドナルド・ピースメーカー」
そこまで読み上げると、和風の女神はその手にあった紙をくるりと反転させて、俺に手渡す仕草を見せた。
俺はあっけに取られたまま手を伸ばし、その紙を小中学校の卒業証書のように受け取った。
3D映像の筈なのに、その紙は実体を伴っていた。すげえハイテク!
「ああ、あとこれね、これは認定証です」
ついでのように差し出された、A4サイズの紙も俺は素直に受け取る。
「これにて、表彰式と認定証授与は無事完了しました。
皆様、お疲れ様でした」
そう告げた女神は、煙のように目の前から消えた。
我に返った俺は振り返りフライに詰問する。
「詳しく説明してもらおうか、フライ」
すると、フライを映していた俺のPC画面に少しノイズが走り始めた。
次に画面一杯に写ったのは、宇宙バエではなく、蜘蛛だった。背景はモルタルぽい。
おいおい、今度は蜘蛛かよ。俺の頭はおかしくなりそうだ。
大きな蜘蛛は左右4本ずつ計8本の足を持っていた。
そいつは、その内の前側2本を手を合わせるようにして2回叩く。
次いで、一方の足で上の方を指差し?いや足差した。
ええい、そんなんどっちでもええわ。
とにかく蜘蛛の指し示したモルタル天井で、何か黒っぽいゴミが僅かに動いている。
よく見ると、それは小さなクモだった。




