第12話
それぞれ武器を構え、戦う準備は出来たが相手は動かない。
どうしたものかと思っていると、、
急に足を思いっきり振り、紅輝がそれを短刀で受けた。しかし、受けた反動で遠くまで飛ばされてしまった。
異生物は地面に大きな音と共に降り、飛ばされた紅輝の方へ向かう。
「紅輝がやばい。」
柳田がすぐに持っている刀で斬りかかろうとするが、異生物が考えていた以上に足が早く、追い付けない。
「亮!何か白瀚から貰ってないのか!?」
柳田が急いで聞くが、
「貰ったものは何もない…」
亮はどうすればいいか分からない状況で唖然としている。
「このままじゃ喰われちまう!!紅輝!逃げろ!!」
柳田の声は紅輝に届いている様子はない。
何か策はないか。そんなことを考えていると、急に異生物の歩く速度が落ちた。足が切れたり、怪我をした訳でもなく、動き自体がスローモーションになっている様だった。
柳田が亮の方を見ると、亮は異生物の方へ両手をかざして何かブツブツと言っている。
「亮、お前…そんなことができたのか。」
柳田が驚いた様子で言った。
異界に来る前、、
「亮、ちょっといいかな?」
「何だ?」
「結界術って使える?」
「実際に使えたことはないけど、少し習ったことならある。」
「それじゃあさ、」
白瀚は亮へ手のひらを向ける。
「異界に行ったときに使ってみてよ。」
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「亮…それは、、」
目には映らないが、何か…気配?のような異様なものを感じる。
「俺が出来るのは弱体化だ。寺にいて培った感覚で対象に状態異常を起こすんだ。」
柳田は異生物の方へと走り出し、亮のお陰で追いつくことができた。刀で足を一本だけ斬り落とすと、異生物は動きを止めて柳田の方を攻撃するが、動きが遅いので簡単に躱すことができる。
伸びてきた足を躱す。動きが遅いからとはいえ、頭を攻撃しにいくには難しい。
どう攻めるべきか考えていると、異生物がバランスを崩し、頭が下に降りてくる。どうやら、後ろの方の足が斬られたらしい。
左目を目掛けて刀を振り、顔に大きく傷を入れる。異生物がバランスを整えて顔が地面から離れていく。もう一度足を斬り落とそうとした時、異生物の頭が地面に打ち付けられる。
すると異生物は動かなくなり、土埃が晴れてくると異生物の頭の上には脳天を刀で突き刺した紅輝がいた。
「先輩、大丈夫?」
「それはこっちの台詞だ!!危なかったんだぞ!」
「そうだったね。先輩も亮もありがとう。お陰で助かったよ。」
初めて異界に来た時よりも確実に戦いに慣れていた。
「一段落ついて休みたいと所だが、今日は時間がない。先に行こうか。」
刀を鞘に納めた柳田は歩きながら言った。
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「一応、渓谷としては行き止まりか。」
紅輝が話す。長い時間歩いた3人は渓谷の行き止まりにたどり着いた。そこには洞窟の入口があり、中は暗闇で見えない。
「これに入るのか?」
洞窟の入口を眺めながら尋ねる亮。入るべきかどうか迷っていると、、
『おい、先客がいるぞ。』
『え~。うちらが最初じゃないの~?』
後ろから2つの声が聞こえ、3人は振り向くと黒いスーツに黒ネクタイの男女2人が立っていた。
紅輝が目を見開いて言った、、
「涅桜!!」




