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異世界夫婦の「愛してる」はハカイのコトバ


 冒険者ギルドの治癒師の少年は既婚者だった。

相手はこのギルドで気の合った盗賊娘である。


 特にお互い惚れたとか、そういう気持ちで結婚したわけではなく。

現実的な織り合わせで結婚した。


 そして今、その治癒師の目の前で、同年代の男性剣士が女性剣士に求婚している。


「好きです。付き合って下さい!」


 なんて、この人たちは初々しいんだろう…。

 それとも、うちの盗賊娘もそう言われたら嬉しいだろうか。

治癒師はそう思いながら、治癒師は冒険者ギルドを帰る途中に一輪の花束を買った。


 そうだ、どうせやるなら、壁ドンというやつをしてみよう。たぶん、喜ぶんじゃないかなぁ…。しかし、恥ずかしい...。神の使いで童貞の治癒師は恥ずかしくて一人で照れながら家へと帰る。


 夕日が赤く室内を照らしている。


「アナタ。おかえりー、早かったね」

 日常を装う治癒師はとっさに、持っていた花束を玄関の影に隠した。


「ただいま。今日もお弁当美味しかったです」

「そう。よかったね」

「ごめん、ちょっと帰り遅くなって、今からご飯用意するねー」


 盗賊娘は狭いキッチンに立つ。

「うん。僕も料理作りたい」

 治癒師のローブを紐で結い、炊事用の装いになる。

「いつも、ありがとう」

「いいよ。お互い働いてるんだから」


 ここでなら、壁ドンできるか...。でも本当に恥ずかしい。治癒師は一人で顔を赤らめる。

色々考えながら時間だけが過ぎていく。

「…それでね。砂糖が高くなってるからー、お菓子作り控えようかなって」

「え…、あ、少しぐらい。いいんじゃない?」

「えー。だって、子供が出来たらお金かかるしー、溜めとかなきゃ~」

 盗賊娘は、治癒師が好きな卵焼きを作りながら答える。


 治癒師は盗賊娘が壁に近づくのを治癒師はチラチラ確認する。


「そうだね。でも、寂しいなあ」

 盗賊娘が野菜取りに治癒師の傍に来た。


 今しかない…。


 治癒師は、右手で盗賊娘を壁で挟み込むとじーっとその顔を覗き込む。


「え…?」


 時が止まる。


「え…、え…?」


 盗賊娘も包丁を手にしたままの盗賊娘は呆然とする。

あまりの非日常さに盗賊娘の鼓動が早くなった。


 もう無理!無理!限界!神よ…。治癒師が盗賊娘にそっと唇を添わせようとするが。あまりの恥ずかしさに手が出せない。治癒師は頭が真っ白だった。


 覚悟決めろよ!治癒師は、そして、何回も練習したあの言葉を盗賊娘に紡ぎ出す。


「愛してる…」


 心の底からつぶやくように言った。


 いま、なんて言った。あいし…。え、意味を理解できない。

「あ・い・し・て・る」の5文字の羅列に、盗賊娘はエルフ耳まで真っ赤にした。


 同時に、萌える業火に包まれた。


「…ひぃーっ!」

 やばい、どうしよう。やばい!盗賊娘はパニック状態だった。

 あ、隠れなきゃ…!盗賊娘は即座に痛く冷静に対処法を実践する。


 盗賊娘は、咄嗟(とっさ)に治癒師を突き飛ばし、玄関までダッシュして。扉を開けず飛び出そうとする。


 身体が上手く動かない盗賊娘は、手が渋滞して、ドアに顔面ごとクリティカルヒットした。

 痛みには慣れてるので、構わず鼻血を出しながら、表に逃げていった。


 え、え、ひぃってなんだ?そして、何で逃げられた。当の治癒師は、呆然と尻餅をついていた。


 やっぱり、愛してる。なんて、キャラじゃなかったのかな。少し涙目の治癒師も、後を追った。

玄関の先で盗賊娘が血まみれの包丁を持ったままうずくまっていた。


 一見でやばいやつである。


「怪我したのか!いま治癒する!」


 大事な盗賊娘の流血に治癒師の脳内が活性化する。


「いいですぅ!顔見られたくないですぅ!」

 やばい、なんだ、この感情。れ、れいせいになれわたし。血まみれの盗賊娘は、自分のケガより、赤顔が治癒師にバレるのが恥ずかしすぎた。


「そんなこと言ってられないだろ!」

 治癒師は怒鳴った。


「いいから患部見せろ!」

 盗賊娘は、必死の抵抗で目をそらした。


「わかったからぁ。まってよぉ…まじで、まって…。落ち着くからぁ」

 わたし、何で恥ずかしがってるんだ。盗賊娘は耳まで真っ赤にした顔を見せた。

それを小馬鹿にすること無い。治癒師は鼻に回復魔術をかけ、適切に止血しタオルで顔を拭う。


「骨は大丈夫だね。良かったよ」

 治癒師は優しい顔をして、盗賊娘を見た。

 あ…。盗賊娘はこの時、気が付いた。そして、じーっと治癒師の幼顔を見つめる。


「ねえ、アナタ」


「…ごめん。悪かった変なこと言って」


「も、もう一度言って下さ…ぃ…」


「ごめんなさい」


「違う」


「...その...私も愛してます」

 盗賊娘は治癒師を好きどうか。正直、いままでピンときてなかった。

もっと、垢抜けた人が好きだったし。最初は、素人丸出しの治癒師は苦手すらあった。


 でも、今は、安心してこうして暮らせるしていけるし。

何より、自分のことを思い護ってくれる。治癒師は、どこまでも一途な人だった。


 生理痛が辛い時。ずっとヒールを掛けて痛みを取ってくれるのはこの人ぐらい。

 ホントは、私はこの人のこと好きなんだ。と盗賊娘は強く感じた。


「ふぁ…」

 赤面の治癒師は思わず声が漏らす。似たもの夫婦だった。



拝啓。ひたすら甘く煮詰めました。存分に萌えて下さい。敬具


「宜しければ、ほかの作品も見て頂ければ筆者は喜びます。」

 これが「Call To Action」です。

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