事故後
手術中の点滅が消えた。中からは手術医が手袋を外しながら出てきた。真顔なので成功か失敗かわからない。御幸のご両親が真っ先に医師のもとへ行き、俺もそれについていった。
「手術は成功です。しかし、肩の機能はまだ完全に復活しませんから、しばらくはリハビリが必要になるかと思われます」
「そのリハビリというのは、具体的にどんなことをするのでしょう」
手術医に効くべき事ではないことは分かっていた。それでも聞かずにはいられなかった。きついトレーニングが待ち受けているのなら、俺はそこに立ち会って支える必要がある。
「そうですね~。肩の可動域を広げるものになりますから、マッサージから軽いダンベルを使ったものまで、多種多様です。詳しいことは主治医にお聞きください。御幸綾さんは503号室に移動していますから、そこでお待ちください」
「ありがとうございました」
とりあえず無事ということが分かって良かった。しかし、俺のせいでそもそもこんな怪我を負うことになった。その自責の念からは恐らく逃れられない。だからこそ、そこからどうしていけば良いのか考えていくしかない。
まずはご両親に会いたいだろうと思い、俺は廊下に立っていた。俺はこの家族を凄いと思う。全員が御幸を女将にしたがり、本人もまたなりたいという。俺だったら、親に過剰な期待をされていたら逆に頑張れなくなってしまう。
中から2人が出てきた。中へ入って良いと言われたので、おそるおそる入っていった。
「御幸」
「紅宮君、来てくれてたの?」
「当たり前だよ。肩はどう?痛む?」
「動かすと痛い。でも、そんなにかな」
「そっか。本当にごめん」
「なんで紅宮君が謝るの?」
「だって、この怪我は俺を庇うために負ったものだろ?もし、俺が形勢を崩していなかったらそもそも御幸が俺のことを庇ってくれる必要も無かったし、すべては俺が弱かったから」
「強いか弱いかなんて関係ない。紅宮君は店員さんを守ったでしょ?もしあのままお金を渡していたら店員さんが責められて他かもしれないし、その男の人がどこかでまた悪さするかもしれない。その可能性を絶ったんだよ。私はそんな紅宮君に怪我してもらいたくなかったの。全国大会を控えているのに、肩の怪我なんて最悪でしょう?」
「確かに最悪だけど、御幸が怪我をするのはもっと辛い。俺は御幸には1番怪我をして欲しくなかった。でも、守ってくれてありがとう。ちぐはぐな気持ちだよ」
「そうだね。今の紅宮君はちぐはぐ」
そうして笑った。くすくすと。
俺はここから1つ決意した。これからは、絶対に御幸を傷つけることはしないし、どのような状況になっても、何とかして御幸を救う。御幸にも人を守りたい気持ちはある。きっと万人にある。だからこそ、時に甘えるけれども、本当に危険な状況下に陥った時にどうにかできるような力を持つ。




