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短編集【ヒューマンドラマ・現代】

何度でも生まれ変わる

作者: ポン酢

 幼い頃、世界は希望に満ち溢れていた。

目に映る全てが輝いていた。

世界の中心がどこにあるかなんて考えた事もなかった。


 子供の頃、世界は滅んだ。

日々に絶望が溢れ、幼い日に見ていた希望はすべて幻なのだと知った。

敷かれたレールから外れたら終わりだ。

そしてより良いレールに乗る為に日々追われる。

世界はいつだって自分でないどこか遠くを中心にして動いていて、私はいつだってその隅に追いやられ、なんの為に生きているのだろうと思った。


 大人になって、地獄に落ちた。

世界の隅に追いやられた人々は、世界の中心にいられなくとも少しでも自分の欲望を満たそうと、平気な顔で他人を騙し奪い傷つけた。そしてそれを「駆け引き」や「利口な生き方」と言う言葉で正当化していた。それに引っかかれば「〇〇の負け犬」と後ろ指さされ見下され蔑まれる。

どんぐりの背比べだ。なのに相手をズタズタに傷つけてでも、少しでも自分をよく見せようと手当たりしだいに奪う。奪って満足するかといえば、更に更にと繰り返す。そして自分は奪われたくないので徒党を組む。寄り集まって我が物顔でひそひそクスクス、奪いとった相手を「負け犬」と見下して笑う。

どのみち世界の中心でもない隅っこで、擬似世界の中心を作って偽物のカーストの高みでせせら笑っている。

世界の存在の意味のなさに何も感じなくなった。

おそらくすべてを諦めたのだ。


 人生を後ろから数えた方が楽になっただろう頃、ふと気づいた。

すべてを諦めてから見えてきたものがあった。


 ああ、そうか。

私は何にでもなれる。

何でもできる。


 これはこうでなければならないなんて決まりはただの思い込みだ。幸せとはこれだと言うのも思い込みだ。


自分以外の誰かが言ったただの言葉だ。


 そしてそれに翻弄されて、何もできないと決めていたのは自分だ。なりたい形を諦めていたのは自分だ。

誰かに自分の全てを決めさせていたのは、他の誰でもなく自分自身なのだ。


 こうなんて決まりはない。

強いて言うなら、こうだと自分が思ったものになれば、それが正解なのだ。自分以外の人間がそれをどう言おうが、それはその人の世界の事なのだ。


 ここまで来るのに随分と遠回りしたものだ。

でも、私は不器用だから、多分そこまでしなければ気付なかったのだ。


人それぞれ、着地点は違うだろう。

答えも違うだろう。

ただその答えは自分で探し出すしかない。


自分自身を自分だと決める答えを。


 人の答えを借りてもそれは正解じゃない。

たとえ傍から見れば愚かしくても、それが自分の答えならそれが全てなのだ。誰に何を言われたって気にする必要はない。


人は皆、違うのだから。

人それぞれ答えは違うのだ。


 それでも迷いは生まれる。


でも、大丈夫。

私達は何度でも生まれ変わる。

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