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雪降る夜に、握手を交わす

作者: A

 澄み切った、それこそ、どこまでも覗き込めるような冬の空。


 上を見上げているはずなのに、まるで底のない穴にでも吸い込まれる様な景色の中、天からの贈り物が世界を白く染め上げていこうとしていた。


 人も、物も、音も、灯りも、全てを忘れ、ただ私はそれに魅入られていた。



 

 

 しばらくそうしていただろうか。


 ようやく前を見ることを思い出した私は、再び歩き出す。


 自嘲するような笑みと共に吐きだされた白い吐息が白銀の世界に溶けていく。



 

 

 大事な人などいない。大事なものなどない。

 

 何の価値もない、ガラクタのような人生だろう。



 ただ人の形をしているだけの足跡を雪に謝りながら刻み込んでいく。


 

 じんわりと湿気を帯び始めた足は、徐々にその感覚をすり減らし、自分が地面と繋がっているのかすらもわからなくなる。



 何の感情持たず、歩き続ける、前を見ているようで見ていない私。


 

 夜でも、昼でも、朝でも、私の瞳が何かを写すことは無い。未来を写すことは無い。



 

 人の温かさの記憶など最早、私には不要と海馬には判断されたようで、微塵も思い出すことができなかった。


 再び、笑みと共に白い吐息が流れる。

 


 だが、そんな取り留めもないことに有り余る人生を注ぎ込んでいた時。


 不意に差し出されたものに気づき、反射的にそれを握る。



 手には、何かのチラシと共に渡されたカイロ。



 封を開けて、揺らしてみると、温かさという形で反応が返ってくる。


 なるほど、それは、自分に相応しい相手だった。



 涔々と音も立てず降り積もる雪の中、それと握手するかのように手元を揺らし、私は歩き始めた。


純文学とは何ぞやというところから始まったものです。

いまいち、よく掴めませんが。

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