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最終話:我が夢が、桜の如く、散る中で、立ち塞がるは、もののふ二人.20


 壁に激突した痛みが俺の意識を現実に回帰させる。

 赤い血が俺の口から吐き出され、俺は朦朧とする意識の中で、いったい何が起こったのかを必死に考えた。 


 クソっ……機械ぶんのリーチがあったせいで攻撃が当たったのか?

 あんなん食らってよくこれだけで済んだな……咄嗟に避けたからもろにもらわずに済んだのか?

 いやっ、そんなことよりも!!!

 追撃が来る!!!

 急いで立たないと!!! 

 ぐあっ!!?

 くそっ、足がうまく動かせねぇ……。


 …………また、やってしまったのか?


「ざけんな!!!! 俺はもう二度と!!! あいつの足を引っ張るつもりはねぇ!!!!!」


 こちらへと今にも近付いてこようとしている怪物を見て、俺はズボンで挟んでおいた二丁の拳銃を怪物に向けた。


 もしこのまま何もせずにここで倒れていたら、きっと涼太が護ってくれるのだろう。

 三年後のあいつがした時のように。

 だが、俺は涼太の背中に隠れながら安全な場所で戦いたくて涼太と一緒に戦ってきた訳じゃない。


「俺は涼太の隣であいつと共に戦う!!!! そこに上も下もねぇ!!! あるのは揺るぎない信頼だけだ!!!! だから俺は、死んでもこの役目を遂行してみせる!!!!」


 両手に握りしめた銃を怪物に向けたまま交互に撃った。先程の横薙ぎで左肩の傷が広がってしまったのだろう。

 痛みが俺の精神を蝕む。

 一瞬、なんで俺がこんな目にあわなくちゃいけないんだよと、頭にその考えが過ぎった。

 だが、その解答は一瞬で出た。


 もし、ここで俺が何も成さずに死ねば、未来は再びあの醜悪なゾンビが蔓延る世界になってしまうのだろう。


 俺はそれが嫌だ!!


 断固として嫌だ!!!


 ……大切な仲間が死んだ。


 背中を任せられる相棒が死んだ。


 俺が心から愛する三春(ひと)が死んだ。


 あの世界になるのだけは絶対に嫌だ!!!!


 だから俺は戦う。


「それ以上に理由なんていらねぇんだよぉおおおおお!!!!」


 声を大にして叫び、痛みを無視しながら左手に握る拳銃の引き金をただひたすらに引いた。

 直後、その拳銃から弾切れの合図が鳴る。

 それに一瞬気を取られるが、俺はすぐに前方を向いた。

 そこには何故か動きが制止している怪物の姿があった。

 距離は二メートルも無かっただろう。

 何故動かないのかもわからない。

 だが、理由なんてものはどうでも良かった。


「涼太ぁああああ!!!」

 喉が張り裂けそうな勢いで叫んだ。


 直後――


「充分すぎる仕事だよ、相棒」

 その言葉と共に、怪物の首は胴から離れ、俺の前にゴトリと落ちたのだった。


 ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。


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