最終話:我が夢が、桜の如く、散る中で、立ち塞がるは、もののふ二人.12
額に浮かんだ汗が、頬を伝って床に落ちた。
吐き出される息の間隔が短くなっていることを自覚しながら、俺は口を開けた。
「いいじゃないか別に。お前は見えない盾で守られ、見えない弾丸を放つ銃まで所持している。おまけに手元には人質もいるじゃないか。どうせ言うことを聞いたところで最終的には口封じで俺達を殺すんだろ? だったら死ぬ前に元凶であろうあんたの口からこうなった経緯を聞きたいと願うのは、いたって普通のことだと思うんだが?」
「へぇ……絶対絶命であるというのにやけに落ち着いているんですね?」
「落ち着いているっていうより、投げやりに近いかな? 俺が殺されるのはまぁ、仕方ないことなんだろうなって思ってる。あんたにとっても俺のような人間は邪魔なんだろうし」
「否定はしません」
「だよな。でも、そこの玲奈と三春は巻き込まれただけの一般人だ。先ずは二人を解放してくれないか?」
「それは君が決めることじゃない」
「だったらこの薬を割る」
「構いませんよ。例えその薬が割られようとそこで気を失った研究者がとった資料やデータを元にまた作ればいいだけなのですから。ただそれだと面倒ってだけの話なんですよ。ただまぁ、薬を割った瞬間、三春君とこの女には死んでもらいます。急所をぎりぎりで外し、たっぷりともだえ苦しませたうえで死んでもらう。その次は廊下に転がっている使えない女、その次はそこの研究者、そして次に君の親族を探し出して殺すとしよう。君は捕まえ、自死すら出来ぬ空間で、毎日毎日目の前で一人ずつ死んでいく様を見るといい。あの時過ちを犯した自分のせいで無関係の人間が惨殺される。その苦痛を君には味わってもらいましょう」
「異常者めっ!!」
「だが、素直に渡すのであれば、この場にいる君達全員を一瞬で殺してあげましょう。一瞬だけ激痛を味わうことにはなるでしょうが、皆揃って死ねれば満足でしょう?」
「……確かに最初のに比べればマシと言えるな」
「だろう?」
「だが、あんたは一つミスを犯したな」
「何のことだ?」
「玲奈から目を離しすぎだ」
俺の言葉に、薄墨は慌てたように下を見ようとした。
だが、その動きに入る寸でのタイミングで、玲奈の口が告げた。
「遅い」
そして、玲奈の手に握られた電気銃が薄墨の左足の足首を撃ち抜いた。
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