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最終話:我が夢が、桜の如く、散る中で、立ち塞がるは、もののふ二人.8


 玲奈はなんとか気絶させた吉乃を十階の廊下に転がし、その横でどうすべきか悩んでいた。

 いつもであれば任務に邪魔な吉乃を放置して向かうところだが、今回ばかりはそういう訳にはいかなかった。


 まず第一に、今まで繰り返してきた未来の中で、三春という少女は幾度か自分が器として使っているこの胡蝶玲奈という少女を好きな人の恋敵として認識することがあった。

 だからこそ、出来る限り会わないようにと思っていたというのに今回も最悪な形で遭遇してしまった。事情を話すのは必要最低限に留めると決めている以上、これ以上の接触は悪手に他ならない。

 だが、理由としてはもう一つの方が大きかった。


 吉乃に誠を殺させる程の強力な催眠をかけた存在がいる。


 三年後の世界でも誰かが背後にいる可能性は示唆していたが、こちらに気付かれずに催眠を施す技術を軽視する訳にはいかなかった。

「……彼は秘密兵器として投入する予定だったが、致し方ないか」

 吉乃は携帯電話を取り出し、誰かの電話番号を入れた。

 そして、電話口から眠そうな声が聞こえてきた。

『……なに?』

 不機嫌そうなのは質問するまでもなく明らかだった。

「事情が変わった。悪いが今からこっちに来てくれ」

『眠いんだけど……』

「櫻木誠が君の力を必要としている」

 玲奈がその言葉を告げた瞬間、大きな溜め息を電話口の相手が吐き出した。

『三十分くれ』

「よろしく頼む」

 そう告げて、電話を切った瞬間だった。

 エレベーターが到着したような合図が鳴った後、背後のドアが開くのを玲奈の耳は聞き逃さなかった。

 玲奈は急いで振り向くが、その口に勢いよく手を当てられ、そのまま壁に背中を叩きつけられる結果となってしまった。

 体をジタバタさせるが、それはなんの意味もなさない。

(誠くん……急いで二人を連れて逃げろ……こいつはまずい……)

 大声を出して注意を促したいと願ったところで玲奈の口元を塞ぐ手が退けられる訳でもなく、彼女の願いが誠に届くことは無かった。


 ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。


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