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2話:朝起きて、そこにあるのは、臭い足、苛つく俺は、倍返しだ!!(後)2


「それではこれより、チーム桜の櫻木誠と、同じくチーム桜の河津涼太による模擬戦を開始する!!」

 老朽化した体育館の中で、大島隊長が声を高々に宣言すると、中央にて向かい合う俺と涼太を一定間隔で囲んでいた仲間達が一斉に歓喜の声を上げた。

「勝った方が相手の言うことをなんでも一つだけ叶えること。ただし、実戦に影響が及びそうになる命令はこの私が許さない! それでは双方、前に……」

 そう言われ、俺は腰にかかったペイント弾の入った銃に手を置いた。

(正直言って、俺的には十分な仕返しも出来たし満足なんだがな……)


 そもそもこうなった発端は先程の喧嘩が原因だが、こうなった理由は俺と涼太が二人で大島隊長に怒られているタイミングで割って入ってきた吉乃さんの言葉だった。

(吉乃さんが喧嘩をするなら模擬戦形式で白黒つけさせたらとかなんとか言ってたけど、こっちを見る目が明らかにやばかった。……あれ明らかに怒ってたな……)

 とはいえ、涼太に隊長の靴下を口に突っ込めとか言われるのは絶対に嫌だ。

「……悪いけど本気でやるから」

「誠が俺に勝てたことあったっけ?」

 互いに言葉を交わし、大島隊長が手を勢いよく下ろした。

「試合始め!!!」


 合図と同時に涼太は床を勢いよく蹴った。

「悪いけど今日は速攻で終わらせるよ」

 涼太の扱う木刀はまるで流水のように洗練された動きで迫りくるが、毎日のようにその動きを見ている俺にとって、その程度で倒せると思われたのは正直心外以外の何物でも無かった。

 俺は涼太の攻撃を余裕で避けた直後、彼の普段は滅多に見せない隙を突いて思いっきり鳩尾に拳をめり込ませた。

 もろに食らった様子の涼太は、ふらふらとよろめくように後ろへと下がっていく。

「おいおいどうした? あんな隙だらけじゃ打ってくださいって言ってるようなもんじゃないか。絶不調か?」

 彼に向かって銃を向けながらそう訊くと、彼は苦しそうに笑ってきた。

「そりゃ、どっかの誰かさんが靴下を顔に乗せたせいで寝起き最悪なうえに気分も悪いからな」

「そいつはすまなかったな」

 涼太の皮肉にそう返しながら、俺は容赦なくペイント弾を撃ち込んだ。だが、涼太はそんな状態でありながら、俺の放った二発のペイント弾を間一髪で避けてみせた。

 こいつの反応速度は仲間として隣に立つ時は心強いことこの上無いが、敵に回すと厄介極まりないな。


 涼太の戦闘スタイルは、速度重視の戦い方だ。ゼロからトップスピードになるまでの速さは異常に早く、まばたきをすればいつの間にか間合いを詰められているなんてのはざらにある。

 ただ、難点として格下の相手に舐めてかかるという欠点がある。

 実際、俺の銃を扱う技術力や状況判断能力、サポートとしての腕前は高く評価してくれているようだが、ことタイマンの戦闘においては俺を圧倒する為、あまり良い評価を得れていない。

 実際、チーム内どころか大学内にこいつとまともに渡り合える人間はそう多くないし、そうなってしまうのも仕方ないだろうが、実戦だと危なっかしくて心配なんだよなぁ。


「……相変わらずその反応速度は反則だわ」

「お前だって空手使うの無しだろうが!!」

 横に振り抜かれた木刀を後ろに下がり、回避する。

「いやいや、いくらなんでもペイント弾だけでお前倒せる訳無いだろ。子どもの頃からやってきた空手と違って(こっち)使い始めたの三年前なんだぞ?」

「ぶっちゃけお前相手だと銃だけでも充分脅威的なんだが……あぁもう、わかったよ!!」

 涼太は左手で髪を掻き乱すと、真剣な眼差しをこちらに向け、木刀を構え直した。

 それは、涼太が極稀に見せる居合(本気)の構えだった。

「いいよ、空手でもなんでも使ってこいよ。その上で俺が勝つ」

「おいおい、目がマジじゃねぇか……どんだけ俺に劇臭嗅がせたいんだよ、お前……」

 ここからが本番だな、とそう実感しながら俺は銃を構え直す。


 こうして銃と木刀が交わりあう戦いは、時計の分針が半周するまで続いた。


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