妹が真の聖女だったと婚約破棄されて辺境にぽいっされた姉。そのあと隣国で聖女やってます!幼い神竜と今日もスローライフを送ります。あるとき、ふくしゅうはしなくていいの? と小さな竜が聞いてきて…。
「レイラ、お前は聖女として力のない偽聖女だ!」
「そういわれましても人を生き返らせたり、死にそうな病を癒すだけの力がある聖女なんていませんわ殿下」
私はレイラ・アッシュフォード。公爵の13番目の娘でした。
おおよそ、おわかりになるかもしれませんが、持参金ということを考えたら13人は子供を作りすぎです。
だから聖女見習いとして神殿に入ることになったのです。
そこでなぜか一番の力を持つということがわかり、しきたりに従い、王太子の婚約者になりました。
しかし殿下の好みから外れていたらしく、この1年ほぼ無視されていました。
「お前みたいなやつが婚約者なんてもう嫌だと思っていたら真の聖女が現れるとは!」
「いえ、その真の聖女って誰ですの?」
「お前の妹のリアラだ!」
「……え?」
「死んだ人間を生き返らせる力があるんだ!」
「まさか……」
聖女としての私の力は人のケガ、しかも軽傷を治すだけ、あとは肩こりや腰痛ですねそのあたりしかいやせませんでした。
でもそれもできない聖女見習いがいるのですわ。
しかし生き返らせるとは……どんなペテンですかそれ。
「お前と婚約破棄する!」
「私、それは仕方ないと思いますが、でも私は聖女です。こちらの神殿に……」
「お前は妹のリアラをいじめた罪により辺境に送る! 断罪する!」
一人で悦に入る殿下を見て、仕組まれたことだなと私は苦笑いしました。
リアラには聖なる力はありません。だから縁組があったとしても同じ侯爵の家柄でも年上の男性の後家などがせいぜいで、それをリアラは嫌ってましたもの。
だから私のことをずるーいとよく言ってましたから何かしたことは確かでしょう。
私は馬車に乗せられて、辺境の森で捨てられました。
これからどうしようかなと思っていたら、赤い髪に瞳をしたとてもきれいな女性が目の前にあらわれ、どうしたの? と聞かれました。
そのままを話すとかわいそうといきなり泣き出して、私と一緒に旅をしない? と聞いてきたのです。
子供を産むために里帰りをする途中だと聞きました。
私は気のよさそうな婦人だったので、それを承諾しました。
へそくりとして持っていたお金も心もとないですし。
そして隣国に行くと、城に向かう婦人、名前は名乗れないといわれました。
なので紅の婦人と呼んでいました。怪しいとは思いませんでした。強い魔力を感じましたので。
魔力を持つひとは名前を隠すことが多いのです。真名を知られないように。
「久しぶりね」
「ああ、君か、久しぶり」
「この子がそろそろ孵化するから、あなたのところにきたの」
「そういう時期か」
「ええ」
城にいた長い緑の髪をした青年が旦那さんだと紹介してくれました。紅の婦人も美しいですが、旦那様も美形です。
城の偉い人らしく、皆が頭を下げます。
「孵化とは?」
「あ、いうのわすれていたわ、私火竜なのよ、主人は風竜、子供がそろそろ生まれるから主人のところにきたの」
「私はこの国の守護竜なんだ」
大事そうに大きな荷物を抱えた高い魔力持つ婦人、しかも美形、ということでなんとなくわかっていましたが、守護竜の奥様だったとは。
私の身の上を話すと、旦那様もかわいそうにと泣き出してしまいました。
なんとなく似たもの夫婦です。
「仕事と住まいが見つかるまでご厄介になります」
「聖女としての力があるのなら聖山に行くといいよ。今聖女を募集をしているから」
「聖女を募集……」
「なかなかなり手がないんだよね」
三食昼寝付きだそうですが、この国は聖女というものがありがたい存在じゃないらしく、守護竜が現れてからなり手があまりないらしいのです。
それはありがたいと私は面接を受けて、聖なる山の聖女となりました。
そして半年後、
「生まれたわ!」
「うわああかわいいですねえ」
「私とあの人の子だもの!」
ぱりんと卵から出てきたのは、小さい竜、体の色は紅の婦人に似て赤、目は旦那さんに似ていて緑。風と炎の竜の子供が生まれ、男の子でした。私は幼い竜の隠し名の名づけをお願いされました。
なぜかお二人に気に入られたのですけど、どうしてでしょう。
魔法の力を持つものは隠れた名前をひとつもつのです。そんな栄誉をもらえるなんて!
「リロイというのはどうですか? やさしさという意味ですが」
「それはいいわね、ではリロイを隠し名、呼び名をルーイとしましょう。リロイとなんとなく響きが似てるし」
「そうだな」
適当に決めすぎですわと思いますが、ルーイという響きがいいので黙りました。
紅の婦人の仮の名前はフレア、旦那さんはウィルといいました。
そして私は二人に感謝を述べ、聖なる山に常駐することになったのですが。
「レイラ、あしょぼ!」
「ルーイ、またあとでね」
いつもルーイが遊びに来ては、付き合わされます。
名づけ親ということもあり、どうも懐かれています。
小さな竜を抱き上げ、私は何をして遊びます? と尋ねます。今日はお話をしてと甘えてくるルーイ。
「そして番と出会った黒い竜は幸せに暮らしましたとさ」
「うわーい!」
私はルーイを膝にのせてお話をします。昔聞いたおとぎ話でした。
竜の話をルーイは好みました。
とても静かで優しい時間です。
「成竜になったら、僕のお嫁さんになってねレイラ」
「考えておきますわ」
私はにっこりと笑い、今日のお話はこれでお仕舞とルーイを抱き上げます。
「そういえば、そろそろ2年ですわね。お父様とお母様どうしているでしょう、お姉さまたち元気かしら」
ルーイはこんやくはきされて、だんざいされたんだよね? レイラかわいそうと少し涙ぐみました。
「両親とお姉さまたちは、余裕がなかったので仕方ないですわ。お母さまはあれからお便りをくれましたし、お金も送ってくださいましたわ。リアラの悪だくみはみな知らなかったですし」
私の家族は基本的には悪い人ではないのですが、あまりにも娘が多すぎて下にいくほど手抜きになって、一番下が根性悪になったということはありました。
リアラは隣国で聖女をやっているのは確かですが、どうも評判は芳しくないようです。
「リアラって人好き?」
「はっきりいって嫌いですわ。よくおかずをとられましたし、お金も盗まれましたし、お姉さまたちが気の毒だってよくおさがりをくれましたが、あの子そんなのいらないわよって捨ててましたし、一人だけ根性悪いのですわよ」
「そうか、なら……」
ルーイが小さく何か言ったのですが、私はその言葉を聞き取れなかった自分を後で後悔することになったのですわ……。
隣国の聖女の力がペテンだとされて、隣国の王妃となっていた妹が離縁されて、辺境送りになったとお母さまのお手紙で知りました。
ペテンだとどうやってわかったのか?
「ルーイ、あなた何かしましたわね!」
「うん」
にっこりと笑うルーイ、長い紅の髪に緑の瞳の美青年の魔法使いが現れて、王妃をたぶらかし、そしてその過去の悪行を聞き出して、陛下に洗いざらいぶちまけたというのを聞きましたのよ!
どうやって大きくなったのかわかりませんが、そんなことができるのはルーイくらいしか知りませんわ!
「うふふ、人間に化けるのができるようになったから、大きくなってみたの」
ぽんっと長い紅の髪に緑の瞳の5歳ほどの美少年がそこに現れます。
あなたねえと私が怒ると、他の人にも復讐する? とあどけなく聞いてくるルーイ。
「もういいですわよ」
「レイラって優しいね、殺さなくていいの? あいつ」
「さすがにそこまでは……」
「隣国の王は?」
「……今度のことでその地位をはく奪されたそうですし、もういいですわよ」
「そう、つまらないのお」
ぶうっと膨れる小さな竜、ああ、強大な力を持つ彼には人のことなどちっぽけなことだと今更気が付きました。
もうこんなことはしないでというと「君がそばにいてくれたらしないよ」とにっこりとルーイが笑って私に言ったのです。
「僕の愛しい番」
「え?」
「お父さんとお母さんにはわかっていたんだよ、君が番だって、だから、僕たちはずっと一緒だよ」
……まったくわかりませんでした。私はこの小さな竜が無邪気に笑うのを見て、ああ竜というものは強い力を持つものだと今更悟りました。
でも生まれたときから知っているこの小さな子がしたことを責められません。
「もうしないでください」
「うんわかった!」
私はぎゅうっとこの幼子を抱きしめて、お願いですからもうしないでくださいねとお願いをしたのでした。
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