2/7
02 一時の自由
それでも、比較的マシな時間はあったんだ。
僕の勉強の教師としてやってきた人が、以前よりもマシな日々を与えてくれた。
その人が、ときどき人の目を盗んで外出させてくれたから。
こっそり城を抜け出して、市民たちが歩くのと同じ道に靴をつけた。
初めて歩いた時は、感動したな。
あれだけ憎らしかった者達なのに、一緒の道を歩いてみると、急激に殺意が薄れていったのがおかしかった。
僕は、その人がやってくる日は何度も城を抜け出して、様々なところにいった。
楽しかった。
それは、そう遠くない日にとりあげられてしまうのものだったけど、それでも僕にとってはかけがえのない宝物だった。