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代休で幸せ

 ジリリリリリと耳障りな音が鳴り響く。目が覚めると全身汗だくで息が荒くてびっくりした。あぁ、夢か……あ、やべぇ。遅刻する。


 僕は目を覚ますと、シャワーを軽く浴びて汗と寝ぐせを直す。流した後は体を拭いて服を着る。すぐに会社に行かないとやべーな。それにしても目覚めの悪い朝だ……あんな夢を見るなんて疲れてんのかな。


 携帯電話を開くと結衣から連絡が来ていた。


『起きてる?』

『おーい』

『そろそろやばいぞー。ちこくだぞー』


 僕を起こす為に連絡を入れていたみたいだ。シャワーを浴びている時に着信も来ている。


『大丈夫! 間に合うから』


 そう返事を書いて僕は会社に向かった。


 社会人になって三年目の僕は仕事に慣れ始めたくらいで、あの頃よりは仕事に対する情熱って奴が無くなりつつあると思う。黒い会社という訳じゃないが、結構な残業時間が辛い。


 電車に揺られながら会社に向かう、駅から十二分くらいあるくと会社に辿り着いた。朝の朝礼に間に合って今日のタスクを確認する、昨日終わらせた所を考えるとまぁ……今日は二時間くらいの残業で済むかな?


「おーい、悠真? これお願いしたいんだけど」


「何ですか? 簡単な奴ならいいですよ」


「それが別の会社が起因なんだけどさ。バグが見つかったらしくて昨日残業して直したらしんだよね? んで、うちが後続で使う所だからそこの確認をお願いしたいんだけど大丈夫? 多分、一時間くらいで出来ると思う。手順書もあるし」


「はい、いいですよ。一時間ならまぁ……何とかなると思います。優先順位は高いですよね?」


「あぁ、午前中までに終わらせればいいからさ」


「分かりました」


 結構お世話になっている上司の願いだしたまには戦力として頑張ろう。僕は手順書に沿って作業を進めるけど……所々が抜けてるな。そうとう焦って作った風に見える。あー、ここは何だ? 分からないなぁ。あ、連絡窓口の人に尋ねて見るか。


 僕は電話口で確認し作業を進めていく。結局、通話を繋いだまま確認することで無事に終わらせることが出来たが午前が潰れてお昼になってしまった。結構残業する……かな。調整しなきゃなー。午後は残業時間を確認するか。


 一応、月の残業合計時間は決まっていてソレを超えるのは殆どない。というか超えると上司がめちゃくちゃ怒られて減給の可能性さえあるらしい。上になるとそれなりに悩みが生まれそうだ。僕は、コンビニに向かう事にした。朝から何も食べてないからとってもお腹が空いている……。


「あ、悠真だ。お昼かな?」


 僕を呼び止める声が聞こえて振り返るとそこには満が立っていた。一瞬だけ、全身を緊張が走ったがアレは夢なので忘れよう。彼女の髪の毛はボブカットなのは変わらないが色が黒いし服装はお出掛けしていたのかお洒落をしている。フリルネックブラウスに春色のロングスカートで小さなポーチを握っていた。


「久々だな。ちょうどお昼を買いに来たとこ。満は近くに用事でもあったの?」


「うーん。用事って言うかフリーマーケットが近くで開催してるんだよー。ちょっと顔を出して帰りにコンビニ……みたいな?」


 ふふっと笑う顔はあの夢さえ思い出させなければとても可愛い。


「そっか。俺は朝飯も食ってなくて、はらぺこだから大変だよー」


「そうなの? 朝はしっかり食べなきゃだめだよ? てか、私は休みだけど悠真はお仕事だよね? お昼時間も限られてるし私は買い物して帰るね」


「あー、分かった。またな」


「うん」


 満は飲み物や軽い食べ物を買っている。さて、僕は変な夢に悩まされていたが現実は安心出来るみたいだ。どうしようかなと悩む時間も勿体ないし、何も考えずに目の前にある弁当を手に取りお茶の二つを購入しイートインコーナーで食事を取った。弁当を開けて気付いたが、とんかつだと思っていたのにチキンカツだった。まぁ、美味しかったので良しとする。


 さて、午後の仕事も頑張りますか……と思っていると携帯に結衣から連絡が来ていた。今日は帰ったら結衣が居て夕飯を作ってくれるらしい。でも残業だろうから遅くなると伝えたら明日は休みだから大丈夫! との返事が来た。何が大丈夫なんだろう。


 忙しいと気が付いたら定時を過ぎる。定時が過ぎてからも時が流れるのが早い、集中して仕事をしていたので後ろから上司に声を欠けられて驚いてしまった。変な声が出たので笑われている。


「先輩! 突然なんですか?」


「悠真ごめん。そんなに集中しているとは思わなくてな。ちょっと言いずらいんだけど……」


 はっはーん。この雰囲気はアレだな? 仕事の追加だな? しゃーねーな。


「俺の管理ミスなんだけど……悠真の残業時間がちょっと八時間くらい超過しててさ。まぁ、仕事の調整はこっちでするから明日休みな? 代休ってやつで! 本当にごめんね」


 明日がオフになった。


「いいっすよ。これ終わらせたら帰ります」


「あー、あれだな。そのぉー」


 上司の羽切が悪い。上司の顔をよく見ると目の動きがあっちを見ろよと言っているので僕が周りを見渡すと佐藤部長が怖い顔で此方を見ている。


「あ、ぼくあれだ! なんかようじが……あったきがするので、かえりますー」

「おう! 気を付けて帰りなさい。あとは俺に任せな」


 早く帰れって事か、僕は結衣に今から帰れるかつ明日が休みになったと連絡を送った。


 るんるん気分で電車に乗ると返事がきている。その連絡を見て僕は笑ってしまった。


『とうとう無職? クビになった? このタイミングでお婿さんになる?』


『ただの代休です。まだまだお仕事を頑張るよ』


 お婿さんって、結衣が嫁に来い。


『あら残念。もう少しで悠真くんの家に着くから先に入っとくね』


 合鍵を渡しているので大丈夫、今日は帰ったら幸せな気分で過ごせるなぁ。


 僕は夢の事なんて覚えていなかった。

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