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しあわせないちぺーじ

「悠真くん。お仕事中だけど今日は何が食べたい?」


 僕がパソコンで作業をしていると結衣が尋ねる。リモート作業を始めて一年後くらいかな? それから結衣と一緒に住み始めて数ヶ月になる、仕事中は僕に気を遣って滅多に話しかけない。集中している時に話しかけられてもちゃんと返答が出来ない事も多いので助かる。僕としては何時でも話しかけて貰いたいんだけど……結衣曰く変な顔するから嫌だって言われた。


「んー、何でもいいよ。あー、パスタもいいけど。またハンバーグ食べたいな」


「分かりました! 悠真くんはお仕事頑張ってください! 結衣が裸エプロンで料理しますので」


 僕はそれを聞いて振り向いた。


「聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど」


「悠真くんのえっち!」


 普通にエプロンを着ていた。


「驚いて釣られてしまいました……」


「ふっふっふ。お主、修行が足りんな!」


 そう言ってスキップをしながら台所に向かって行った。その間に僕は仕事を続ける……時間は二十時になりそうな所で終わらせることが出来た。連絡を佐藤ちゃんに投げて明日確認してくれるかなぁ。本日の業務は終了です。


「結衣終わったよ」


「お疲れ様です。ご飯たべよたべよー」


 見慣れた光景になりつつある二人で囲む食卓は幸せだ。テレビの番組を見ながら箸を動かして口に運ぶ、結衣の優しい声は本当に心地よくて一生続けばいいなって思う。


「結婚しない?」


「えっ」


 僕は結衣特性のハンバーグを食べながらテレビを見ている。


「悠真くん? こう……何て言うかな? もうちょっとムードって奴をですね?」


「ムード? あれ。僕なんか言ってた?」


 結衣の顔を見ると小首を傾げている。僕は何か……気に障る事を口走っていたかな。色々と考えながら呟いていたかもしれない。


「結衣の耳には結婚しない? って聞こえたのですが!」


「あ、ごめん。無意識で本心が漏れてたみたい」


「あー、うーん。許します!」


「あ、ありがとう?」


 少し気まずい雰囲気を感じる。空気を読むとするならば何か気の利いた言葉を言うべきだと思うけれど。


「あのー、結衣さん?」


「は、はい! なんですか悠真さん?」


 丁寧に座り直していた。えぇっと、僕は何て言おう。


「これからも一緒に居てくれませんか?」


「えー、いつまでですかぁ?」


 にやにやと僕の顔を見ている……楽しんで頂けている様だ。


「えっとー、死ぬまで……とか」


「それってプロポーズですか?」


「う、うん。そのつもり」


 僕の肩に頭を乗せて呟いた。いいですよ、子供は三人欲しいですからね。この瞬間、僕にお嫁さんが誕生した。


「なんか照れる」


「悠真くん変なのー、でも可愛かったので許します。こんな結衣ですが、宜しくお願い致します」


「こちらこそ……この一年は引きごもり気味ですが宜しくお願いします」


「お父さんに連絡しなきゃ! 西山結衣(にしやまゆい)佐倉結衣(さくらゆい)になりますって」


 結衣はルンルンとした様子で携帯電話に手を伸ばそうとしている。


「あ、あのー。結衣、ちょっと緊張するというか。ご挨拶に行かないと……ね? ここで連絡して反対されたらとても心が苦しいといいますか」


「男心? ってそんな感じなのかな? でも、お母さんに悠真くんの自慢してるからお父さんも色々と聞いてるかも!」


「結衣様それは初耳でございます。何卒、穏便にお願い致します」


「きっと大丈夫です。悠真くんならお父さんとも上手く行けると思います!」


 変な自信を持ってる結衣が心配だ。もしも、僕に娘が居て可愛がっていて見知らぬ男を連れて来る……想像しただけで怖い。僕は泣いてしまうかもしれない。でも、愛する娘が選んだ人を尊重……感情が表に出て論理的に考えきれるだろうか。


「悠真くんが真剣な顔をしていますね。結衣はそっとハンバーグを口元に差し出します」


「はむ……美味しいね」


「はい。人妻として精進します」


 人妻という響きが色っぽい。


「悠真くん。私はとっても幸せですよ?」


「僕も幸せだよ」


「結衣も女の子なので結婚式は憧れます。綺麗なドレスを着て皆に魅せつけてやりましょう、悠真くんのお嫁さんですって! あとは、新婚旅行にも行きたいです。一緒に色々な物を見たり、一緒に色々な物を食べたりして思い出作りです。今すぐに! とは難しい話なので五年以内を目標に実現したいなーとか思ったり」


「それは良いね。僕も綺麗なドレスを着た結衣を見たいし。まぁ、お金は貯金をしてるので少しあります。この調子なら出来そうなので来年くらいに計画しようか」


 人生で一度だけの晴れ舞台……一度だけにしたい晴れ舞台。良い思い出にして仲良く過ごせたらいいなって本当に思う。


「でもでも、まずは悠真くんを結衣の実家に連れて行きたいと思います。とっっっても怖いお父さんなのでお覚悟を!」


「あのー、結衣さん。冗談ですよね? 行く前にメンタルにダメージが……でも、結衣を貰う為に僕は頑張るよ」


「初めて悠真くんが男らしく見えました」


「僕をどう思ってたの……」


 よく考えた事は無かったけど男らしいって何だろう。そう考えるとそういうのは今まで見せた事が無いな。というか、年上の結衣はお姉さんのつもりだけど、僕の感覚では妹……しっかりしてない弟って感じに捉えているかもしれない。


 行動は早めに起こそうと思う。なので、僕は次の休日を確認して結衣とご挨拶に向かう事にした。

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