攻守交替
いつも大切な場面は描写が少ないと怒られたお話になります。でもでも、ごめんね本当にごめんね。ここまでついてきてくれている君。本当にありがとね。
ドライヤーの音が鳴り響く。
「悠真くん手慣れてない? なんか上手な気がする」
「気のせい」
僕はお風呂から上がった結衣の髪の毛を乾かしていた。結構苦労するんだよね。櫛を使いなら僕はブローを当てる、このブローだけで一日の仕上がりが変わると言っても過言ではない。それほどまでに大切な工程なので丁寧に乾かしていた。
「みてみて悠真くん。テレビで何か変なのやってるよ」
青年が騒ぎ立てて殺されるとか物騒な事を言っている。この内容を初めて見た時は全然気に留めていなかった。
「人生ってさ。奥が深いよね」
「急にどうしたの? まだ全然だよ? 先は長い」
「多分だけど、幽霊とか宇宙人だってこの世に居ると思うよ」
「悠真くんがオカルトに手を出し始めています」
「あはは、よし。オッケー今日も可愛いぞ結衣」
笑いながら抱き着いてくる。折角いい感じに纏めた髪も縦横無尽に遊び放題だ。
「ありがと」
結衣が笑顔なので良しとする。何より結衣に抱きしめられると気持ち良い。
「あ、寝る前に歯磨き!」
僕の手を引いて洗面台に向かった。二人で丁寧に歯を磨く。しかし、僕は目を瞑りながら歯を磨いていた。僕の様子を伺う結衣の気配がするが気にしない。しばらくシャカシャカと歯を磨いていると横っ腹を突かれた。
「ぶはっ」
「あははー、悠真くん汚い」
「結衣が意地悪する」
「つい……てへっ」
変顔だ……可愛いなこいつ。結衣は濡れた手をハンドタオルで拭いて満足そうな顔をしている。
「さ、ねよねよー」
結衣が僕の手を引いてベッドに向かった――僕は結衣を押し倒して口をふさぐ。その時の結衣は驚いていた表情だったがゆっくりと瞳を閉じた。
「んっ、今日は悠真くんが狼さんです」
「そんなこと、あー。あるかもしれないな」
「でも、嬉しいので許します」
僕が彼女を淫らにする感覚は新鮮だった。いつもより多く汗を掻いたけど幸せだ。
「悠真くんにこんな一面が在ったなんて……お姉さんがご褒美に綺麗にしてあげます」
「結衣ありがと」
「出来る限り優しくしてあげます」
「いつも優しくしてください」
変な結衣だな。
「お口ゆすいでくるね」
「うん」
戻ってくると結衣が布団に潜り込んで笑っていた。暫く経つと結衣の寝息が聞こえてくる。僕は中々寝付けなかった。




