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その、雪の妖精は…

―――幻想的な風景…

そぅ、あの景色はまさしくその言葉がぴったりだと思う。






僅かな月明かりの下、粉雪が舞っていた…

1つ1つは小さい存在ながらも、確かな冷たさを持った雪の結晶達。






不思議と寒さは感じなかったけれど。

その時は…苦笑






そんな、小さな白の妖精達は



―――ふわり、ふわり―――



って、君の方に舞い降りて来て…

まるで、君に懐いて周りで遊んでぃるみたい。






私は数メートル先のそんな光景に、ただただ魅入ってしまって息をするのも忘れてぃた。






ぅん…そぅだ…今でも鮮明に思い出せるょ。


その中に佇む君は、お世辞ではなく本当に、本当に綺麗だと思えたんだから。










「キレイ…」






「ぇ?」


こちらに歩み寄ろうとしていた、彼女の足がとまった。






その顔はどういう訳か不思議そうな、それでいて少し驚いているようだ。






(――ん?)


彼女がどうしてそんな顔をしているのか、皆目見当がつかない。






行動から察するに、どうやら私は彼女が驚くような何かをしたようであるが…







(さっきの私は、一体ナニをした…?)




普段はぐーたらな脳ミソをフル回転させて、先程の場面を懸命に思い出す…







←←←巻き戻し←←←


ガチャっ…ウィーン


→再生→




・・・






(――ぁ…マズイ…声に出てた……)


いささか鈍感すぎる自分に嫌気がさすが、ようやく気づいた。

急いで、口に手をあててはみたものの…







時、すでに遅し……

気が付いたとたん、妙に汗が出てきた。

心音だって、やけに間近で聞こえる…気がするし……







私はいわゆる、パニック状態というものに陥ってしまったょうだ。







「ぁーぃえ、アハハっ」


慌てて、その場を取り繕ってはみたものの…




どうしようか…






(んーこういう状況を例えた言葉があったような…

ぇーと、確か――「穴があったら入りたい」だったけか。

すごいなぁー昔の人は。実に的確な表現を遺したものだ。)




(ってぇー駄目駄目。

今は、そんな悠長な事を考えている時ではない。)







(――というより…本当に入りたいよ……)


私は、心の中で頭を抱えた。






フっと一瞬閃いて、逃げるという選択肢を本気で考えた――が、足に力を入れようとしてもいう事を利かず、結局断念……







(――ぁ゛ーもぅ///私のバカバカッ

初対面でいきなりキレイって…何言ってんのさ自分っ)


頭の中が、こんがらがり過ぎて上手く整理出来ない。




こんな失態、今まで19年間、普通に生きてきた私には片手で数えられる程しかなぃのだ。

つまり、突発的状況に対する経験が不足していたのである。






―――思い返せば…小学校の頃。

『廊下でのズッコケ事件』

何もなぃ廊下でこける。

手をつかなかったため、歯で着地――よって乳歯が欠けた。

この時は本当に痛かった…が、そんなことはどぅでもいい。

問題はその後だ…


その間の抜けた行為を、周りの楽しいことが大好きな小学生達が見逃すはずがなかった。

私が血を流して倒れているにもかかわらず、笑うのに精一杯って感じで…


結局、私自身も痛いゃら恥ずかしいゃらのパニックで体が動かなかった。

だから、その後も保健医の先生に助けられるまで10分間倒れた状態のまま…




さらに数年後、中学の時。

『告白&怪力事件』

放課後の未だに生徒がばらつく廊下。

いきなり「好きだ!瀬名!」と、ある男子生徒の声が響いた。

その時の私は帰宅準備万端で、今日のおやつは何を買うかな〜♪

なんて、これから始まる至福の時間を考えている最中…

もちろん誰かが何かを叫んでいるのは分かっていたが、そんな内容を聞くよりもおやつの方が優先だった。

一方の彼は、告白相手が無反応で帰ろうとしているのを見て慌てたのか、私の右手を後ろから掴んで


「って、ぉいっ何か言えよ瀬名!好きなんだっ!」

って再び告白モードに入って迫ってきた。


「――うぇっ?!」

 ・

 ・

 ・

―グリっ

気が付いたら、少々かじっていた合気道の技を無意識のうちにかけていた…

私からしてみれば、何がなんだか分からないうちの告白。

おまけに、強引に腕を掴まれている状態な訳で…

加えて、告白なんてその時まで受けた事がなかったし…

鬼気迫る相手の表情を見ていたら、なんだか頭が真っ白になってしまったんです…はぃ。


そして、悪いことはさらに続いて…

手をひねり返した体勢で終わるはずが、勢いのついた彼の体は後ろにつんのめり…

ゴツンっとそのまま倒れてしまった。


その後、快復した彼に話を聞いたら

「罰ゲームで好きな人に今すぐ告白しろって言われたから…」

って、呆れるくらいありがちな告白動機のパターンだったのだけれど。

告白自体は嬉しかったから、いい思い出になった。

まぁ後におまけで、怪力女っていうあだ名が付いてきたのは言うまでもないが………









「――の、大丈夫ですか?」




「――ぇ?」


逃避していた回想の世界から、彼女の言葉で引き戻された。

もんもんと考えている内に、どぅやら長い間黙り込んでしまったらしい。






(――もしかして、変な顔してたかな……)


自覚があったわけではなぃが、いかんせん今の私はパニック状態なのだ。

今までの経験上、面白い顔を晒していたとしても不思議はなぃ…






(――とぃうより、ここに来てからまだ1年しか経っていないのに、近所に変な噂でも流れたら嫌だよ、ほんとに…)


と少し不安になりながらも、次にくるであろう言葉を待った。









「――泣いている…様でしたから。」


そぅ、一言…

少し悲しそうに目を伏せ、見てはいけないものを見てしまったって顔をしてバツが悪そうに彼女は言った。






(――ぁ…そぅいえば、私泣いていたんだっけ…)







自分でも驚いた…

私は、泣いていたことをきれいに忘れていたのだ。









「ぁ――分かっちゃいましたょね…流石に。苦笑」


こちらもバツが悪そうに、頭を掻くポーズをする。







(なんか、惨め……)


先程まで浮わついていた自分が、なんだか馬鹿らしく思えてくる。








「大丈夫です。

どぅってことなぃ事なんで、心配してくれてありがとうございます。」



初対面の人に、心配をかけたくはない。

それに、自分自身がさっぱり忘れていたことなのだ。

思っていたより、たいそうな事ではなかった…そういうことなのだろう。






笑顔でそぅ答えると、どぅやら彼女も安心したようだ。

先程までの心配そぅな顔からホッと胸を撫で下ろし、こちらに微笑みかけてくれた。






―トクンっ






何故だろぅ…彼女といると、今まで感じた事がない感覚に自分が囚われていく気がする。


(この居心地がいい感覚は、なんだろう…)






お互いが見つめ合ったまま、沈黙が過ぎていく。











(――さすがに、このままではまずい…)


先に沈黙に耐えかねたのは、私だった。

話題を見つけようと、視線を泳がす。



・・・



ふと、彼女の姿に目が留まった。


ロングコートを纏って、首にはマフラー、手には手袋。

その格好自体に、別段変わったところは見受けられない。




けれどその長く艶やかな黒髪と、どことなく漂う独特な品の良さは“どこかのお嬢様”というイメージを連想させた。







中流階級が住まう集合住宅が多い、この辺りでは珍しい雰囲気。

そんな私の興味本位の疑問は、すぐに口について出た。




「御近所の方ですか?」




「ぁ――はい。

御近所と言えるのかどうかは、わかりませんが…」


そうすると、彼女は大学の裏手にそびえる山を指差した。





「私、1週間前にあの山の近くに引っ越してきたんです。」





「へぇーそうなんですか。

――?あそこから、結構距離ありますよね?

ここまで自転車――って、そんなわけないですね…苦笑」


言いながら気付く。

どうやら、彼女はドレスを着ているようだ。

今まで暗がりでよく見えなかったが、先程公園の横を通った車のライトでちょうど足元が照らされたのだ。

ロングコートの下から見えたものはドレス特有の長くひらひらした裾、それにローヒールの先にリボンがついたクラシカルなデザインのパンプスだった。






「はい。さすがにこの格好で、自転車はちょっと…苦笑」


そう言いながら、彼女は自分の姿をくるりと見渡して笑った。






―トクンっ






「「ぁの、――/お嬢様…」」


ほぼ同時に、知らない男の声と私の声が重なった。

声のした方を見やると、公園の入り口に黒いスーツを着た男の人が立っている。




彼女の知り合いだろうか、彼が言ったお嬢様という言葉も気になるが…

一旦疑問を頭に留め視線を戻すと、彼女はまたバツが悪そうな顔をしていた。

今回は、忘れていたことを今思い出しましたって顔である。






「ぁ…ごめんなさい。もぅ行かないと…

お話出来て楽しかったです。

それでは、さようなら。」


そう言って微笑んでから、彼女は少し急いで歩き出す。






「ぁ――さようなら…」


色々と聞きたい事があった。

お嬢様って?

さっきの彼は誰?とか…

他にもたくさん疑問は残っていたのに。

聞くタイミングを逃した私は、車に乗り込んで行ってしまう彼女をただ呆然と見送る事しか出来なかった。






サラサラと、胸から何かが流れていく感じがする。


もっと傍にいたい、そう思った。



(なんだろぅ、この感じ。

気のせいか、さっきから胸もおかしいし…)








彼女と別れてからも、何だか帰る気がしなかった。



何故だろう。

自分でもこんな感覚は初めてで、正直戸惑っていた。

彼女の声、仕草、顔がとても懐かしいようで、ほんのりと胸の深い部分が温かくなる。

ずっと、その感覚に浸っていたい――そう思った。








――しかし、どうやらそんな主の意思に反して体の方は限界がきたようだ。

どの位そぅしていたのかは分からないが、頭がぼんやりとしてきた。

気が付けば、手足の先は氷の様に冷たくなっている。


―ゾクっ




(そろそろ家に帰らなぃと、風邪をひくかもしれなぃな…)


公園の時計を見やると、午前2時を回っている。

どうやら、家を出てから1時間も経っていたようだ。




「帰る、か…」


そう一言呟くと、私は冷たくなった体をどうにかして立ち上がらせた。






一歩、足を前に踏み出す。






―ザクっ


案の定、足取りは重かった。




けれど気のせいだろうか、心の中はここに来る時よりも、幾分軽い気がする。

つい数十分前まで感じていた、あの鉛の様に重くて苦しかった空しさ――それが、今では気分屋の通り雨みたいに何処かへ行ってしまったようだ。


(不思議…)






―ザクっ






―ザクっ






そぅして、私はそのままゆっくりなペースを保ちつつ、着実にそして慎重に歩を進めた。







――朦朧とする意識の中、途中雪で濡れた地面に何度も足をとられそうになったが、その都度気合いで踏ん張った。

その甲斐あって、家の前に着いた時点で着ていた洋服は汚れず、安心していたのだが…



玄関の前で気が抜けたのか…私の意識はそこで途切れてしまうのだった。




To Be Continued...

すみません、大変お待たせ致しました。

駄文ですが、皆様に楽しんでいただければ幸いです。






そうだ、余談になりますが…

文中に登場する、廊下でこける話。

あれは一部脚色をしておりますが、私が実体験したお話です。お恥ずかしい話 苦笑っっ


何もない廊下で盛大にこけ、現在も歯には本当にヒビが入っています。

ただ笑いの肴にされたのは、保健医の先生だけですが…


とまぁ、つらつらと書いているうちに長くなってしまいましたが、ここまでお読みくださりありがとうございます。

皆様に、楽しく読んで頂けることを祈って…

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