八節【悪役令嬢、驚愕】
病院から退院し家に戻って数日、久々の学生生活に心を躍らせながら今日は両親に何の話をしようか⋯と考えながら帰ると玄関に山ほどの荷物とそれを家に運び込む人の姿、運び込まれる荷物の量に驚きながらもよく見ていると、部屋毎に運び込まれる荷物が違うし運び込んでいる人たちも違い、何があったのかと思いながら両親に帰宅したことを報告しようとすると両親はにこやかな笑顔で
「おぉ、おかえりなさいアヴリル、今日はとても忙しくなるぞ!」
「おかえりなさいアヴリル、あなたもついにこの年になったのね…あの事故で迎えられないのではないかと心を痛めていましたが、母は嬉しく思います。」
「えっと⋯なんの話ですか⋯?さっぱりわからないのですが⋯?」
「そうだね、説明する前に事故で話せなかったから今から言うが、代々我が家系は子が17になった時嫁や婿候補を選び1年間我が家で暮らす事になっているんだよ。そしてアヴリルもついにその年になった⋯というわけさ」
「母もその時に旦那様に選ばれて結婚したんですよ。まぁ私の場合は最初から旦那様に惚れていて猛アタックして見初められたのですが⋯」
と父は感動しているのか声を震わせながら、母は過去の自分を思い出して頬に手を当てくねくねと動きながら話しており、それを聞かされた自分はより混乱することになった。
そして数日後⋯門の前に並ぶ攻略対象⋯ソーマ、カイル、ノージュ、ロウラン、クラッツの5人
「「「「「これからよろしく(頼むな!)(お願いします‼)(頼むぞ)(お願いするね)(⋯)」」」」」
「あ、あは、よろしく⋯お願いしまひゅ⋯」
5人のイケメンオーラを見て興奮と不安と緊張で噛みながらも何とか返事をすることができた。
あぁ、きっと本来の主人公はこの光景を見て喜んでいたんだろう。
背景は違うがこの光景のスチルは見覚えがあった。
【始まりの景色】ゲーム内で一番最初にゲットするスチル、全員が勢ぞろいで並びこれからの新たな生活を迎えることを示唆するようなものだった。
本来の主人公がいない影響かそれともほかの生徒を守った事で評価されて選出されたのだろうか?と、考えていたが⋯
「正直このイケメン達に囲まれて生活するとか、そんな幸せを味わっていいんでしょうか⁉いいんです‼だってこういう流れだもの‼」
内心そんなことよりもイケメンに囲まれて生活できる。多少癖が強い面々ではあるが彼らの容姿や立ち振る舞いを見ていたらそんなものどうでもいいよね!だってかっこいいんだもん!流石ゲームの世界のイケメン達よ!Foooo!!!と喜んでいると
「アヴリル様⋯やはりまだどこかおかしいのでしょうか⋯?」
と、心配と引き気味の感情を含んだ目で俺の着替えを持っているセラの姿がそこにあった。