三節【悪役令嬢、出会う】
「アヴリル嬢の意識が戻ったのは本当か⁉︎早く確認しなくてはいけないだろ 」
「ノージュ先輩待って!起きたばかりらしいし、今は落ち着いて!」
「まぁ、やっと起きたんだし仕方ないんじゃない?カイル君だって慌てて、ベランダから飛び降りて出ようとしてたじゃないの。私が止めなきゃ入れ違いに入院…または永眠だったんだからね?」
「とにかく!ノージュ!カイル!ロウラン!静かにしまたえ!ここは病院だぞ!素行で減点なんてされたくないだろう!…んん?一緒にいたクラッツは何処に行った?」
「ソーマ先輩、ここです。僕ずっと先輩の横にいました。呼びに行った時からずっといました。すみません影が薄くて。ずっといました。」
…目を疑う程の美青年達、このゲームの攻略対象である英雄候補が一同に並んでいた。
主人公の選択毎に攻略出来るキャラが変わる為全員が揃っている所なんて、パッケージや宣伝のポスター位でしか見られないのに。
「あははっ、皆並んで喋ってる…しかもこんなに仲が良さそうに…えへへへへ…」
これを見れただけでも役得どころかまさに死んでもいいって位の幸福感であった。
いや、多分死んだからここにいるんだろうけども、少し感動してしまい気付けば静かに涙を流していた。
周りはと言うと
「アヴリル嬢…吹き飛ばされた拍子に頭を…?」
「これは重症ですね、記憶がないと聞いてましたから多少覚悟はしてましたけどショックが強すぎたんでしょうか…」
「ははは…んまぁ記憶無いならどうしようもないわ…私も記憶失くしたらきっとこうなるね。可哀想にアヴリル様…」
「アヴリル嬢!まぁ記憶が無ければ仕方が無いのかもしれないが貴女は侯爵令嬢なのだ、口調は気をつけた方がいいぞ!」
「アヴリル先輩…壊れちゃった…こんな時どうしたらいいんだろう…」
…5人の悲しそうな、そして哀れんでどうしていいかわからないと、困惑した様な視線を受けてしまった。
…流石の俺もこの視線には耐える事が出来ずに布団で顔を隠して涙を抑えながら
「ごめんなさい…来ていただけて嬉しいのですが…少し色々と考えたいので今日の所は一人にして頂けませんか…?さっき説明されたばかりで私も何がなんだか分からなくて…」
と言うと全員納得してくれたのかゾロゾロと出て行き。
「私は入り口にて待機しておりますから、何か用事が有れば、ベルにてお知らせください。」
と従者のセラが一言告げて最後に退出し辺りは静かさを取り戻した。
「…さて、現状の整理をしないとね…本当に何が何なんだかわからないし…」
テーブルに映る自分、アヴリルの姿を見ながら近くにあったペンと紙を使い自分の考えを書き込んでいく事にした。