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俺が入ってどうすんだ!〜憧れの異世界転生先は悪役令嬢でした。〜  作者: あきのそら
1章 英雄になりたかった異世界転生
10/12

九節【悪役令嬢、学校で逃げ回る】

「はぁ⋯はぁ⋯どうしてこんな事になっちゃうんだよ⋯」


荒い息を整えながら階段下の倉庫に身を隠して呟く。おかしい、予定なら今頃イケメンに囲まれて楽しい食事をしているはずだったのに。


「アヴリル様は療養明けでそんなに体力はないはずですから絶対校舎の中にいますわ!」

「二手に別れて探しましょ!私たちは上を!」

「じゃあ私たちは引き続き一階を探しますので!」

「絶対に探して聞き出しますわよ。いったい誰が本命なのか⋯」


女って怖いもんなんだな⋯って考えながら倉庫の中で一休みすることにした。


-------------


事の始まりはソーマ先輩の一言だった。


「アヴリル嬢!今日の夕食は俺の家に代々伝わる配合で薬草を煮込んだ薬膳鍋だぞ!」


午前中の授業を終え、賑わう学生食堂の中で豪快な力強い声が響く。

シン⋯と静まる学食⋯そしてさらに追い打ちをかけるかのように


「ソ、ソーマ先輩!こんな人の多いところで言ったら⋯」

「ソーマ!ずるいわ!私だって自分の国の料理をアヴリルに食べさせたいの堪えてるのに!明日の夕飯は私の国の食事作ってもらうからね!」

「ちょっ!ロウラン!?」

周りに広がることを恐れて抑えようとするカイルとなぜか対抗心を燃やして大声でしゃべるロウラン


そして突き刺すような鋭い視線を向ける周りの生徒、一際冷ややかな、殺気にも近い強い視線を向ける彼らのファンクラブ会員の生徒達。

カツカツと乾いた足音を鳴らしながら近寄ってきて机を叩き


「⋯どういうことか教えていただけますよね?アヴリル様⋯?」

「まさか何も言わずにこの場を去れるなんて思ってませんわよね?」

「⋯これは質問ではない⋯既に尋問ですわよ」


表情は笑顔なのに目はちっとも笑っていない、見覚えある表情だ⋯そう、前世でバーの店長のお気に入りの客と話してた時の⋯そしてすぐに起こした行動は


「あっ!生ハムの原木が飛んでる!誰の魔法⁉」

「「「えっ!?」」」

「ごきげんよう皆さま!!」

「あっ!逃げましたわ!!」

「急いで追うのよ!ロウラン様ファンクラブ全員集めなさい!!」

「ソーマ様ファンクラブも集合ですわ!」

「カイル様ファンクラブの人にも声かけて!!待ちなさーい!!」


脱兎のごとく逃走するしかなかった。


-------------


「はぁ、まだ体力戻らな⋯女の体ってきついんだな⋯」


まだ体に慣れてないこともあってか、落ち着いてきたが未だに荒れる呼吸を整えようと深呼吸し•••

慌てて飛び込んだ倉庫だが普段使われていないためか埃が多く、ハンカチで口を覆ってさらに隠れやすい場所を探そうと奥へと進んでいった。


「それで⋯逃げ出したアヴリル嬢を見つけられずに今に至るってことか?」

額に青筋を浮かべ腕を組んで椅子に座るノージュと床に正座させられる食堂にいた三人。

「はっはっは!すまんな!」

「なんで僕まで⋯なんで⋯」

「だってうらやましくないの⁉ノージュ先輩も俺の食べてほしいって言ってたじゃない!」

豪快に笑いながら謝るソーマと普通に落ち込むカイル、同意を求めるロウランがいた。


ファンクラブの面々は直接本人達から説明を聞き、うらやましがりながらも温室での事件絡みでもあると聞いて渋々納得したのか落ち着きを取り戻し、見つからないアヴリルを探すことになった。


当の本人はゲームで見られなかった学校内のエリアにワクワクして探索しているだけなのだが。


「まったく⋯しかしこれだけ探してもいないなんてどこに行ったんだ⋯」

溜息をつき頭を抱えるノージュにハッと何か思いついたような表情でクラッツが


「階段下の倉庫⋯あそこって普段使ってないし薄汚れてて誰も近づかないじゃないですか?もしかしたらそこに⋯」

「あのめっちゃ汚い倉庫か?流石にそれは⋯無いとも言い切れんな⋯アヴリル嬢結構変わった所あるし⋯」

「これだけの人数で探してて見つからないんですからもうみんなが避けるような場所にしかいないと思います。」

「そうだな⋯とりあえず⋯そこの三人はそこで反省していろ」


そうして三人を残してノージュとクラッツは倉庫に向かうのであった。

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