第1話 視覚支援アンドロイド
「マナちゃん。マナちゃん」
「ごめんなさい雛子様。船体が揺れたせいで手を放してしまいました」
「いいよマナちゃん。手を握って」
アンドロイドのマナが私の手を握る。
暗く閉ざされた視界が急に色鮮やかになる。
アンドロイドのマナは私の目。
彼女と手をつないでいると私は見える。
彼女がいないと何も見えない。
そう、私は目が見えない。全盲なのだ。
「どうして揺れたのかな」
「恐らくデブリを避ける為の回避運動だと思います」
「そうなんだ」
私はマナを見つめて問いかける。
マナはそれに応えてくれる。
彼女の体は金属とプラスティックで出来ている。後ろ頭から突き出ているアンテナの束が垂れ下がり、ポニーテールのようになっているのが可愛らしい。人と区別する為、敢えてロボットらしいデザインがされている。
法律でそう決まっているらしい。これでもマナは物凄く可愛いのだけど、人間そっくりだったらもっと可愛くなるはずだ。その法律って大きなお世話だと思う。
少し遅れて船内アナウンスが流れた。
「デブリ回避のため、船体に予定外のGがかかりました。大変申し訳ありません」
こんなことは宇宙船では茶飯事らしい。
私はマナの手を握っている。
いつもいつも。
手を離すと目が見えなくなるから。
彼女は私の光。
そして、彼女は私の一番の仲良し。
何でも話せるし悩みだって相談できる大親友なんだ。
彼女といると心が落ち着く。
いつもいつも。