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だい ょん わ

 それからしばらくして……。


 最初は気にしていなかったが死骸を目にするようになった。




 セミの死骸。


 首のない甲虫の死骸。


 スズメの死骸。


 突然落ちてきたカラスの死骸。


 交通事故にあった猫の死骸。




 そんなもの日常的にあると言っても、現実的な件数が多すぎた。


 オレはひょっとして呪われてしまったのだろうか?

 と考えを飛躍して焦り始めていた。


 でも、怖がりの二人に言うと増幅されそうなので黙っていた。



 チンコン



 ん? ラインの音だ。

 見るとジュダイからだった。



Line:ジュダイ33「最近、小動物の死骸をよくみるんだが」



 その文章の下に、画像が添付されて来た。


 見ると、目がない小鳥の死骸……。

 虫がわいている。


Line:一浪漫「うぉい! 趣味がわりーぞ!」


Line:数珠坊主「ホントだよ……。でも最近、何かが死んでるのをよく見るな。暑いからかなぁ……」


Line:ジュダイ33「しょーがないじゃん! 怖いんだから!」


Line:一浪漫「よく見るから怖いんだよ~。見ちゃダメ。目をそらして! そらしてえ!」



 みんなも……。同じように感じているのか……。そこ知れぬ恐怖を感じる……。


 オレたちの日常がなんとなく少しだけ変わってしまったのだろうか?




 チンコン……



 続けてジュダイからラインの返信だった。

 しかし、個人ラインの方だ。

 なんでグループじゃないのやら……。と思い内容を確認すると



Line:ジュダイ33「今会えるか?」



 片手を大きく上げてガッツポーズをとった。


 有頂天だ! 天にも昇る気持ち!

 こうなればいいなぁと思っていたのだ。


 すぐに返信を送って、彼女がいる場所に向かった。

 彼女に会いに行くと、ベンチに座っていて少し怯えているようだった。

 物音もないのに後ろを振り向いたり、小さな音にビクついたりしている。


「どうしたの?」


 そう言って、彼女の隣りに腰かけた。

 今まで強い感じの女の子がなんかとてもしおらしくて可愛らしかったんだ。


「最近、ちょっと変なの……。誰かに見られているような……」

「そうなの?」


「ロマンは……?」


 たしかに思い当たるフシがあった。

 だけど、そんなの誰でもある。

 多分、“ううち”のことでオレたちの神経がいつもよりも過敏になっているだけなんだ。

 少しばかり鈍い振りをした方が人生ではよいとの持論がある。それがため、ジュダイにもそんな返答をした。


「いんや。ない」


 ジュダイは少しホッとしたように顔をした。


「やっぱり気にし過ぎなのかな?」

「そうだろ。でも、急に甘えてきて可愛かったぜ」


 と、ピッと指さすと彼女は赤い顔をして下を向いた。

 可愛かったはまだ早いか?

 ちょっとまずかったかな?

 と思い取り繕った。


「ん。ああ、ごめん。でも、そんなリアクションするなんてジュダイらしくねーな」

「なによ……」


 彼女はそう言いながらもようやく笑顔になった。

 それ合わせて、オレも共に笑いながら立ち上がった。


「んじゃ、大丈夫だな? 帰るな」


 ベンチの前で軽い伸びをすると、ジュダイに呼び止められた。


「ちょ……。帰るの?」

「うん。まー。数珠にも抜け駆けするなって言われてるしな」


「抜け駆け?」


 ハッとした。言ってしまった。

 これじゃ、二人ともジュダイに気があることがバレちまうじゃねーか。


 恐る恐る、視線をジュダイのようにやると、笑っていた。そして嬉しいことを言ってきた。


「ねぇ。ご飯食べていきなよ。作るから」


 そう言うと、ベンチから引き起こして欲しいように手を伸ばしてきた。



 ドキリ……。



 そんな手を引くなんて……。

 で、でも冷静に。ここは男らしく。


「じゃ あ…… ご馳走に な ろうかな~」


 と、どうしても上ずる声を発しながら彼女の手を引っぱり上げた。彼女はバランスを崩したのようにオレの胸に倒れ込んできたので、超ドキドキして顔を赤くした。


 二人して並んで談笑しながらジュダイの部屋まで歩いた。

 アパートで独り暮らしらしい。

 大学に入ってから自炊してたから料理には自信があると自慢していた。


 オレも一人暮らしだから自炊している。オレの批評は厳しいぞ?

 なんて冗談を言いながら。


 とてもいい雰囲気だ。







 ビビィ!

 ビィビィィビィビィィィーーーーーーー!!





 突如、いい雰囲気は破られた。

 頭上からけたたましい音が聞こえたのだ。

 オレたちは思わず、互いに抱き合って空を見上げた。



 ビィ……ビィィ……ビィ……



 見ると、黒い大きな鳥にセミが食われていたのだ。空中での補食! こんな場面初めて見たので、マジでビビった。

 彼女の体をきつくきつく抱きしめていた。


 しばらくその黒い鳥が旋回する光景を眺めていたが


「ちょ……。ロマン、痛いよ……」


 と言う彼女の声で正気に戻った。

 彼女を壊しそうなぐらい抱いていたんだ。

 あわててその抱擁を解いた。


「ごめん! ……でも、わーー! こんな光景初めて見た! マジでビビったぁーー!」


 というと、ジュダイは笑い崩れた。


「あはははははは! そうだよね~。でも、そんなに抱きしめなくてもさぁ~」


「いや~! だって初めて見たんだモンなー。いや~、あの断末魔が……」


 汗を拭い、気を取り直してまた歩き出した。


「でもさー。7年も地面にいてようやく地上に出てきて、一週間の間に恋をして子孫を作らなきゃいけないのに、食べられちゃうなんて不幸だよね」

「そうだなぁ。まだDTだったかもしれんなー」


「そーか、鳴くのはオスだもんね」


 なんてことをいいながらジュダイのアパートの部屋に到着。


 なにが起こるのやら……。

 もう期待しかない……。


 スケベな笑いを止められなかった。

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