第6話
熊の魔物からギリギリの所で命を助けられた黒丸は、命の恩人であるジンと共に街へ向かう事となった……
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街へは順調に進んでいるとジンは言った。
ジンは短髪赤髪で身長も僕よりも大きい、まず赤い髪を見て思ったのは、ここはやっぱり地球とは違うってこと。なんか魔法の話しを聞いた時と同じくらいファンタジーな気がした。
ジンに髪は染めてるのかと質問すると、「髪ってどうやって染めるんだよ? ってか染めてなにをするんだ?」 と言われた。
この世界には髪を染める文化は無いみたいだ。
それと、熊の魔物の話を聞いた。名前はウッドベアと言うらしい。まんまじゃねーか! と、心の中で突っ込むのは決して忘れてはいない。
表面は樹皮のように柔軟性があり硬く、爪や牙は生身の人なら一撃で命を奪う事ができ、この森では1番やっかいな魔物だ、ジンは言っていた。
「でも、そのウッドベアをジンは無傷で倒しちゃうんだから、スゴく強いんだね」
「まあな。オレはこの世界で最強の剣士になる男だからな。あんな熊ぐらい楽勝よ」
どこかで聞いたことのあるセリフだなと、思いつつ、僕は言った。
「えっ? でもジンは槍、使ってるじゃん」
僕は見事に地雷を踏み抜いた。
僕の右手側、ジンの周囲がどんよりとし始め、一瞬ではあるが周りの空気が暗い紫に見えたような気がした。
「うるせーぞ、黒丸!そんなことはわかってるんだよ!だからオレは街に出て剣士になるんだよ!」
詳しい話を聞いてみるとジンは教えてくれた。ジンはこの森の向こう側にある、小さな村の出身であること。
そして、おじいちゃんがそれなりに有名な槍の達人らしく、小さい時から修行をつけられていたこと。
ジンはずっと剣士に憧れていて、おじいちゃんとケンカになり、家出するように村から出てきたのだと話てくれた。
「それでジンは、何しに街へ行くの?」
「オレは教会へ行って武器の適正を見て貰うんだ。絶対にオレの適正武器は剣のはずだからな!」
「どこからくるのさ、その自信は…… せっかく槍を使えるんだし、世界最強の槍使いを目指せばいいのに」
「わかってねぇな、お前は。槍より剣のほうがカッコいいじゃねーか」
理由はそんだけかよ!心の中でらつっこみ、ジンは単純。と、黒丸は脳内メモに記入した。
「それよか、お前はなんで街に行くんだ?と言うかなんで武器も持たずにこんなとこ1人で歩いてたんだ?しかも弱えークセによ」
(あぁ…… これはどう説明するかな。記憶喪失ってのも不自然だしなぁ。これは今後もあるし決めておかなくちゃいけない案件だな)
「僕は森の中におじいちゃんと2人で住んでたんだ。そこから出たことが無いから外の世界って言うのかな?のことは全く知らないんだ。それに、気がついたらこの森で目が覚めたんだ…… なぜなのかは自分でもよくわからないんらだけど」
(とっさに適当なことを言ったけど、不自然すぎるかな……)
「そっか。お前もいろいろ大変なんだな。まぁ生きてりゃ、なんとかなる! 多分、転移系のアイテムかなにか使ったんじゃないのか?」
「えっ…… 転移アイテム?そんなのがあるの?」
(なんとか乗り切れたみたいだ。でも転移アイテムかー、やっぱりファンタジーな世界だなここは。)
「やっぱり知らないのか。転移アイテムってのは、特定の場所に転移できるって話を聞いた事がある。そもそも転移アイテムはかなり貴重なもので、めったにお目にかかれるものじゃないけどな」
「なら知らない間に転移アイテムを使っちゃったのかな?アハハハ……」
「それよりも、そろそろ森を抜けるぞ。森を抜けたら街が見えるはずだ。黒丸は森から出た事がないなら街は初めてだよな?ここの街はすげーぞ?楽しみにしてな」
ジンはそう言うと、楽しそうに黒丸に笑顔を向けた。しばらく歩くと森の終わりが見えた、そして黒丸とジンは森を抜け、街へと到着したのであった。