第5話
街へ向かう途中、不運にも魔物と遭遇してしまう。逃げる黒丸だったが転倒し、追いつかれてピンチを迎える。
その時、謎の男があらわれた……
――――
男は熊の魔物を睨みつけながら左手で槍を持ち、魔物に向けて槍の矛先を向けてこう言った。
「こらてめぇ、今からオレが一瞬で終わらせてやるからよ」
そして、左手に持った槍を右から左へと薙ぎ払った。男の槍は魔物の顔に直撃し、魔物は四つ足をバタつかせながら後退した。
「やっぱ表面は硬いな。ならこれでっ!」
男は槍の持ち方を変えて投擲の構えをとり、
魔物に向けて手に持っていた槍を投げた。
「グォォォォ……」
槍は魔物の右目に突き刺さり、魔物は低い唸り声をあげながらズシンッ!と倒れ、動かなくなった。
男は魔物の右目から槍を抜き取ると、魔物の牙と爪を槍で切り落とし腰に掛けてあるポーチへと放り込んだ。
「よう、大丈夫か?」
男は僕の方に歩み寄ってくると槍を持っていない方の手を出してきた。僕が男の手を掴むと男は僕を引き起こしてくれた。
「あ、あの、助けてくれてありがとう……」
僕は恐怖で震えていた。生まれて始めて命の危機を体験し、もうダメだと諦めさえもした。この人がいなければ、僕はきっとそこで倒れている熊の魔物に食べられてしまっていただろう……
「いいってことよ。それよりもお前は大丈夫か? まぁその様子じゃあ大丈夫なわけないか」
「いえ、だいぶ落ち着いてきました。危ないところを本当にありがとうございます。あなたがいなければ僕は……」
「まぁなんだ。助かったんだし、いいじゃねーか。オレも牙と爪を頂いたし。あっ、これはオレが貰ってもいいんだよな?」
「無理やりにでもそう思います。ホントに助かりました! もちろんです。でも、どーするんですかそれ?」
「どーするってお前…… 街に行ってギルドに売るに決まってるじゃねーか。そんな事も分からないってホントに大丈夫か?」
(まずい、怪しまれたかな?話題を変えよう。もう少し気をつけないと…… マザーにも言われたしな)
「そーですよね!あっ、名前を聞いてもいいですか? 僕は黒丸と言います。年は16歳です。街に向かっている途中で魔物に襲われてしまって……」
「黒丸か。変わった名前だな。オレはジン。年は17。お前よりも1つ上だな。オレも街へ向かう途中だ!ちょうどこの木の上で休んでたら『うわぁぁぁ』って声が聞こえてな。警戒していたんだ。そしたらお前がここで盛大にコケたってわけだ」
ジンはニヤニヤしながら僕が転んだ時の話をした。命の危機だったとは言え、外から見た話を聞かされると恥ずかしいな……
「なんか恥ずかしいので辞めて貰ってもいいですか?ジンさんも街にいく途中ですか。すごい迷惑だとは思うんですけど、できれば一緒に街までついてきてくれると助かるんですが……」
「ハッハッハッ!いいじゃねーか。助かったんだし、もう笑い話だよ」
ジンが恐怖で震えている僕のために、こうして話ているのだとわかった。
「それとジンでいい。年も大して変わらないんだ!喋り方も普通でいいぞ、普通で。どうせ同じ所に行くんだ。オレも1人じゃ寂しいし話し相手がいた方が楽しいからな!一緒に行くか」
ジンは嫌がるそぶりも見せずに即答でOKしてくれた。イケメンすぎて、惚れそうになってしまった。
「ありがとう!ジンと一緒に街まで向かえるとホントに心強いよ!でも僕、報酬とか返せるものがなにもないんだけど?」
「なにも要らねえって。さっきも言ったろ?1人じゃ寂しいし喋る相手がいた方が楽しいんだよ」
「ホントにありがとう。でもその前に洋服を洗ってもいいかな?」
僕は苦笑いしながらそう言うと、ジンも早く洗えと笑いながら答えた。
こうして黒丸は街までをジンと一緒に向かう事になった。
まだまだ甘々ですね。
日々精進せねば…
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