第4話
マザーとの話の中で、マザー本体を目指すことが目標となった黒丸であったが、魔法が使えるかもしれないと知り、黒丸は自分の願望を満たすため、教会のある街へ向かうことを決めた。
――――
黒丸が街へ向け森の中を歩き始めて、約半分の距離まで来ていた。森の中は木々の間隔すが広いためか、慣れていない黒丸でも割と順調に進んでいた。
「もう結構歩いたけど、時間も距離も全然わからないや。お腹も空いたし、喉もカラカラだ…… 今のところ魔物と遭遇してないのだけが救いだな!どうか街に着くまで魔物と会いませんように!」
独り言を呟きながら森の中を歩いて行く。
「ん? なにか音が聞こえる。 ……この音は川だ!やっと水が飲めるぞ!」
黒丸は川の音が聞こえてくる方へ向かって走りだした。慣れていない森の中で魔物がいるかもと気を遣いながら、なにも口にせずに1時間以上歩きまわっているのだ。
知らず知らず走りだしていた。
川に辿り着いた黒丸は頭から川に突っ込み、喉を潤した。普段は水道をひねれば水がでてくるし、街をあるけば自動販売機やコンビニなどがあり、困ることがなく意識しなかった黒丸だったが、この時始めて水の恵みに感謝した。
「ヤバい、水がうますぎるぜ…… もう喉が乾くのもイヤだし、川沿いを歩いて行くか。川沿いを行けば、きっと街につくはずだ。その前にずっと歩きっぱなしだったし、ここで少し休憩しようかな」
川沿いの、比較的大きな木の根っこの間に腰を下ろし、木に背中を預けて休憩をとることにした。
「それにしても、思ったほど疲れてないや。体力の無さには自信があったんだけど。この世界に来て、なにか影響があるのかな?」
そんな事を考えながら、耳をすましてみると川のせせらぎや木々の葉がささやくように風に揺れ、その風が黒丸を優しく撫でるように吹き抜けていく。
そして、まぶたが重くなり、いつの間にか眠りに落ちた。
――
「うぅーん…… いつの間にか寝てしまったのか」
地球から異世界にきて全く知らない場所で、魔物がいるかもしれない森の中を1人で歩いてきたのだから、体力的には大丈夫でも精神的な疲れはあったようだ。
「⁉︎」
目を覚まして、川の方に目をやると30メートル先に熊がいた。イヤ、よく見ると熊に似たなにか、であった。
体長は3メートルはあるだろうか、体は緑と茶色が混ざっていて森の中で出会うと気づきにくいだろう、体表は樹皮の様なものに覆われておりかなり硬そうに見え、鋭い牙と爪が目にとまる。
(えっ…… あれって熊? ……やっぱり魔獣だよな。これはかなりヤバい、まだ気づかれてないみたいだけど、バレたら確実に喰われる。どうにか気づかれないように隠れるしかない)
心臓が警音のように体中に鳴り響くのを感じながら息を殺し、木を背にしながら立ち上がり木の後ろ側…… 熊の魔獣の視界に映らない場所に移動しようとゆっくり、ゆっくり、熊の魔獣からは視線を外さず、まばたきをする事もなく動いていく。そんな中……
パキッ!
こんな危機的状況で木の枝を踏んでしまったのだ。熊の魔獣に視線を集中させていた為に、足元を確認できていなかった。熊の魔獣がこちらを向き、お互いの視線が交わった。一瞬時間が止まったかと思った時だった。
「グォォォォ」
熊の魔獣が咆哮を放ち、前足を水を叩きつけ、水飛沫が視界を遮った瞬間、猛烈な勢いでこちらに向かってきた。
「う、うわぁぁぁぁ‼︎」
黒丸は叫びながら走った。なにも考えずに全力疾走で木の間をすり抜けるように走った。
時折、後ろを振り向き確認してみると少しづつその距離は縮まってきている。
(ダメだ、追いつかれる)
そして、後ろを確認しようと振り向いた時だった。石につまづいてしまいヘッドスライディングのように体の前面を地面にぶつけながら転倒。倒れながらそのまま体ごと振り向き、熊の魔獣と相対した。
「グルゥゥゥ……」
熊の魔獣は唸り声をあげながら、少しづつ距離を詰めてきた。
(ダメだ、もう終わった……)
諦めたその時、頭上からなにかが降りてきた。顔を上げるとそこには、僕の前に立ちはだかるように男がいた。首の後ろで槍を横に担いぎ、両手首を乗せて大胆不敵に立っているように見えた。
「よう、助けてやろうか?」
男は僕の方に首を捻り、ニッと笑ってみせた。
お読み頂き本当にありがとうございます。
でも、なかなか上手く書けないです。
書いていけば上手く書けるようになるんだろうか…
やっと新キャラも登場です。