第3話
この世界の管理者と名乗るマザー。
マザーは黒丸が地球とは異なる世界、マーズに転移したと話したのであった……
―――
(マーズ?マーズって火星だよな。って事はここは火星なのか? イヤ、でも僕の知っている火星と違うし、もしここがほんとに火星なら僕は生きていけるわけがない……)
マザーの答えにしばらく黙って考えこんだ黒丸にマザーは続けてこう話した。
(あなたはいきなりこの世界に現れました。私はそれを感知した為、なにが起こったのかを確認しにきたのです)
「わざわざ僕なんかのために手間をかけさせちゃったね。でもマザーが来てくれてほんとに助かったよ。ちなみにだけどマザー、どうやったら僕は元の世界に戻れるかわかるかな?」
(すみません。私にはあなたが元の世界に戻る方法はわかりません)
「そっかー…… とりあえず戻る方法は自分で探してみるしかないのかな」
(ここに来たのはあのラジオが鍵なのかな? やっぱどう考えてもあの電波だよなー。SARIが場所を特定したっぽいのに。あれは重大なヒントになったんじゃないか? 聞くまえに意識が飛んじゃったからな…… まあ今さら考えても仕方ないか、とりあえず電波を捉えきれるものを探さないといけないかな?)
「ねえ、マザーこの世界で電波を受信できるものってあるのかな?」
(電波ですか。多分存在しないと思います)
「はい!しゅーりょー」
黒丸はそう言うとorzの体勢になった。
(試したことはないのですが、もしかしたら私の本体のある場所でならできるかもしれません)
「え!? ホントに? もしかしたらこれで地球に帰れるかもしれない! マザーの本体ってどこにあるの?」
(すみません。それはお答えできません)
「うぅ…… なんとなくそんな気はしていたんだけど…… 直接言われると、予想以上にくるものがあるね」
(ほんとにすみません)
「いいよ。マザーは悪くないし、謝る必要は全くないから!やることも決まったしね。目標はマザー本体の場所を探し出してたどり着くこと! あっ、そうだマザー。この世界の事を教えて」
(わかりました。この世界についてなら大丈夫ですので、お話しいたします)
マザーの話では、この世界には人間族の他に、エルフ族やドワーフ族・獣人族・妖精族などの多種族が存在しているらしい。それにマナと呼ばれる魔力のようなものがあり、魔法が使えるとのこと。その他にも危険な存在として魔物がおり、魔物は食事としてマナを食べるらしく人を襲うと言う事だった……
(ヤバいヤバいヤバい、魔法って言ったか? 僕にも魔法が使える!夢にまで見た魔法…… 小さいときから憧れた魔法がとうとう……)
「マザー! 僕に魔法を教えてくれ」
(すみません。私には魔法を教えることはできません。それに魔法には適正があり、必ずしも使えるとは限らないのです)
「そ、そんな…… どーやったら適正って調べられるの?」
(魔法の適正は教会で調べる事ができます。教会では魔法の他にも個人にあった適正の武器や、職業なども調べてもらう事ができます)
「わかった!まずは教会で魔法の適正を調べよう!マザー、教会のある近くの街はどの方角に行けばいいの?」
(ここからですと南の方角、黒丸の真後ろの方向に街があります。ここからだと3時間ほど歩けば着くはずです)
「さ、3時間…… この森の中を…… 僕一人でか…… ちょ、ちょっと待って!この世界には魔物がいるんだよね?もし魔物がでたらどうするのさ!武器もないし、ましてや僕はケンカすらした事もないのに……」
(安心してください。この森は比較的魔物の少ない場所になりますし、そこまで危険な魔物はいないはずです)
「マザー…… 違うんだよ…… 比較的少ないと、全くいない。では危険度が全然違うんだよ…… しかも"そこまで"ってのも、なんか追い討ちをかけられてるような……」
(なにがおっしゃりたいのかは、よくわかりませんが、1つだけ忠告です。あなたはこの世界ではイレギュラーの存在になります。あまり目立ちすぎますと、誰がなにをするかわかりませんので、注意してください)
「それもそうか。忠告ありがとう!気をつけるようにするよ。それじゃあ南の方角、街の方に向かうとしますか」
(それでは黒丸、気をつけて、もしどーしてもお困りの時には呼んでください。できる限り対応するように致しますので。と、言いましても、お話しする意外はお役には立てませんが……)
「それだけでも助かるよ。1人じゃあ不安だし、話を聞けるだけでも全然違うからね。いろいろありがとうマザー!頑張ってマザー本体の場所を見つけるよ。なにかホントに困ったことがあったら呼ぶからよろしくね。じゃあ行ってきます」
(はい、それではまた)
ここでマザーの声は途切れた。ここである程度の情報といまの現状については把握できた黒丸は魔法を使えるように、と胸を踊らせながら、街へ向かうのであった。
しかし、森の中で1人。危険であることには変わりなかった。