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フェスタの冒険 認識

 アレプトが食事後、二時間ほどの休憩を挟んで決闘を始める旨をフェスタ達に告げ玄室の奥へと去って行った。

 フェスタ達が見送る間、アレプトの使い魔と思しき蝙蝠を無理矢理に人間にしたような魔物が広間に置かれたテーブルを手際良く片付けていく。

 テーブルが無くなった玄室内は、かなりの広さを持ったものであった。

 例えるならば学校の体育館よりは広いだろう。バスケットボールのコートならば余裕で二面は取れる。

 アレプトが告げた通りに、フェスタとニティカのみでアレプトと戦うならば広過ぎるといって良いほどの広さである。


「私とフェスタ様だけで……ですか」


 ハァ、という短い溜息と一緒に、ニティカが不安そうに言葉を吐き出す。

 迷宮を踏破した証を手に入れねならないのだから、自身が戦うことは既に覚悟していたニティカではある。

 が、しかし。

 フェスタと二人きりで、となると『足を引っ張ってしまうのではないか』という不安な思いが急に頭を(もた)げたのだ。

 フェスタたちとパーティーを組んで、入るには容易くも抜けるのは困難と称される迷宮を踏破しようかという段階になっても、ニティカは未だにフェスタを自身が支えるべき神として崇めている。

 その気持ちは時間が経つにつれて治まるどころか、むしろ益々熱気を帯びているような始末なのだ。

 そんな神と等しきフェスタと一緒に自分が二人きりで戦うなどとは、ニティカにとっては畏れ多いのである。


 これがパーティーの一員としてフェスタと共に戦う場合は微妙に勝手が違う。

 その場合であればアリサやジバといった同格の仲間が近くに居て、仮に自分がフェスタに危険を及ぼしかねない失敗をしても誰かがフォローしてくれるであろうという安心感が少なからずある。

 しかし、二人きりとなってしまうと自分の失敗はそのままフェスタの窮地を招いてしまうかもしれない。

 そうなってしまえば、自分は何度死んでもお詫びできない、ニティカはそういった意味で不安を抱えていたのである。


「すみません、ニティカさん……頼りにならなくて」


 フェスタが心底申し訳無さそうな顔と声でニティカに謝る。

 フェスタも、これまでと違いアリサやジバのサポート無しに戦うことに不安を抱いていて、ニティカも同様の不安があって先の言葉を出したのであろう、と理解したのだ。


 今度はフェスタの対応ニティカが慌てる。


「そ、そ、そんな!

 フェスタ様が頼りにならないなんて、そんな!

 私が足を引っ張ってしまうのではと……」


 そのニティカの言葉を聞き、フェスタはその意図を理解しきれなかった。


 ニティカから見たフェスタは、一言で表せば『神』である。

 敬うべき、支えるべき、尊いもの。

 故に、ニティカの態度は一貫してフェスタを立て、言葉に従い、憧れ、付き従い、敬愛する。

 そして、フェスタに比べると、ニティカ自身は神と自分を比較するなど烏滸がましいと考えているが、それでも無理に比較するにならば、ニティカは極めて矮小な存在であると認識している。


 これまでの言動は、全てニティカ自身の不足によるものであるのに、理不尽にも神たるフェスタに心痛を与えてしまった。

 これが、ここまでのニティカの心象風景である。


 対して、フェスタは。

 フェスタはニティカのことを純然たる『仲間』であると考えている。


 追われていたニティカを助けた恩があるのは事実だが、当のフェスタ自身はそれを恩とは全く思っていない。

 あの時は困っている人が居たので助けただけであって、ニティカがどう思っているかはともかく、フェスタにとっては何ら特別なこともない。

 仲間に引き入れたことに関しても深い意味は無い。

 魔王討伐の旅に仲間は多いに越したことはないし、何よりニティカは治癒魔法を使える。

 フェスタが『信用できるかな』と思ったから仲間に引き入れたし、仲間となったからこそ試練の迷宮を踏破すると決めた、それだけのことである。


 要するに、フェスタとニティカの間で同じ出来事を経験しておきながらも、立場の違いによってお互いに大きく認識を違えてしまっている。

 それがこの二人の現在における関係であり、そんな二人で迷宮を踏破する為の試練に挑まなければならない。

 地味に、このパーティーが結成されて以来の難事になりそうな予感が漂うのであった。

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