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フェスタの冒険 最下層前

「まさか、こんなアイテムがあるなんて……」


 第四十階層から最下層に向かう道中、そう愚痴を溢すのはジバである。

 ジバが曰く、自身が以前にこの迷宮に挑んだ時、この辺りの階層では悪魔(デーモン)系の魔物が至るところで現れた、というのだ。

 しかしながら、第四十階層を抜けてからこちら、パーティーは一切の魔物と遭遇していない。

 魔物が存在していない、という訳では無さそうなのだ。

 先頭を行くアリサも、フェスタもジバも、近隣に魔物の気配を察知しているのだがことごとく遭遇はしない。

 敢えて魔物を追い掛けるような真似はしていないが、曲がり角でバッタリ遭遇などという事すら起こらないのだ。

 間違いなくレナスィから受け取った腕輪(アイテム)の効果なのだろうが、以前の苦労してこの迷宮を抜けたジバとしては些か釈然としない気持ちであるようだった。


 ともあれ、パーティーは第四十九階層にまで到達していて、最下層に続く階段は目前という状況。

 しかも、ジバの記憶の通りであるのならば最下層は迷宮となっておらず、階段を降ると扉があり玄室の中に迷宮の主(ダンジョンマスター)が待ち構えている、ということだった。

 ジバは「ここに来て今までのパターンからは外れてしまっているので、アテには出来ませんが」と前置きした上で、以前ここに来た際には悪魔公(デーモンロード)が待ち構えていた、と皆に伝えた。


「悪魔公を倒せば祭壇が現れます。

 その祭壇に大神からの使いが現れ、何らかの力を授かります。

 私が以前来た時には、仲間の一人が『神の武具』を授かりました。

 今回もそうであるとは言い切れませんが、その可能性は高いと思います」


 ジバの言葉にアリサが疑問を挟む。


「その、ご褒美みたいなモンを貰えるのは、一人って決まってるのかい?」

「それは分かりませんが、少なくとも以前は一人が武器を授かっただけでしたね」

「とろでさ、一つ聞いても良いかい?」

「はい、何でしょうか?」

「アンタがさ、前にここを踏破したってのは前に聞いたんだけど。

 ひょっとして、アンタって歴史に名を残すような凄いパーティーの一員だったりするのかい?」

「いきなりな質問ですね」


 アリサの問いに、ジバが僅かに眉を顰めてみせる。

 ポーカーフェイスとまでは行かないは、普段から感情が顔に出にくいジバとしては珍しい光景だ。


「まあ、少なくとも私は歴史に名前を残してはいませんよ。

 ここを踏破したパーティーの一員だった、というだけで私の功績ではありませんし。

 それに、人知れずここを踏破するような者もいるうでしょうしね。

 言い伝えとはそういういい加減なものが多いですし。

 私が過去にどんなパーティーに在籍していたとしても、現在(いま)はこのパーティーのメンバーです。

 過去の詮索は無し、が冒険者の鉄則ですよ」


 一息に喋り、ジバは話題を打ち切ってみせた。

 アリサは不満げな顔を見せ、フェスタもジバの過去については気になっていた事もあり惜しいという表情を見せたものの、二人ともジバの最後の言葉に押し切られ追求するまでには至らない。

 ジバの言った『過去の詮索は無し』はいかなるパーティーであっても破ってはならない暗黙の了解であった。


「今回はここに来る理由となった神の御告げの件もあります。

 神より『何らか』を授かるのはニティカさんである可能性は高いでしょうね。

 それそ以って神殿への迷宮踏破の証とすることになるでしょうし」


 そう言葉を継ぎ足して、ジバは自身の持つ先への展望を説明する。

 これは実際のところは説明というよりもメンバー各人への確認のようなものである。

 実際のところ、フェスタ達パーティーの当初の目的というならば十分に達成してしまっていると言える。

 そもそもが、魔王討伐の旅を遂行できるだけの『強さ』を目的とした迷宮探索だったのだ。

 第四十階層の番人である蒼竜をあれだけ一方的に倒してしまったパーティーの実力は本来の目的からすると過分とも呼べる。

 しかし、仲間に加わったニティカの為とも言える新たな目的がプラスされたのが現状なのだ。


 すなわち、目前となった最下層の攻略ーー試練の迷宮の踏破である。


 ジバの予想では、現在のパーティーの実力ならば悪魔公を相手にしても、楽勝とは言えないまでも苦戦はしないだろうと考えていた。

 それ程に、短期間でフェスタとアリサはジバの予測を大きく上回る成長を見せたのである。

 付け加えて、ニティカの加入である。

 彼女の存在は、パーティーに回り道とも呼べてしまう別の必要事項を与えてしまったものの、パーティーに新たな戦力も与え、さらにその戦力はパーティー各人の負担も減らしてくれることになった。

 この辺りも、フェスタやアリサが自身の鍛えるべき範囲を狭めてくれて、二人の成長速度を増してくれた要因とも言える。


 ジバの見立てでは、現在のパーティーはジバが以前加入していたパーティーと同等かそれ以上の実力があると見ていた。

 理由は単純なもので、前にいたパーティーよりも迷宮の探索速度が圧倒的に早いからである。

 いかにジバという経験者がいるというアドバンテージを抜きに考えても、戦闘能力という意味でこのパーティーの実力は現在抜きん出ており、その差が迷宮探索の速度の差として出ていたのだ。

 当初の予想では最低でも二カ月は掛かると踏んでいた迷宮探索は僅か一ヵ月と少しで終わろうとしている。


 少しの休憩と、最下層での戦いにおける作戦会議を済ませ、一行は最下層へと踏み込みのだった。

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