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フェスタの冒険 戦力

 試練の迷宮探索は順調に進む。

 さすがに一日で駆け抜けてしまった低層ほどのスピードではないものの、並の冒険者では考えられないほどの攻略速度でフェスタたち一行は迷宮を進み、一カ月が経過する頃には第四十階層にまで到達していた。


 日帰りで進むには限度がある、ということで十五階層に到着した際に一度町に戻り、長期間迷宮に留まれるように用意をしてから本格的な探索へと移行した一行である。

 パーティーの知恵袋ことジバが厳選した迷宮探索用の装備一式はかなり優秀なもので、一カ月も迷宮に潜りっぱなしであるのにメンバーの全員がここに至るまで不便を感じることが無いほどである。

 女性比率がやたらと高いこのパーティーにも関わらず迷宮に留まり、快適とまでは言えなくとも決して不便とは呼べぬ生活環境を送れたのはジバ持ち込んだ魔法装備(マジックアイテム)の恩恵が大きい。


 まず、女性陣にとって最大の功績者とも呼べる魔法装備は『浄化石』というアイテムである。

 一部の者が使う浄化(ピュリファイ)という魔法の力を大きめの宝石の閉じ込めたもので、手に持って魔力を注ぎ込めば対象者の身体を装備まで含めて綺麗にしてくれる、とて便利な代物(シロモノ)である。

 本来なら浄化の魔法は冒険者が使う者ではなく、職人や飲食店、宿屋などといった業者が使う便利魔法とでも呼ぶような部類の魔法である。

 便利なのだが習得に何故か手間が掛かる魔法で、清掃や洗浄といった行為を日常的に行うような者でなければ積極的に覚えるような魔法ではなかったりする。

 故に、長く冒険者をしているアリサでさえ浄化の魔法が人間にも使えることを知らなかったような話なのだ。


「エフィネスの市場で見付けましてね、少々値は張りましたがなかなか便利なものでしょ?」


 とは、これを持ち込んだジバ言である。

 この浄化石には女性陣もジバを拝むような勢いで感謝しているのだった。

 他にも、飲用に適した水の出る魔道具やどこでも安眠できる枕といった変わり種の魔法装備まで用意してあったりする。

 食糧は嵩張らない携行食のみではあったが、一行は他の冒険者に比べるとかなり楽な迷宮探索をしていたのであった。


 勿論、ここに至るまでの戦闘に関しても順調だったと言える。

 第三十階層越える頃には、亜竜種やキメラ、ゴーストといった中級者以上が挑むような魔物だらけになっていたのだが、フェスタたち一行は苦戦することもなくそれらを倒してきたのである。


 その主な理由としては、やはりジバの特訓の成果と呼べるだろう。

 フェスタは剣の極意を使いこなすのは勿論のこと、魔法もかなりのレベルで使いこなすようになっていた。

 アリサは気の運用による防御や攻撃の強化に成功しており、アシストがあればレッサードラゴン程度であれば一撃で仕止めることが可能になっている。

 魔法に関しても軽いケガ程度であれば戦闘中に自分で自分のケガを治せるまでに上達を見せた。


 ニティカに関しても、パーティーに正式に加わることになってからジバが特訓メニューを組み立てた。

 内容としては、治癒系魔法の速度と威力向上が一つ。

 もう一つはニティカが持っている『麻痺の魔眼』の完全制御である。


 ジバがニティカに解析(アナリシス)を掛けることで判明したこの魔眼は、ニティカには完全に制御できていないことも同時に判明した。

 というのは、この魔眼は味方にも効力を発揮してしまうのである。

 試しに実験してみたところ、ニティカが魔眼を使おうと意識している時にニティカの瞳を見てしまうと、それが仲間であっても身体が痺れて動かなくなってしまうのだ。

 いわゆるフレンドリーファイア状態である。


 これを無くす為に、ニティカは現在も魔眼の制御を練習中であった。

 治癒系魔法に関しては特訓の成果と、これまでも村の神殿で治癒師をしていた経験もあり、かなりの緊急時でも使用可能なほどニティカの治癒系魔法は上達している。

 具体的には、骨が折れたなどの場合ならほぼ一瞬で。

 腕や脚が斬り落とされたとしても、斬り離されてすぐにであればくっつけられてしまう威力である。

 早さと効力においては、ニティカはジバを上回る治癒系魔法を扱えるようになっていた。


 そして、ジバは。

 本人が曰く、『大体ですが現役時代の勘は取り戻してきていますね』ということである。

 この第四十階層で襲ってきたグリフォンと一角獣(ユニコーン)をフェスタたちが手出しする間も無く倒してしまったことから、信憑性は高い言葉である。

 グリフォンは氷漬けにされて粉々に砕け散り、一角獣は雷を落とされて消し炭にされてしまった。


 因みに、アリサは自身の成長も相まって常識で考えることを諦めている。

 フェスタと関わったのが運のツキと思い、あるがままを受け入れることをいつの間にか誓った。

 諦めの境地に入った、と言い替えても良い。


 現状、フェスタたちパーティーの戦力はこのように整いつつあり、これから

第四十階層の番人に挑もうとしているところなのであった。

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