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フェスタの冒険 条件

「試練の迷宮を踏破して証を見せよ、と言われてしまいました」


 ニティカが唐突に切り出したのはそんな条件だった。

 神殿に赴き、村の魔物の襲撃による全滅と自身の信仰の宗派替え、冒険者として旅に出ることを大司教に報告をしたところしばらくの間待たされることになった。

 それ以前に、受付で『ホーク大陸の村の件報告を』と告げた段階でも待たされたのに、とニティカがテーブルの全員に向けて神殿の対応の拙さを愚痴る。


 大司教からしばし待たされた後に登場したのは教皇だった。

 神聖皇国のトップ、大神ネフィスの力を唯一この世界に顕現できると言われる人物である。

 名をカールトン二世というこの人物は白髪に立派な髭を蓄えた穏やかな眼をした老人であった。


 カールトン二世はニティカから直接報告を聞くと、その穏やかな顔を少し顰めて考え込むような素振りを見せた。

 そして、ニティカにこう告げたのである。


『神殿として、貴女が冒険者として旅に出るに相応しい人物かどうかを試させてもらいたい。

 ここエフィネスの近郊にある修練の迷宮、その最下層に辿り着けば神官や僧侶、それに貴女のような巫女であれば必ずしや『(あかし)』を受け取ることになるでしょう。

 それを持って来れば、神殿として正式に貴女が冒険者として旅に出ることを認めます』


 と。


「正直なところ、私は神殿から認めて頂かなくても構わないのですけど」


 困ったような顔を見せながらニティカが言う。

 彼女としては、フェスタたちが修行の為に修練の迷宮に潜る予定なのは知っている。

 しかし、さほど時間に余裕がある旅ではないことも知っているのだ。

 迷宮内でただ修行するのと、最下層まで踏破しなければならないのでは掛かる時間は大幅に変わってしまうであろう。

 ニティカとしては、大神ネフィスのお告げも、教皇からの条件もさほど大事なものではなかった。

 ニティカの重要なポイント、それはいかに『フェスタ様の力になれるか』、それ一点なのである。


「まあ、予定では最下層まで向かうつもりではありませんでしたが」


 そう答えるのはジバである。

 言いつつも、何か含みのある表情で先を続ける。


「ニティカさんの聞いた神の御告げに、教皇様からの言葉ーー気になるところが無いわけでもありません。

 はっきりとした期限が無いというのもありますが、私はこの際ですし迷宮の最下層まで行ってみる価値があるかもしれないと思うのでが。

 お二方はいかがですか?」


 ジバがフェスタとアリサに問いかける。


「アタシは、フェスタのお供だからね。

 フェスタが行くって言うなら付いて行くだけだし、任せるさ」


 アリサの言葉に、何故かニティカが激しく同意を示し、その場にいる全員の視線がフェスタに集中する。

 フェスタの返答によって、迷宮の探索範囲が変わる、そんな状況となった。

 そんな空気を感じてか、フェスタが下を向いて少し考えた後、答えを決めたように顔を上げて言う。


「行きましょう!

 少し遠回りになるかもしれませんけど、仲間が出されてしまった難問を協力してクリアするのもパーティーの使命です。

 それに魔王討伐のヒントが何か掴めるかもしれませんし、何と言っても神様の御告げですから」


 フェスタの言葉に全員が頷いてみせる。

 かくして、リーダーの鶴の一声によってパーティーは『試練の迷宮』踏破に向けて動くことになった。

 明日からの迷宮探索の成功を祈願して乾杯の盃を交わす一行であった。

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