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フェスタの冒険 剣の極み

 エフィネスに到着した夕方過ぎ、部屋に居るのは珍しくフェスタとジバの二人だけだった。

 ニティカは神殿へ報告に行くと出てからまだ戻っておらず、アリサは護衛の間飲めなかった酒を飲むと張り切って酒場へと繰り出して行ってしまったからだ。

 そんな理由で、意図したわけでもないがフェスタとジバは二人きりで部屋にいた。


 ジバは明日以降に迷宮に潜る準備を整えていて、フェスタはジバから貰った魔法の資料を復習するようにベッドの上で読み返していた。

 ちなみに、ジバが提案したフェスタとアリサの特訓計画は概ね順調に進んでいる。

 フェスタは未だに無詠唱での魔法行使は無理だが、教わった殆どの魔法を詠唱を省略して発現できるようになったし、アリサも自分の怪我を治せる程度の回復魔法は扱えるようになっていた。

 後は、迷宮に入ってからアリサは気力の運用によって防御力を高める術を学び、フェスタはジバの知っている剣術や戦術を学ぶという予定となっている。


「ねえ、ジバさん。一つお聞きしても良いでしょうか?」


 ベッドの上でうつ伏せになって寝転んだままの体勢でフェスタがジバに話しかけた。


「何でしょうか?」


 ジバも、荷物を整理する手を止めずに応えた。

 新たに買った大きめのリュックに、それぞれの持つ予定となっている道具がテンポよく並べられてはリュックの中に詰められていく。


「ジバさんの……解析(アナリシス)は、その……人の心の中まで読めますか?」


 唐突な質問である。

 しかし、ジバは驚きも気を悪くするような素振りも見せず、


「いいえ、思考や気持ちといったものは読めませんね。

 解析で見えるのは、あくまでもその人のステータスとでもいいましょうか、職業や能力値、それに持っている技能のようなある程度表面的なものだけです」


 そう答える。

 隠すようなことでも無い、聞けばこれぐらいは答えるといった様子だ。

 その答えを聞いたフェスタは、ベッドから上半身を起こし、ジバへ向けて右手を差し出した。


現在(いま)の私を……解析()てください」

「…………?」


 フェスタの何やら思い詰めたような様子に、ジバは何も問い返すようなことをせずにフェスタの手を握り解析(アナリシス)の魔法を発動させた。

 ジバが何かを解析すると、頭の中に文字として情報が脳裏に流れ込む。

 人間を解析すれば、先ほどジバが述べた通りにその人物の名前、年齢、筋力、魔力、職業、スリーサイズ、使える魔法、技、その人物特有の能力(スキル)などがジバの脳内に入力(インストール)されるような感覚だ。

 そして今、ジバが視たフェスタの情報に、これまでには無かった項目があるのに気が付いた。

 それと同時に、フェスタが何について思い悩み、そして何故ジバに自分の情報を読ませるという行動に出たのか、それらの理由を察した。


 フェスタに新たに加えられていた項目ーーそれは『剣の極み』というものだった。


 この能力(スキル)を持つ者と、ジバは今までの人生の中で何度か出会ったことがある。

 その全ての者がが、ほぼ例外なく剣術の才能を持っていて、かつその人生の全てを剣の道に捧げたような人物だった。所謂ところの『剣術バカ』や『求道者』と呼ばれる類いの人種である。

 その殆どが老齢とも呼べるような年齢になり、それでも剣では誰にも負けない。

 そんな者たちが持っていたような能力である。


 ジバ自身がこの能力を持っていない為、どのような条件でこの能力を持つに至り、能力を持つことでいかなる現象が起こるのか、メリットやデメリットはどのようなものなのか、という細かい事までは知らない。

 しかしーージバが知る『剣の極み』を持つような人間が出来たことは、道端の落ちていた棒切れで襲い掛かって来る暴漢を真っ二つにしてみせたり、背後から襲ってきた完全に気配を消した暗殺者を眼にも止まらぬ速度での居合いで斬り伏せてしまったりと、そんな人間離れしたような猛者ばかりなのだ。


 そんな、人間離れした、とも言って過言ではない能力(スキル)を、ジバの目の前にいるたった十一歳の少女であるーーフェスタが持っている。

 これを見た瞬間に、ジバにはフェスタの悩みの理由に関して大体の想像が付いたのだった。

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