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フェスタの冒険 エフィネス到着

 エフィネスへの残る旅路は至って平穏なものだった。

 カーターから伸びたエフィネスの街道では盗賊が一番の脅威といっても、六人もの盗賊を四台の馬車の後方に括り付けて歩かせているようじゃ商隊を襲おうとする盗賊などいない。

 ()してや、六人の盗賊のうち三人は片手と、片腕と、片脚が無くなっているのだ。

 余程の命知らずでもなければ、そんなものを襲おうとは思いもしない。


 エフィネスからほど近い場所に拠点(アジト)を置く盗賊の斥候などは、『あれは小さな商隊を装った囮だ。間違いなく神聖皇国の聖騎士隊が小隊単位で隠れて護衛に付いているはずだ』と自分たちの頭領に報告をして、襲撃を止めさせたほどに、引き連れた敗残盗賊はフェスタたちのヤバさを宣伝する広告塔となったのである。


 そうして、程なくしてエフィネスに到着する頃にはフェスタも先の戦闘について深く考える素ぶりは見せなくなっていた。

 戦闘が終わった直後には、御者のおじさんが心配するほど黙り込んでいたのだが、翌日には普段通りの明るく人懐っこい空気を持ったフェスタに戻って、おじさんと世間話をしつつ旅をしていた。


「じゃあ、冒険者ギルドにはそっちから完了報告を出しておいてくれ」


 盗賊達を警吏に引き渡し、褒賞金を受け取ってから商隊と別れる際、商隊のリーダーがそう言いながらジバに依頼終了の証明書を渡す。

 これを冒険者ギルドに渡せば報告書代わりになって、その場で預託金として冒険者ギルドの先払いしていた依頼料を貰えるという寸法だ。

 現物が報告書代わりとなる採取系や、獲物の一部を持って帰る討伐系、見聞した一部始終を報告する調査系などと違い現物や報告事例が出難い護衛はこういった依頼人から出される終了証明書が出されるのが一般的だ。

 証明書には依頼の内容、金額、勤務日時、勤務評価、依頼人のサインが書いてあり、用紙の上下それぞれにギルドの割印が押してある。

 虚偽の依頼達成報告を防ぐのと、依頼人が護衛側を騙さないようにするため、双方の橋渡しをする冒険者ギルドがやっている方策である。

 割印のされたもう片方の用紙はギルドに保存されていて、依頼人と冒険者にトラブルが起こればいつでも参照可能になっている。


 証明書を受け取った一行は、その足で冒険者ギルドに向かい報告を終了させると冒険者ギルドで長期滞在ができる宿屋の紹介を頼んだ。

 エフィネスでは、ニティカの神殿への村の件の報告と迷宮での修行、二つの時間がかかりそうな用件があり、拠点にできる場所を確保しておきたかった。

 長期滞在を歓迎しており、かつ出来れば長期滞在することで割引のあるような宿屋がベストである、とアリサがギルドの受付に条件を示した。


 条件に合致する宿屋は数件あり、一行はその中で神殿総本部の近い場所にある宿屋を選んだ。

 理由は簡単である。神殿に用があるのは当然として、試練の迷宮の入口も神殿にあるのだ。

 正確に言えば、試練の迷宮の入口は神殿の裏手、エフィネスの町を神殿裏にある裏門から出て、馬で一時間もかからないような場所にある。

 神殿近くにある宿屋が何かと都合は良いのである。


 宿の主人ろ交渉をした結果、一カ月の料金を先払いでさらに期間が伸びる場合は一カ月単位で契約更新、更新後一カ月に満たずに宿を引き払う際には日割で換算して差額は返還する、という条件で一日につき一人銀貨六枚のところを銀貨四枚にまで割引してもらうことに成功した。

 ちなみに、この交渉はジバではなくアリサがやったものだ。

 浮世離れした金額ならともかく、庶民的な細かい金の交渉であれば得意なアリサなのである。

 交渉の仕方も巧妙で、ニティカに胸元の開いた服をわざわざ着せて、隣に立たせて宿の主人と交渉に挑んだのだ。しかも『たまに「ああ、暑い」って言いながら胸元をパタパタさせて風を服の中に送り込みな、後は何もしないで立っててくれりゃあ良いからさ』という演技指導付きである。

 ニティカの豊満な胸元が気になって仕方ない宿の主人は見事にアリサの術中にはまり、思考をニティカの乳房ごと揺らされた如く赤字覚悟の金額まで宿泊費をまける羽目になったのである。


 こうして拠点も決まり、一行のエフィネスでの活動は幕を開けたのであった。

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