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フェスタの冒険 目覚め

 死んでしまった盗賊は全員その場で死体を焼かれた。

 そうしてしまわないと野生生物の餌となり、この場がそういった生物の餌場となってしまうかもしれない。

 また、人間に限らず死体というのは腐ると瘴気を発するようになる。

 それらを防ぐ為に、外で出た死体は全てその場で焼いてしまうのが慣例なのだ。


 生き残った盗賊は全て手か胴を縄で縛られ、商隊の馬車に引かれながら歩かされる。

 このままエフィネスまで連れて行き、官憲へと引き渡すのだ。

 その際に謝礼金という名目でフェスタたちには賞金が支払われる。

 大体は盗賊一人につき金貨二枚が相場である。

 これは善意から出ている金ではなく、この盗賊たちの刑罰が確定した後に犯罪奴隷として売り出される金額の約一割が捕らえた者に分け前として即金で支払われるものなのだ。


 現在、ワーラット大陸やエリア半島、北の大陸アスリアなどでは奴隷は認められていない。

 奴隷を売ることも買うことも重罪になっており、かなり厳しい刑罰が科されることになっている。

 そのような理由から発達してしまったのが闇市場で、非合法な形で奴隷を売買している。

 借金のカタに売られたり、幼い子供や強盗に遭った女、政争に巻き込まれた嘗ての貴族など奴隷の出所は多岐に渡る。

 それらの人間を買い取り、従業員という見せかけで働かせたり、自家のメイドとして囲ったりするのが一般的な奴隷の使い方だ。

 実際のところは賃金が極端に安い、もしくは払われないのは殆どで、人前では普通の使用人として扱いつつ、人目が無ければ暴力や性的暴行に至っている。

 そういった扱いが非合法の奴隷の標準なのである。


 一方、例外的に合法となる奴隷がこの盗賊たちの末路のような犯罪奴隷である。

 罪を犯したものが入る刑務所のようなものが無い代わりに労働力として奴隷とされ公売に掛けられる。

 罪に応じた年数を奴隷として過ごすことになるが、この世界の刑法というのはかなり大雑把なものだ。

 悪く言えば、判事の気分一つで罪が軽くも重くもなるのだ。

 軽い万引きで生涯を奴隷として過ごす者も居れば、殺人を犯して無罪となる者も居る。

 大抵は前者に当てはまってしまい、炭鉱や街道整備、商家の丁稚の犯罪奴隷として売られ、恩赦や主人の温情、はたまた寿命が尽きるまでは奴隷として過ごすことになるのである。


 盗賊たちはエフィネスで取り調べを受けた後、罪を確定され犯罪奴隷になる事がほぼ決まっている。

 それでも、奴隷かた解放される可能性もあれば、奴隷の身分から逃げ出そうという考えの者もいる。

 それ故に、盗賊たちは死ぬよりはマシと馬車の後ろを縄で縛られたまま歩いて付いて来るのだ。


 再びエフィネスへの旅を開始したフェスタは、御者台の上で先ほどの戦いを頭の中で反芻していた。

 盗賊たち五人を一瞬で斬り伏せたあの瞬間のことだ。


 走り出した時、フェスタの周囲から色が無くなった。

 視界の中が白黒になったと同時に、耳からは音も無くなった。

 そして、周囲の様子が何故か手に取るように分かった。

 近くで戦うアリサの様子も、その相手の盗賊たちの様子まで伝わる気配から認識することが出来ていた。


ーーそして、さらに不思議なことがあった。


 盗賊たちの間に黒い線が見えた。

 そして、その線を剣でなぞれば、盗賊たちを斬り倒せると、直感で分かったのだ。

 直感に従った結果、直後には戦闘不能となった五人の盗賊が出来上がった。


 フェスタはこのような体験は初めてだった。

 線に沿わせた剣は、これまでとは比べものにならぬほど速く動いた。

 力を込めずとも、いとも容易く手が、腕が、首が斬り落とせてしまった。


 そして、線の正体をフェスタは直感で理解していた。

 あれはーー『相手の隙がある急所が線として見えた』ものだ、と。


 視界から入る情報を脳が処理して、敵の弱点を線として表示したのだ。

 そして、線の向きや方向は、そこさえなぞればフェスタの最大で最速の威力の剣が出せるように配置されてから線で結ばれたものになったのだ。

 フェスタの元から持っていた剣の才能と速さ、そして『強くなりたい』という思いが、こういった形で結びつき、フェスタの能力(ちから)として発現したのであろう。


 弱冠十一歳にして、少女は剣の達人の域の足を踏み入れたのだった。

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