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フェスタの冒険 誤算

「盗賊です! 囲んで来ます!」


 盗賊にいち早く気が付いたのはフェスタである。

 その声を聞いて四台の馬車が一箇所に集合した。

 分散して人質を取られないようにと、予め決められていたフォーメーションである。


 商隊側もフェスタたちも、盗賊が出るであろうことは予測していた。

 魔物が出ないということは、盗賊にとっても好都合だからだ。

 まず、旅をする者の警戒心が薄れる、警戒心は薄くなっていれば奇襲が通る。

 次に、自分たちも魔物に襲われるかもしれない、というリスクが減る。

 最後に、魔物対策として雇われる護衛の相手をしなくて良い、という事だ。


 これら盗賊側から見たメリットが多い街道である事から、襲われる確率が極めて高いと読んでいた。


 盗賊の人数は凡そ十五人、まだ潜んでいる者がいる可能性もあるので最低でも十五人である。

 まず、最後尾に居るジバが、盗賊に声を掛ける。


「我々に何か御用でしょうか?」


 格好が盗賊っぽいというだけで攻撃を仕掛けるわけにはいかない。

 これが盗賊を相手にするときに面倒で厄介なことなのだ。

 襲われてもいないのに殺傷してしまった場合、相手が官憲に訴えればこちらが犯罪者となる事さえ有りうるのだ。


「用という程のことはねえ、荷物だけ置いてとっとと失せな。

 そうすれば命までは取らねえ」


 盗賊の一人が決定的な交渉決裂の言葉を吐く。

 盗賊たちが山賊刀を構えると同時にフェスタたちも戦闘態勢に移った。


 ジバが杖から複数の火球(ファイアボール)を撃ち出し、全てが盗賊に命中した。

 これが合図となり、この場は一気に戦場へと変わった。


 十五人居た盗賊はジバの火球(ファイアボール)によって五人が倒れ、十人にまで減った。


 一番弱そうな者を複数で襲い掛かるのは戦場でのセオリーだ。

 そこから考えれば、彼等のうち、右翼から近寄っていた五人が一斉にフェスタに向かって斬り掛かったのは、本来ならば正解だったはずである。

 しかし、彼等はフェスタの速度を甘く見過ぎていた。

 一瞬の閃光が盗賊たちの視界を走った。

 次の瞬間、一人は武器を持った右腕を、一人は左脚を付け根の部分から、一人は右手首から先を、それぞれ失っていた。

 その三人はまだ生きていただけ幸運である、残る二人は首と胴体が永遠の別れを告げていた。


 前方から近寄っていた三人は、既に二人が地面に倒れていた。

 それぞれ、顔面と胸部がアリサの拳大に陥没している。

 残る一人は一応山賊刀を構えてはいるが、身を震わせ股間からは尿が漏れていた。


 左舷から来ていた二人はまだ生きていた。

 生きていても、動けるとは限らないのだが。

 ニティカの両眼がエメラルドに光り、盗賊たちの動きを拘束しているのだ。


 既に地面に倒れている盗賊はこれで九人。

 残る六人のうちとりあえず怪我をしていないのは三人である。


 まず、アリサが震えている盗賊に近付き当て身を首筋に入れた。

 完全に気絶した盗賊をロープで縛ってからアリサはニティカの担当している左舷に向かう。


 フェスタに襲い掛かった盗賊の生き残り三人は完全に戦意を喪失していた。

 全員が大人しくロープで縛られた後、フェスタが血止めのために回復魔法(ヒール)をそれぞれに掛け、盗賊たちを引き連れてジバの方へ赴く。


 ジバの居る後方から来た五人は、全員息絶えていた。

 全員、顔の中心に向こう側は見える穴が開いている。

 傷口からは血が一滴も出ていなかった。火球(ファイアボール)が男達の顔に穴を開けると同時に傷口が炭化するまで一瞬で焼き尽くしたのである。


「仲間はみんなやられたよ、アンタたちはどうすんのかね?」


 アリサが、ニティカに睨まれ動けない盗賊たちに降伏勧告を促す。

 身を動かすことも、口を開くことさえ出来ぬ盗賊たちは身体の力を抜き、手に持ったままだった山賊刀を地面に落とした。

 この盗賊二人の降伏を以って、盗賊たちの襲撃は完全敗北という形で終了したのだった。

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