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フェスタの冒険 高級宿屋

 フェスタたちの今夜の宿、『カーターハイアット』はその名に恥じぬ高級宿屋であった。

 案内されたのは所謂スイートルームである。

 リビング的な部屋に寝室が二つ。どちらの部屋にもキングサイズの天蓋付きベッドが設置されている。

 さらにはミニバーと庶民にはお目にかかる機会すらない冷蔵庫的な魔道具が設置されており、中には氷まで入っている。


 そして、フェスタがご所望だった風呂である。

 広い浴室に広い浴槽、さらにはシャワーまで付いている。

 王宮では毎日のように入っていたが、冒険者になって以来の大きなお風呂だ。

 さらにお湯は使い放題という、砂漠の近郊都市とは思えぬ場所であった。


 さすが、宿泊費が一人金貨二枚もするだけある。

 金額を知らないアリサが聞いたら目を回して気絶しかねない金額ではあるが。

 ちなみに、お代はフェスタが大金貨二枚で四人分をポンと出して、残りはチップでとフロントに伝えた。

 それを大金貨など見慣れていないアリサは四人で金貨二枚と勘違いしながら「さすが高級宿屋、お高いねえ」などという呑気な感想を抱いていたのだが。

 知らない方が幸せということは世の中に多々あるものだ。


「お食事はお部屋で? それともレストランでなさいますか?」


 フェスタたちの荷物を部屋まで運んできたボーイが恭しく聞いてくる。


「ああ、レストランで頂きます。ドレスコードがあるならば貸し衣装をお願いできますか?」


 ジバがそれに受け答えしている。

 女性陣には無理な、スムーズな対応である。


「お風呂を先に済ませてから食事にしますので、二時間ほど後にお願いできますか?」


 ジバの言葉にボーイが恭しくお辞儀をし、部屋から出て行く。

 それを確認して、フェスタはいそいそと浴室へ向かう。

 アリサはミニバーの酒の種類と数を確認している。

 ニティカはフェスタの後を追おうとして、アリサに首根っこを掴まれながらジタバタしている。


 それぞれの行動をしている中、ジバがアリサに、


「私は少し町に出て買い物をして来ますので、皆さんで先にお風呂を済ませておいてください。

 ドレスも風呂上がりには届くと思いますので、先に着替えておいて頂ければ結構です。

 あと、ミニバーのお酒は自由に召し上がっていただいて大丈夫です。

 おそらく、レストランに行っている間に宿側で補充してくれますよ」


 そ言い残し、ジバが部屋から出て行く。

 ジバの魅力的な言葉に眼を輝かせるアリサであった。


 アリサが酒の誘惑に負けてニティカを取り逃がしつつも、冷蔵庫の中にあった蒸留酒に氷を入れて軽く一杯楽しんでから浴室に向かう。

 浴室には案の定アリサの拘束から逃れたニティカが幸せそうな顔でフェスタの背中を流していた。

 フェスタも久々のお風呂に幸せそうな様子である。

 ニティカが余計なことをしなければ、わざわざ自分が水を挿すこともないか、とアリサも何も言わずに浴槽に身を委ねる。

 温かい湯は、砂漠での疲れを溶かしてくれるような気持ち良さなのであった。


 風呂から出ると、ジバの言っていた通りにドレスが部屋に届けられていて、そのドレスに着替えて終わる頃にはジバが部屋に戻って来た。


「おお、お三方とも、見違えますね。とても華やかでお似合いですよ」


 と、感想を述べる。

 普段は枯れっ枯れ紳士なのに、こういう事になると如才ない。

 言われる側も、そう言われてお世辞と分かっても悪い気はしない。


 ドレスはそれぞれ、フェスタが薄いグリーン、アリサは紅い、ニティカは純白のもので、色のイメージもサイズもぴったりなものだった。

 特にフェスタは、ドレスを着慣れていることもあって似合い方が様になっている。


 ジバが簡単に入浴を済ませ、着替えると二時間ほどが経っており、四人はレストランへと夕食に赴いた。

 食事はフルコースになっており、前菜から始まるスープ、サラダ、主菜が二品にデザートが付く本格的なものだった。

 テーブルマナーに苦戦するアリサを余所に、何の苦もなく食事を進めるフェスタを見たアリサは『ひょっとしてフェスタって良いとこのお嬢様?』と軽く疑問を抱いたが、美味い料理と酒の前にはそんな疑問は雲散霧消してしまうのだった。

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