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フェスタの冒険 カーターの町

 カーターの町は、タルカ以上の異国情緒に溢れていて、フェスタは自分が生まれ育った大陸を遂に出て来たのだと実感した。

 砂漠は抜けたといっても、エリア半島は亜熱帯気候特有のカラッとした熱気で、じっとしているだけで身体から水分が奪われるような暑さである。

 その為、フェスタもアリサも装備は胸当て鎧(ブレストアーマー)を着けず、レザーアーマーのままである 駱駝はカーターの町で売却してしまったので、装備品などの荷物は分担して持ち歩いている。


 砂漠と半島の出入口となっているカーターの町はその気候にも関わらず人が多い。

 神聖皇国に向かう者や逆にワーラット大陸へと渡る者が拠点として集まり、その者たちを相手に商売する者が集まっていて、かなり賑わいを見せる町となっている。


「何は置いてもですね、まずお風呂に入りたいです」


 時刻は夕暮れ時、常ならまずお腹が空いたと言い出すフェスタが入浴を希望する。

 砂漠の旅で水浴びできたのはオアシスでの一回だけで、それ以外は濡らした手拭いで身体を拭くのが精一杯だった。

 汗も気持ち悪いし、何よりもフェスタが耐え難いのが、服の下まで入ってきた砂粒で身体がジャリジャリとすることだった。


 カーターの辺りは、砂漠に近く降雨量も少ない。

 それ故に、水は貴重品扱いであり、瓶一本に入った水が同量のエールと変わらない値段で売られているほどである。

 なので、お風呂というのも銭湯は存在していないし、宿屋でも風呂付きとなると貴族相手の商売を主としているような高級な宿屋(ホテル)となるのだが、それを知ってもフェスタはこの場は譲れないとばかりに全員分の宿代をフェスタが出すのでお風呂付きの宿屋に入りたいと主張したのである。


 パーティーのリーダーの希望と、これまでも地味にパーティーの財務役をしてきたジバの承認によって、一行は本日のところは風呂付きの高級宿屋に泊まることを決めたのであった。

 普段ならば、情報の少ない町では冒険者ギルドで宿を紹介してもらうのが定石であるが、今回は高級な宿であり管轄が違う。

 とはいえ、カーターの貴族にコネがあるわけでもない一行はひとます冒険者ギルドで商業ギルドを紹介してもらい、商業ギルドから高級宿屋を紹介してもらう、という手順を取った。

 飛び込みでは宿泊拒否されてしまいそうな高級宿屋でも、こういった手順を踏めばきちんと予約を取ったのと同様の扱いをしてもらえるというわけだ。


 こうして訪れたカーターの高級宿屋は門構えからして立派なものであった。

 アリサなどは「こ、こんな場所に入って大丈夫なのかい?」と、自分の場違い感にビビってしまっている。

 建物はカーターには珍しい木造の表面にタイルを貼った壁が美しい、六階建てで、塀の内側には芝生の庭が広がっている。

 いかにも高級と言わんばかりの立派な造りである。


 とはいえ、ビビって引いているのはアリサだけであった。

 フェスタは王城(実家)と比べればどこでも大したことはないし。

 ジバは経歴柄もあって、こういう高級な宿に泊まったこともある。

 アリサは別に何も考えていない。フェスタ様が泊まる場所ならそこが自分の宿、としか思っていない。


 何事も無いようにカウンターに向かい受付を済ませる。

 さすがに冒険者向けの宿屋とは違い、カウンターで宿帳に記名を求められ、フェスタはいつも使っている名前としてそこに『フェスタ・W』と記入した。

 それを見たアリサが、


「あれ? フェスタってファミリーネームあったのかい?」


 と聞いてくる。フェスタは、


「いえ、村の名前の頭文字です。高級なところなので一応」


 と、誤魔化し、アリサも「ああ、そういうことか」納得した。


 この世界では貴族や代々続く家とかでも無い限りは名字を持たない者の方が多い。

 冒険者でもなければ「◯◯村の誰それ」で通じてしまうほど世間が狭いのが理由である。

 なので、名字を付けないといけないような公式の場だと出身の村の名前を名字として使うことがよくあるのだ。

 アリサもそういう事情を知っているのですぐに納得してみせた、というわけだ。


 そして、ニティカが「それでは私も『ニティカ・W』に改名せねばなりませんね」と言い出した為に、この話は即座に流されたのであった。

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