フェスタの冒険 半島上陸
オアシスで英気を養い、完全回復で砂漠横断の続きへ出発する一行。
ジバによると「このオアシスを過ぎれば残りは半分以下です、非常にハイペースで旅ができていますよ」ということだ。
残りが半分を切ると、人間というのは気持ちが楽になるものだ。
フェスタたちも同様である、駱駝に跨る姿も砂漠突入時とは別物である。
そこからの旅は実に順調に続いた。
魔物にも、盗賊にも、悪天候にも遭遇しない天がパーティーに手を貸したのではないかと思えるほどの順調さだ。
元々、何らかのトラブルによって足止めを食うことを前提に考えられた予定である。
足止めを食ってしまわなければ、オアシスに一日留まってもなお本来の予定よりもかなり早く砂漠の旅は進行しており、あっという間にあと一日もあれば余裕で砂漠を抜ける、という位置まで来ていた。
一行は現在、良さげな場所を見付けて夜営地でテント泊中である。
とはいえ、夕食後でまだ眠るような時間にはなっておらず、四人は焚き火を囲んでまったりとした時間を過ごしていた。
「明日、早朝に出発して、順調に進めば夕刻までには砂漠を抜けることが出来ますね」
ジバが旅の進捗度合いを報告するように言う。
今回の旅は、天候やトラブル遭遇の少なさに恵まれたというのも大きいが、ここまで予定が早まったのはジバの計画が優秀であったのもかなり大きな理由だ。
ルート選びの正確さや目印の極めて少ない砂漠でも方向を一度も違えなかった方向感覚、進むべき時に距離を稼いだり逆に思い切った休養を取れる時間を設けたりできる判断力、全てジバがいなければ成り立たない。
恐らくジバが居なければ砂漠を抜けるまでの期間は倍以上に膨れ上がっただろうし、もっと困難なものであったであろう。
こういう事があると、フェスタは毎回「私よりもジバさんがリーダーやった方が良いんじゃないですかね?」と真剣にジバに持ち掛けるのだが、ジバには「私は考えるのは向いていますが、人を率いるのはからきしです。ですので、リーダーはフェスタさんのままで」と固辞されてしまうのだった。
「砂漠も明日で終わると思うと感慨深いですねえ」
「じゃあ、フェスタだけ一人で残ってみるかい?」
「え、ええ? それはイヤですよお。砂漠から出てちゃんとしたお風呂入りたいです」
フェスタの感想をアリサがからかう。
この間、ニティカはl二人の会話に混ざって「私も早く砂漠を抜けてフェスタ様と一緒にお風呂に入りたいですわ」と言おうとしたのだが、タイミングを外してしまったので微笑みながら黙っている。
「まあ、エリア半島の内側まで入ればお風呂にも入れますよ、まずは半島の入口にある町カーターです。
ここから乗り合い馬車に乗って、一週間ほどかけてエフィネスに向かいます。
エフィネスに着いたら修練の迷宮に赴くのですがーーその前に一つ、決めてしまいたい事があります」
不意にジバが真剣な顔をする、全員がジバに注目していた。
「ニティカさん、我々のパーティーに入りますか?」
「え? 私ですか? 私はフェスタ様さえお許しくだされば」
「だそうです、どうですか、フェスタさん?」
「ええ? わ、私は皆さんが良いと言ってくれれば……私の連れて来た方ですし」
「アタシは別に異存は無いよ、信用はできそうだし実力も折り紙付きだしね」
「私も、仲間になって欲しくなければこのような質問はしません」
こういった経緯で、ニティカはフェスタたちパーティーの一員となることが決まった。
決まった直後に、アリサが「一つだけ条件を」と言って、『ニティカがフェスタの布団の中に潜り込むのは禁止な』と告げた時にニティカが絶望的とも呼べる顔をしてみせたのは余談である。
この後、一行は問題なく砂漠を抜け、陽が沈み始める頃にはエリア半島最初の町、カーターに到着した。