フェスタの冒険 VSサンドワーム
「うわあ、でっかいミミズだあ」
サンドワームを見て、フェスタの感想である。
実際のところ『でっかい』では済まない大きさである。
全長およそ一五メートル、直径一から二メートルといったところだろうか。
人はおろか、馬や駱駝でも丸呑みできそうな大きさである。
そんな巨大モノが、地面から伸びてウネウネと動いている。
「フェスタ様! 御無事ですか!?」
真っ先にテントから出て来たのはニティカである。
続いてジバが、少し遅れてアリサが出てきた……が、アリサの下半身はパンツのみであった。
レザーアーマーに手甲を装備しながら下半身はパンツとブーツというややマニアックな格好であった。
敵襲の声に、慌てて装備を身に付けてテントを出て来たのだろう。
アリサはジバが傍で寝ているにも関わらず屋根のある場所で寝れる時はパンツ一丁という格好で寝る。
パンツを履くのはアリサなりの『淑女の嗜み』だそうだ。
アリサのパンツは今はどうでもいい、サンドワームだ。
今、サンドワームは間合いを測るように身体を大きく揺らしながら近寄って来ている。
仲間を呼んでしまったのか、いつの間にかその背後に別のサンドワームが二体出現している。
サンドワームが三体、ちょっとした危機である。
「ジバさん! 援護お願いします!」
最初に仕掛けたのはフェスタである。
装備がレザーアーマーだけであるからか、砂漠の砂地といえどその速度は普段と変わらず申し分ない。
接近に気が付き頭部を地面にぶつけるように攻めてくるサンドワームの攻撃が掠りもしない。
その間、背後の二体にジバが大きめの火球を放ち近寄れないように牽制する。
三度、サンドワームの攻撃を躱して、フェスタがサンドワームの胴体に近付く。
剣を横に構え、一気に薙ぐ。
サンドワームの身体、その四分の三辺りまでに筋が入り、そこからサンドワームの体液が飛び散る。
ーーやったか?
と思うが、サンドワームはまだ動く。トドメを頼もうにもジバは残り二体の牽制に手が埋まってしまっている。
さらに悪いことに、二体のサンドワームの背後にさらに二体、サンドワームが寄って来ている。
長引けば長引くほどマズい。
「えええいっ!」
その声と共に、フェスタが傷を入れたサンドワームにアリサがトドメを刺す。
派手な音を響かせ倒れるサンドワーム。
「フェスタ! 右のヤツを! 左はアタシが行く!」
「ハイ!」
二手に分かれるフェスタとアリサ、それを見てジバが杖に大きな魔力を込める。
あっという間に杖の先端に大きな光の玉が出来る。
「ぬぅうう、閃熱!」
ジバの詠唱と同時に、前を走るフェスタとアリサの頭上を『熱』が通り抜ける。
次の瞬間、二体のサンドワームはその身を焦がされていた。
乳白色だった胴体は、焦げた茶色に変わっているが、まだ動いている。
その二体を、フェスタとアリサがほぼ同時にトドメを刺す。
「あと二体! 一気に行きます!」
フェスタはそう叫んだがーー直後に動きを止める。
サンドワームが……さらに増えていた。
新たに増えていた二体の周りにさらに十数匹のサンドワームがフェスタたちを嘲笑うように蠢く。
非常にまずい状況である。
先ほどまでの数ならば対応は可能だったが、いかせん数が多過ぎる。
(危険は承知で一気に叩くか!?)
ジバが考える。自身の使える最大級の魔法ならば迫る数を一気に殲滅できるかもしれない。
しかし、味方に被害を及ぼさずに敵のみを倒せる保証はない。
ジバが迷ううちにも、サンドワームの大群は接近して来る。
距離を開けておけないと、ジバの最大魔法を少しでも安全に使うために味方と敵との距離が欲しかった。
フェスタならば、敵を足止めしつつ、ジバは魔法を放ってもその速度で回避できるかもしれない。
しかし、リスクが高過ぎる。フェスタの速度は高い、だが経験が少ない。
上手く避けてくれる確率は五分五分を下回るのではないか、ジバはそう予測する。
ーー敵が近寄る前に、近くまで徹底させ、何とか威力を絞って最大魔法を撃つ。
そう決断し、撤退の指示を二人に出そうとしたその時。
「フェスタ様、アリサさん! こちらまで!」
ジバが叫ぶより早く、アリサが叫ぶ。
見ると、サンドワームたちの動きが止まっている、止められている。
驚いたジバが後ろを振り向くとーーニティカの両眼が光っていた。