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フェスタの冒険 砂漠

 砂漠は苛酷である。

 雨が極端に降らず、日中は太陽が容赦なき照りつける。夜は一転、保温する物質が無いための厳寒にまで気温が下がる。

 水が無く、気温差が激しい生命がそこにいることを拒否するような場所、それが砂漠だ。


 その砂漠を越えるために進む影が四つ、駱駝に乗ったフェスタたちである。

 隊列はジバを先頭にフェスタ、ニティカ、殿にアリサの順である。

 一番旅に慣れた、というかジバしかきちんとした砂漠越えの経験が無いため必然的に先頭となり、戦闘経験無いニティカを戦闘職の二人が挟む、というフォーメーションだ。


「うー、あーつーいーでーすー……」


 駱駝の上でダレながらフェスタが呻く。

 格好はフェスタとアリサはいつもの胸当て鎧(ブレストアーマー)を脱いで胸部分のみのレザーアーマーに変えている。

 金属製の鎧では砂漠の気温でとことんまで温めたられて大火傷をしてしまうからである。

 ジバはいつもの黒いローブ姿、ニティカはアリサの買ってきた巫女服を着ている。

 巫女服なんてものまでしっかり売っているタルカの街、さすが商業都市呼ばれるだけはある。

 そして、それらの服の上から、元々ローブを着ているジバを除く全員が茶色のローブを羽織っている。

 直射日光による火傷を防ぐためだ。それ程に砂漠の日光というのは厳しいのである。


 ただでさえ厳しい砂漠の旅なのだが、アリサはさらに地獄の思いをしている。

 砂漠の旅の間、ジバから特訓を申し付けられたのだ。

 ゲントからタルカまでの馬車に乗っている間に、アリサは何とか魔力を操ることに成功した。

 その次の段階として、回復魔力の練習をさせられることになったのである。


 練習法はジバから渡された鉢植えの花をこの砂漠の旅の二週間の間枯らさないというもの。

 水は貴重だから最低限しか与えてはいけないことになっており、萎れそうになる花のアリサが回復魔法(ヒール)をかけて生命力を維持させなければならない、という特訓だ。

 これがアリサにとってはなかなか厳しく、既に何度も枯らしそうになってはフェスタやニティカが花に回復魔法をかけては延命をしてもらっているような状態だ。

 揺れる駱駝の上で、茹ってしまいそうな高音。慣れていないアリサが集中して回復魔法を発現できるはずもなく、死にそうになりながらも何度となく挑戦しては成功と失敗を繰り返している。


 そんなことをしつつ、砂漠の旅は延々と続く。

 変わらない景色の中で、ジバが思うのは砂漠の出る前に聞いたニティカの言葉だ。

 夢の中で、大神ネフィスから受けたお告げ。

 修練の迷宮を乗り越えよ、というものと聞かされた。


 ジバはこのニティカが見た夢は本当の神のお告げではないかと考えている。

 何せ、ニティカはフェスタの対する態度がアレな感じなだけで正真正銘巫女である。

 しかも、聞いた話だと毎日のように神の力を借りる儀式を行なっていたという。

 本当の話ならば、ニティカは相当な修行を積んだ巫女ということだ。

 そのニティカが見たという神の夢、しかもジバたちが修練の迷宮に向かおうとしているタイミングで。

 偶然と呼ぶには、あまりに出来過ぎているとジバは思った。


 ジバは、嘗て冒険者だった頃に修練の迷宮を踏破したことがある。

 五〇の階層からなる巨大な迷宮で、その昔に神が人を鍛えるために造った迷宮と言い伝えられている。

 その迷宮を踏破した時、確かにジバの仲間の一人は大いなる力を手にした。

 だが、今回に関してジバは実際のところ踏破までは考えていなかったのだ。


 しかし、ニティカの見た夢である。

 乗り越えよ、というのはやはり迷宮を踏破せよということだろう。

 だが、踏破するとなれば容易い迷宮ではない。かなりの時間が掛かるのは間違いない。

 だからと言って、神のお告げを無視してしまって良いものかという思いもある。

 パーティーにとって強くなるのは遠回りではなく必要な順路だとしても、その期間には限度があるだろう。

 それ故にジバは悩んでいるのだが、まだ答えは出ない。

 砂漠を抜け、エリア半島に辿り着くまでには、考えを纏めないと、そう思うジバである。

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