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フェスタの冒険 我が神

「それでは、明日早朝に出発します。

 今日は早めに休んでください、砂漠越えは体力が必要ですので。

 アリサさんも、深酒は控えてください。

 それと、二ティカさんは本当に我々と同部屋でよろしいのですか?」


 ジバが業務連絡と、二ティカに念押しのような確認を取る。

 二ティカはパーティーの一員ではないし、巫女であるのだから不用意な男性との接触は避けるべきであろうというジバなりの配慮なのだが。

 二ティカが「はい、できればフェスタ様と同衾が一番いいのですがーー」と、途中まで言いかけたところで「では、アリサさんの上の段でお休みください」ジバが強引に二ティカの寝る場所を決めてしまった。


 これは夕食の席での話である。

 宿での夕食の内容は、羊肉の骨付きソテーにサラダ、スープにパンというものであったが二ティカは肉も気にせず食べている。ジバが「宗派で禁忌の食べ物とかは大丈夫ですか?」と質問すると、


「ええ、大丈夫ですわ。

 確かに食肉を禁じておられる宗派もございますが、私の信じております神はお隣で同じものを召し上がってらっしゃいますし。

 それを食べない方が禁忌に触れてしまいますもの」


 と、ニコニコ笑いながら返す。

 かなりエキセントリックな言葉にどう反応していいか分からない一同である。

 最初の言動でなんとなくは気付いていたものの、面と向かってフェスタのことを『神』と呼んでしまうのはさすがにどうなんだろうか、と思わなくもない。


 が、現在のところ実害はそういう現場に遭遇する度にフェスタが苦笑いを浮かべる程度に収まっていることもあり、時間が経てば落ち着くだろうという希望的観測を持ってスルーすることに決めていたジバとアリサである。

 神扱いされているフェスタ自身は、『様』付けを抗議した時とアリサに買ってきて貰った服を手渡したとき、それに食事前計三回に渡り、それぞれ二ティカに祈りを捧げられては「やめてください!」とお願いするも、逆に土下座を喰らわせれて結局フェスタが折れるという事を繰り返した結果、既に説得を諦める程度には心が折れてしまっていた。


 このような理由から、二ティカのフェスタを神と崇める行動は全員からスルーされることが決定したのである。

 ジバとアリサは冒険者として活動している間に、フェスタは王宮で生活している間に、この手の人物を見たことがあり多少の免疫があったのも受け入れやすかった理由でもある。


 ともあれ、大した混乱は無く、二ティカという同行人は増えたものの予定通りに旅を続けることになった一行であった。


 その夜、二ティカは夢を見た。

 最初は敬愛するフェスタ様とお花畑でキャッキャウフフな夢だったのだが、花畑の中でフェスタ様と二ティカが熱い接吻を交わそうかという時に声を掛けられた。


『二ティカ、二ティカよ……』


 声の主を探すと、真横に金髪碧瞳の筋骨隆隆な壮年の男が傍に立っていた。

 その姿はフェスタ様には劣るものの神々しい。


「どちら様でしょうか?」


 フェスタ様との貴重な逢瀬を邪魔されてしまったので、若干不機嫌二ティカである。


『我は大神ネフィスという。二ティカよ、此度は良くぞ試練を乗り越えたなーー』


 男は嘗て(といっても今日まで)二ティカが信仰を捧げていたネフィスと名乗った。

 改宗したとはいえ、神に対して不遜な態度を取るわけにもいかない、と姿勢を正す二ティカ。

 信徒である自分が粗相をしでかして、神々の間でフェスタ様の評判を下げてはいけない。


「いえ、我が神のお導きによるものです」


 この『我が神』はフェスタ様のことだ、改めて説明するまでもない。

 フェスタ様になら二ティカはどんなに踏みにじられるような試練を課されても平気だと思っている、むしろ二ティカはフェスタ様ならば踏んで欲しい。


『うむ、お主には次なる試練が待っている。

 その者らに協力を仰ぎ、試練の迷宮を見事乗り越えてみせよ。

 さすれば、世界を救うための力を得るであろうーー』


 そこで二ティカは目が覚めた。

 既にジバが起き出して出発の準備を始めており、二ティカの朝の挨拶をしてくる。

 二ティカは、ジバに先ほど見た夢を聞かせる。


「なかなか面白い夢ですね……後で二人にも聞かせてみましょう」


 と言いながら準備を進め、二ティカには二人を起こしてください、と頼んできた。

 二ティカはまずアリサを揺り起こし、フェスタの朝の接吻をして起こそうとしたところをジバとアリサの二人がかりで引き離されて涙目になるのだった。

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