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説明と質問

 『とりあえず、話ぐらいは聞いてあげようか』と茉莉が思ったのは軽い同情からである。

  自分と同じ顔した少女(フェスタ)の悲痛で必死な表情に僅か、ほんの僅かながら感情が流された形だ。

 未だにフェスタが得体の知れない、怪しい人物であるという根本的な認識は変わっていないしフェスタの『お願い』を聞いてあげるつもりも無い。

 しかし、話を聞いてやろう、検討するフリぐらいはしてやろうという余裕にも似た気持ちが出てきている、というのも偽らざる事実であるのだ。


「説明……ですか?」


 茉莉からの言葉に対し、フェスタは少し涙目を残しつつも小首を傾げて問い返してくる。

 この可愛げのある所作が自分に出来ていれば自分でもモテるのだろうか?などという現状とはかけ離れた考えを茉莉がふと抱いたのはここだけの話である。

 フェスタは何を説明すれば良いのか全く分からないと言いたげな表情だ。


「そう、説明。まずは、そうね……勇者って何なの?」


 フェスタに主導的に話させていても、いつまでも要領を得ない。

 そう判断した茉莉は自分から質問してフェスタに答えさせることで疑問点を解消させていく形に持って行こうと考えた。


「はい、勇者っていうのは……えーと、魔王を倒す人です」


 しかし、フェスタから返ってきたのは期待するものからはやや外れたものだった。

 茉莉とて忙しい日常を過ごしているとはいえ、多少のゲームをしたり本を読んだりする時間は持っている。

 過去にやったゲーム、RPGにだって勇者が出てきたし、討伐したのはそのゲームでは『魔王』ではなく『宇宙の混沌(カオス)』ではあったが。それでも『勇者』という単語程度なら分かっているつもりだ。

 数学の試験で解答の部分は抜けて、途中式の一行目だけを書かれたような気分だ。

 そうじゃないんだけど、と思いながらーーそれでも茉莉は根気よく質問を重ねる。


「えっと、魔王はこの世界にはいないんだけど……そっちの、フェスタ……さん? の世界には存在してるの?」

「あ、フェスタって呼び捨てにしてくれて大丈夫です。 はい、魔王が存在していました、あとこちらの世界と違うのはですね……うーん、そうだ魔法がある世界です!」


 少しだけ、フェスタから望む答えが出たような、また新たな疑問が出現してしまったような、そんな答えだ。


「魔法………ね」


 複雑な内心を抑えつつも更なる説明を促すべく端的に疑問が現れた単語のみを復唱するに止める。

 ようやく茉莉から手応えを感じたのか、嬉しそうな様子でフェスタは続ける。


「はい、魔法です、こちらの世界には無いんですよね?」

「そうね、魔法は……無いわね」

「私の世界はですね、魔物が出ますので剣と魔法でもって戦うんです。それでたまーに魔物を統括しちゃって広い領地なんかを占領しちゃうヤツとかがいるんですけど、それが魔王です」

 

 フェスタが 魔法の説明にはなっていないのだが魔王の定義についてさらっと説明する。

 どうやら、フェスタが来たと主張する世界というのは茉莉のいる現実世界から見たいわゆる『剣と魔法の世界』と呼ばれる類いの世界のようである。ファンタジーだ。

 フェスタが本当にそのような世界から現れたのか、はたまたただの狂人の妄想なのか。

 茉莉には判別が付かず、頭がクラクラするような感覚を覚える。

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