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フェスタの冒険 確認

 中年の女の言葉に、フェスタは唖然としていた。

 そして、フェスタ以外はフェスタと違う意味で驚いていた。

 驚いていないのは、中年の女と若い女、それと二人の連れである男、この三人だけが驚かずに何やら偉そうにしている。

 威厳のある様子ではなく、虚勢を精一杯張った『偉そう』な感じだ。

 盗賊が馬車を襲ってきている、そんな緊迫した状況でそれについて言及する者はさすがに居なかった。


「さあっ、早く行くのです!」


 中年女は再度声を張り上げ、馬車の外に手を向けながらフェスタたちに顎を振ってみせた。

 『早く行け』と、中年女は偉そうな目付きをして、仕草だけで命令してきた。


 フェスタはジバに視線を向けた。その眼は『どうしよっか?』と明らかに困惑したものである。

 そんなフェスタを見てジバは「行きましょう」と頷きながら馬車を出て、フェスタとアリサもそれに続いた。


 馬車の外では、既に護衛の冒険者たちと盗賊が既に戦いを始めていた。

 彼らの腕は悪くないようで、盗賊は既に地面に二人倒れている。

 冒険者たち三人組は健在である。

 ジバはこれを見て戦況を大方のところ把握した。


「フェスタさん、アリサさん、彼らのサポートに回りましょう!」


 それを受けて、フェスタたちは散会する。

 フェスタは剣士風の男の場所へ、アリサは魔術師風の男の、ジバは治療師風の女の居る場所へサポートに入る。


「助太刀します!」


 剣士風の男の背後を護れるような場所に走り込むと同時に、近くに居た盗賊を袈裟斬りにしたフェスタ。

 盗賊は肩口から血を噴出させ地面に倒れ込む。

 ほぼ同時に、アリサとジバも自分の近くのいた盗賊を倒してしまっていた。

 残る盗賊は三人、あっという間に形勢逆転である。


 六対三、こうなってしまうと盗賊も脆いものである。

 勝機は無いと悟ったのか、盗賊たちは一目散に逃げ出す。

 拍子抜けしてしまうほど呆気ない幕切れに、思わずフェスタが「なんだかなあ……」と漏らす。

 ともあれ、盗賊に襲われるという危機はあっさりと去ったのであった。


 戦闘の後処理として、既に息絶えていた盗賊五人の遺体はこの場で燃やすことになった。

 これは三人組の中の魔術師、セイが引き受けてくれることになった。

 馬車の中に戦闘が終わったと伝えに行ってくれたのは剣士風の男、ケインズが。

 戦闘中に馬が怪我などしていないかを治療師の女、ユノハがそれぞれ引き受けてくれた。


 馬車側の人員は誰も怪我などはしておらず、商人の男が積み込んだ荷物の無事も確認された。

 フェスタたちは、戦闘終わりの油断に乗じて、一旦は逃げた盗賊たちが再度の奇襲を仕掛けて来ないかの警戒に当たったが、戦闘の後処理が全て終わるまでの間に再度の襲撃は無く、再出発の為にフェスタたちも馬車に乗ろうという時、ジバがフェスタに耳打ちしてきた。


「先ほどの馬車内の方々、本当に第一王女様とお付きの方ですか?

 私も現王家の方々の顔までは存じ上げておりませんので……」


 ジバの言葉にブンブンと首を横に振るフェスタ。

 少なくとも、あの若い女は断じてフェスタの姉などではないし、さらに言えばフェスタの知り合いですらない。

 盗賊との戦闘があったので一旦はスルーしたのだが、そういえばそんなおかしな事を言い出した人達が居たなあ、と重い気分になるフェスタである。


「どうしましょうか、別に害が無いようならば敢えて泳がせてみて、目的を探るのも有りかと思いますが」


 ジバの言葉に、それもそうだなと思うフェスタ。

 確かに、別にこんな乗り合い馬車の中で姉の名を騙られたところで実害は無い。

 だったら、実害が起きそうになるまでは無関係を貫いても何も問題は無さそうであると判断した。


「おーい、出発するってよ! 早く乗りなー!」


 馬車の入口から顔を出しながら、フェスタたちを呼ぶアリサの声に「はーい!」と返事をして馬車へと戻るフェスタとジバであった。

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