表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/114

フェスタの冒険 報告

 翌朝、朝食を終えてすぐに冒険者ギルドへと向かうフェスタたち。

 受付のお姉さんに、一連の事情を報告したところ「ギルドマスターにもう一度報告してもらっていいでしょうか?」と言われてしまった。

 ゲントの冒険者ギルド、そのギルドマスター室は酒場も兼用している建物のバーカウンターの奥にあった。


「やあ、私がゲントのギルドマスター、シャレだ。西の森の魔物についての報告だね」


 シャレは黒い身体にフィットするような素材の服を着た瘦せぎすな男だった。

 ギルドマスターをしているということは元冒険者なのだろうが、どうにも『歴戦の』とか『百戦錬磨」とかの言葉ば似合わない感じのする男だ。


「では、順を追って説明させていただきます」


 説明するのはパーティーの渉外役ことジバである。

 こうなるであろうと予測して、ソファに座る位置もジバが真ん中になるように予め座っている。

 ちなみに、ギルドマスター室のこのソファ、皮張りの高級品なのだが、これのすわり心地をアリサは『うわっ、コレ何? フッカフカじゃん!』と思い、フェスタは『ちょっと固いソファだなあ、ギルドって家具にはお金が回らないのかなあ』という感想を抱いた。育ちの差は残酷でる。


 そんな間にもジバの説明は続く。

 昨日のうちに、森での出来事は全て包み隠さずに話す、ということは三人で決めてあった。

 下手に魔族の存在を隠して、ギルドが迂闊な行動に走れば無駄な犠牲が出かねない、という判断である。


「ーーという訳で、今回の件には魔族が絡んでいると見て間違いありません」


 ジバが報告を終えると、シャレは頭を抱えて唸り出した。

 まるで、何で自分がギルドマスターやってる時にこんな面倒ごとが起こるんだ、と言いたげである。

 ひとしきりウンウン唸った後、


「何故私がギルドマスターをしている時に厄介な事件が起こるんだ!」


 言った。

 それを言ったらダメだろうというような事を平気で言えてしまうタイプであるらしかった。


「ん、んんっ! そ、そうだ。その魔族は名乗ったり、何か言い残したりはしなかったのかね?」


 聞かれてはマズい発言であることは自覚があるらしく、わざとらしい咳払いの後にシャレが聞いてくる。


「名前は言っていませんでした。ただ『自分の庭に入って来るなら殺す』と言い残してから姿を消しました」


 これも、説明したのは実際に言われたフェスタではなくジバである。

 フェスタが説明するよりもジバが説明した方が説得力があるだろう、という理由だ。

 もっとも、フェスタは自分は王女であると明かしてから説明すればその限りではだろうが、現在フェスタは正体を隠す気満々なので意味の無い仮定だ。


「そ、そうか。コトは我らの手には余るレベルで深刻だな……。分かった、報告はこれで結構だ、対策は王城に願い出ることにしよう。君たちは受付カウンターで報酬を受け取ってくれたまえ」


 こうして、ギルドへの報告は無事に終わった。

 後はシャレから冒険者ギルド総本部辺りに報告が行き、総本部から王城や神聖皇国に協力依頼が出て対処することになるだろう。

 これでフェスタたちにできることは全て終わり、次の目的地に向かうに当たってのやり残しはなくなった。


「さてと、これでいつでも出発できますねーーまあ、乗り合い馬車の時間まで幾分か余裕はありますが」

「そうなの? じゃあちょっとお茶でも飲んで時間潰します?」

「いいねえ、酒場に入ってエールでグイッとーー」

「アリサさん、今日から昼間は魔力と気力の運用についての座学をして頂きます、夜まで禁酒をお願いします」


 ジバの言葉に絶望的な表情を見せるアリサ、お茶をするために既に食堂のある方角へ歩き出していフェスタ。ジバの宣告にショックを受け立ち尽くすアリサを置いてフェスタの後を付いて歩き出すジバ。


 修行の地への出発前の光景は、穏やかに流れるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ