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フェスタの冒険 怯え

 手痛い敗戦から一夜明け、フェスタたち一行はゲントの冒険者ギルドにいた。

 正確には、冒険者ギルド内の二階、ゲントのギルド支部長の部屋の中で昨日までの調査結果を報告していた。


 あの後、ジバがアリサに回復魔法(ヒール)を掛けて身体の傷を治すと、ほどなくアリサは意識を取り戻した。

 何故かジバが生きていて、そのジバに回復をしてもらったという状況に混乱するアリサに事情を説明し、アリサも動けることを確認すると、すぐに森から出ることを決めた。

 再びあの魔族は来てしまうかもしれないし、あの魔族でなくとも他の魔族が来てもまずいからである。


 不意打ちのような形でやられてしまったとはいえ、フェスタもアリサも手も足も出なかったのだ。

 フェスタが一撃だけ入れれたが、それ以降は手も足も出なかった。幸運にも攻撃されなかっただけで、もしフェスタがあの時攻撃されていたら防御さえできずに殺されてしまっていたであろうことは想像に難くない。


 ともかく、現在のフェスタたち一行には魔族に対抗する術が何も無い。

 完全敗北を認め、早急に森からの脱出を決めたのである。


 村に戻っても、陽はまだ高かったがフェスタたちはその足でギルドには赴かず、一旦は宿屋に入ることにしが。

 回復魔法(ヒール)で傷を治したとはいえ、魔族との戦いによって体力は尽きかけていた。

 そして、体力以上の問題だったのが全員の精神的な問題である。


 死にかけた二人と手も足も出なかったフェスタ。

 宿の部屋に入った直後、フェスタは「魔王を倒すどころじゃありませんね……」とポツリ呟いた。

 そのフェスタの呟きに苦い顔をして見せる二人。

 荷物を部屋に置き、装備を外しても三人は無言のままであった。


 この時、フェスタは怯えていた。

 もしかしたらーー二人がフェスタと旅に行くのを取り止めてしまうのではないか、と。


 敗北してしまったが、敗北そのものには大きな悔恨は残っていない。

 フェスタが悔いているのは、自身が二人の助けにまるでなれなかった事だ。

 ジバは瘴気の湖をアリサもフェスタも出来ないようなやり方で見抜いてみせた。

 アリサは魔族に一人で飛びかかり、フェスタを逃がそうとしてくれた。


 フェスタだけがーー二人に何も出来なかったのだ。

 結果的に助かりはしたが、魔族とロクに戦うことすらできなかった。二人を抱えて逃げ出すことも、一人でも逃げ出し助けを呼ぶことも、フェスタはできなかった。

 パーティーは、互いの足りないところを補い助け合うーーなどと、どの口で言えるのかと、自分を責める気持ちで一杯だった。


 ジバは、フェスタが魔王を倒すと信じて仲間になってくれた。

 魔王を倒すどころか、ただの魔族にとことんまで敗れてしまったフェスタと旅を続ける意味はあるのだろうか?

 アリサは、新しい装備の代金としてフェスタと旅をしてくれると言った。

 魔族に挑んで死にかけたというのは、武器防具の代金としてはお釣りがくるほどの過分な働きではないか?


 ーー考えるほど、悪い考えは頭の中を駆け巡る。


「とりあえず、昼食を食べに行きませんか? 今後のことは食べながら話し合いましょう」


 ジバが二人に向けて言う。アリサは「そうだね」と言ってベッドから立ち上がり、フェスタもそれに倣う。

 この宿屋に食堂はなかったっため、三人は宿屋の斜向かいにある食堂兼酒場へと向かうことにする。

 テーブルに座るまで、三人は誰も口を開かず表情は固いままだった。


 ジバが給仕の女性に三人前の昼食を注文し、付け足すようにアリサがエールを二つとオレンジジュースを一つ、と追加で注文をする。

 すぐにテーブルに届いた飲み物、アリサがジョッキの口を付けてエールを啜る。

 三人の視線はテーブルに注がれたままで、互いに視線は合わない。

 そんな空気に耐えかねたのか、


「ごめんなさいっ!」


 真っ先に口を開いたのは、フェスタだった。

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