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フェスタの冒険 再び森へ

 翌朝、フェスタたち一行は再び森へと入っていた。


 昨日と違うのは隊列の先頭にアリサが立ち、フェスタが真ん中に入ったところである。

 これは昨夜、宿屋に戻ってから開かれた作戦会議の結果である。


 昨日、探索中に出現した魔物は樹木人(トリエント)のみだった。

 他には魔物どころか他の生物さえも、影も形もなかった。

 この事から、ジバは一つの推論を立てた。

 その推論とは、『森の生物は樹木人によって全滅させられたのではないか』というものだ。


 昨日は一体の樹木人のみが出現し、フェスタたちは何とかそれを撃退することができた。

 だがジバの推測としては、森は既に樹木人で埋められているのではないかと思われる、と言うのだ。

 ジバの経験則として、樹木人とは『待ち』の戦法のみで獲物を襲う魔物なのだという。

 自力で動けなくもないが、大抵は発生したその場でじっと獲物を待ち、自分のテリトリーに入り捕らえられる状態になった獲物を確実に殺すのが通常の樹木人の行動パターンなのだ。


 少なくとも昨日の捜索時に、森の中で樹木人が移動した跡は見かけなかった。

 ならば、森の入り口から生物が居なかった理由とは何なのか。

 ジバは「つまり、入口付近から既に我々が気が付かなかっただけで。森の木はほとんど樹木人に変化していると思って行動した方が良いという事です」と自身の予測を締め括った。


 対策としては、樹木人はある程度の速度で動き続ける獲物には襲い掛からない。その性質を利用しながら森の中の変化の理由を探る。襲い掛かって来る樹木人は速やかに撃退していく。という風なものになった。

 昨日は奇襲によっていきなり行動不能にされてしまったアリサだったが、本来ならアリサの職種である武道家と樹木人との相性は悪くない。

 太い幹は非常に硬い防御力を誇り、剣などの斬撃を跳ね返すものの打撃には脆い。

 理想を言えば斧などにより『重さを伴う斬撃』がベストなのだが、鈍器や武道家の打撃なども樹木人の弱点に挙げられる。


 勿論、モノが木なので火や炎にも弱いのだが生息しているのが森の中なのだ。

 下手を打てば近隣の木に延焼してしまい、悪ければ自分たちまで炎に巻かれて死ぬ羽目になりかねない。

 故に、樹木人に火を使う場合は小さい火のみを牽制の使うというのが一般的なのである。


 以上のような作戦会議の内容に従い、一行は森を突き進んでいた。

 途中、三回ほど樹木人(トリエント)との戦闘になったが、アリサが先攻し、フェスタがそのフォローを、ジバが牽制と役割を分担することで大した危険なく撃退することができていた。


「アタシたちの連携もなかなかのモンだね」


 先頭を進むアリサが気を良くしながら言う。

 勿論、進行する速度は少しも緩めていない。


「私は……もうちょっと戦う練習もしたかったですけど……」


 アリサの言葉を聞いて、フェスタは少々不満げだ。

 元は自分の戦闘訓練的な意味合いで受けたはずの仕事が、というところである。


「まあ、場合が場合です。今回は申し訳ありませんが割り切っていただいて」


 最後尾を行くジバがフェスタを宥める。

 このような不測の事態は冒険をしていく上でよくある事だ。

 フェスタもその辺りは分かっているが、昨日から張り切っていたこともあって割り切れない部分もあった。


「この依頼が終わったら、何か適当な討伐依頼受けましょうねえ」


 懇願するようなフェスタの声に、前後を進む二人は苦笑いで応えるのだった。


 その後も二度ほど樹木人との戦闘に入り、それらをきっちり撃退していた。

 朝から森の中を歩き続けたフェスタたちだが、時刻としては昼前になりつつある現在のところ位置としては森の中心近くにまで辿り着きそうになっていた。

 予定ではこのまま森を入口の反対側まで突っ切り、昨日のジバの予測が正しいのかを検証するつもりである。

 現在までのところ、森の中には至るところ樹木人だらけであり、他の生物は存在していない。

 こうして早足で歩いている近くの木も、恐らく樹木人へと変化していることに疑いは無く、この状態が森の反対側まで続くようならば森にある殆どの木が樹木人化しているとの推測はほぼ確実なものになるだろう。


 その結論が出れば、森の反対側に出るまでに瘴気の濃い場所も併せて探索し、森が全体で樹木人化してしまった原因を探ることになる。

 未だに原因は不明だが、パーティーとしてやることは徐々に明確になりつつある一行である。


 しかし、樹木人自身が戦闘時に発する瘴気を除けば、特に瘴気の濃い場所さえ発見できないまま森の中心部に辿り着いてしまった。


 ーーが、ここで発見した。この森がどうして樹木人化してしまったのかという原因を。

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